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第54話 年齢不詳の彼

「クンラートはどのような子供でしたの?」


 私の問いにガントは、にか、と笑い嬉々として話し出す。


「クンラートはよう、昔、親父さんに着いて旅してる獣人の親子だったんだがよう。まあ生意気なガキだったわなあ! そこがかわいいところでもあったんだがよう!」

「おっちゃん黙ってくれねえか」

「なんだよ。昔は俺のことおいちゃんおいちゃんって呼んで引っ付いて回ってたってのに、背丈なんか腰くらいだったもんなあ。デカくなったもんだよ」

「そうよ〜。クンラート、おやつの時間になるとちょこちょこ着いて回ってかわいいもんだったわ」

「おばちゃんまで……」


 クンラートは項垂れながら食事をしている。夫妻はあの時はどうだったとかこうだったわねえ。なんて懐かしむように話を続けている。ディーデリックが話を聞きながら夫妻に問いかける。


「クンラートは父親と旅をしていたそうだが、ランクはどれほどだったんだ?」

「ここに居た頃は金だったか? そこそこ名は通っていたよなあ」

「今だったら白金でもおかしくはないんじゃないかい? 実力は充分あっただろう」

「白金だったら俺の元にも話は聞こえてきてるはずだ。どこぞに居るかも分からねえんだ。多分金のままだろうよ」

「クンラートの父親はどんな獣人だったんだ?」


 ディーデリックの問いにクンラートは苦々しく顔を歪めた。が、一応話はしてくれるらしく口を開いた。


「俺は獣人の母親似だからよ。同じ獣人でも親父とは種族が違え。冒険者としてダンジョン潜ったり金のために傭兵やったりしてたが、俺自体は仕事の間は宿に預けられていたからな。実際に戦いを見てたわけじゃねえ。周りの仲間から話を聞くくらいだったな。まあ確かに実力はあったんだろうが」

「いつまで共に旅をしていたんだ」

「そうだなァ……。神殿で勤めたいって親父のところ飛び出してから、もう二十年近くは経ってるだろうよ」

「……ねえ。クンラート。あなた何歳なの?」

「何歳だと思うよ。ユウキ」

「聞くのが恐ろしいわ。もっと歳若いと思っていたから」

「カカ、獣人だから年齢不詳に見えるだろうが、結構なおっさんだぜ俺」


 けらけらと笑うクンラートだったが、一瞬でそれはなりを潜め、真面目な口調へと切り替わる。


「どこぞで野垂れ死んで居ても不思議じゃあねえ。……だがそう簡単に死ぬ男でもない。この国に留まっている可能性は低いと俺は思っているよ。もしかすると、ガルシアにでも行ってるか、海を渡って別の土地に居るか、まあたらればだがよ」

「……いつか再開出来るといいわね」

「望みは薄いねえ」


 クンラートは食事に意識を向けて話は切り上げるようだ。が、夫妻にしょっちゅう茶々を入れられ、結局昔話に花を咲かせていた。


 食後はクンラートはガントに酒に誘われ、それに応じるようで、マレイケとディーデリックと共に部屋へと向かった。


 三人で話でもと一部屋に集まって食後のまったりムードでぽつぽつと話をしていた。


「ディーデはクンラートから何か聞いていた? お父上のこととか」

「いや、あまり話すことはなかった。ただ、神殿に残った父母のことは心配されていたが」

「あの方々は女巫を連れ帰ったという功績があるでしょう。しばらく風当たりは強いかもしれませんが、冷遇されることはないかと」

「だといいが……」

「やはり心配かしら。あのお二方のこと」


 ディーデリックはそうだな、と少しばかり目を閉じた。


「……父母は目的があってガルシアに住っていたのは、少しばかりは知っていたんだ。ただ俺に目的がユウキだとは教えてはくれていなかったが。……君の人となりは学園で噂程度には知ってはいたが、まさか君だとは思ってはいなかったんだ」

「そう、なんだかあなた、色々と巻き込まれ体質ね」

「君たちに着いてきたのは俺の意思だ。俺はヒティリアを知りたかったから君の協力に応じた。どちらも損はしていない。だから気に病むことはない」

「それはどうも。わたくしもそう言っていただけると気が軽くなるわ」


 結局winwinの関係だからこそディーデリックは私に賛同してくれたのだ。私は彼の周りの人間への不幸を気に病むような人間ではない。自分本位のまま生きているし、今後も生きていくつもりだ。


 マレイケだって身内からすれば、母の従者だったサバタと同じ立場へと堕ちた訳だが、マレイケは特に気にする様子は今まで見せていなかった。マレイケに問うてみると、気にしていないとのことだ。


「私の家系は従者を多く輩出してはおりますが、今後の懸念と言えば重用されにくくなることくらいでしょう。別に一族から従者候補が出ずとも、然程問題とは思ってはおりませぬ」

「わたくしたちのパーティ、処遇を嘆いているのはクンラートくらいね。……ちょっと女々しく思えてきたわ」

「まあ、出世街道に向かうはずだったのに道を外れたあたりは、多少なりとも同情を禁じ得ないところはあるが」

「短い人生、ぱあっと花咲きたいものじゃない。付き合ってくれるのなら引きずりまわしますわよ。あの方結構お人好しですから」


 クンラートは世話焼きというか、年長者としてしっかりせねばと意気込んでいるようだが、そこら辺は利用させてもらおう。成人していないクソガキ三人に振り回されるクンラートも今から見ものだ。


「明日はギルドへ行くのよね? どんな依頼があるかしら」

「最初は地道に行くしかないだろうが、……君、無茶な依頼受けそうで怖いな」

「こう、冒険者らしく、剣と魔法でばっさばっさと行きたいですわね」

「……ディーデリック、クンラートと三人で絶対に止めますよ」

「わかった」

「信用ないですわね〜!」


 その後は夜まで会話を続けたのち、クンラートがぐでぐでになって部屋へとやって来たので、ディーデリックに介抱を任せ解散となり、寝支度を整えてベッドに入る。明日はいよいよギルドで依頼を受ける。どんな依頼があるかしらん。とわくわくと心を躍らせながら寝入った。


 霧の匂いはしなかった。

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