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セカンドセクシー:ボールは回らず

 ルールとチーム分けは簡単に決まった。いくら悪魔といえどサッカーのルールの方は分かる。焦点は勝者が何を手に入れるか? だった。

 セクシーパラディンが勝てばジュールリメの杯を取り戻す。悪魔が勝てば?

「俺の魂と、身につけた装備の全てを差しだそう」

「魂! そう言えばそうだった!」

 セクシーな提案を聞いて不義の地獄の王はようやく悪魔の本分を思い出した。更に提案に含まれる装備をパラディンが外し、その鍛え上げた肉体が晒されるにつれてセクシーであることも思い出した。

 セクシーパラディンの胸筋は筋肉ルーレットを行うに十分な盛り上がりをみせ、腹筋はあみだくじを行える程に割れていた。一人で40人クラスの席替えを取り仕切ることもできるであろう。

 一方、チーム分けは多少の軋轢を産んだ。席替えはできても一人でサッカーはできない。かと言ってセクシーパラディンに進んで組みしようという悪魔はほぼおらず、彼からサキュバス(とその一族)が指名された際にはやっかみと反対の声が渦巻いた。

「良いか?」

「うーん、ま、いっか!」

 しかしサキュバスが快諾した以上、他の悪魔は何も文句をつけることができなかった。

「あんた、さっきコウモリを助けてくれたじゃん? そのお礼もしたいしね」

 サキュバスがウインクしながら続ける。恐らく先ほど、不義の地獄の王がコウモリの悪魔を打とうとした時の事を言っているらしい。コウモリとサキュバスと言えばカプコンのアレ以来の仲である。

「あれはsave the batの法則と言って、序盤に好印象を与える手段だと父が言っていてな」

「それcatじゃない? それはそうとアタシ、サッカーなんてできないけど……」

 サキュバスがおおよそ淫魔とは呼べぬような、無垢な少女のように心配した。

「大丈夫だ。俺に策がある。みなさんには、セクシーフットボールをお見せしよう」


 両チーム簡単な打ち合わせをした後、早速試合が開始された。フィールドは地獄の荒野に骨を削った――なおその辺の雑魚悪魔が生きたまま削られた――粉で白線を引いただけのもの、ゴールは大口を開けたクジラの悪魔の口腔であったがフィールドはフィールドであった。

「地獄のサッカーをとくと見よ!」

 キックオフのボールを手下から受けた不義の地獄の王はさっそく右手をくるくると回し、天高く跳躍した。

「なっ!?」

 そしてセクシーパラディンがセクシーに驚愕する前で王は空中で方向転換し、両足を開いて着地しドヤ顔で仁王立ちになる。


 それはまさしくクリロナのゴールセレブレーションであった。まだゴールはしていないし、何ならボールも放ったらかしであったが。


「あほや……」

 セクシーパラディンが登場時から初めてセクシーさを忘れて呟いた。だが彼はサッカーについては忘れていなかった。

「ウイング広がってくれ!」

 不義の地獄の王が置いていったボールを拾いドリブルを開始しながら、セクシーパラディンはセクシーに指示を飛ばした。お約束のようにサキュバスの何名かが羽根を広げたが、セクシー忍耐でそれをやり過ごしフィールドのど真ん中を疾走する。

「いかん! 止めろ!」

 王の号令を聞き手下がセクシーパラディンの前に走る。一度、ウイングにはたいてセクシーリターンを貰うか? と悩む彼の視界の済みに、くるくると回る悪魔の右手が見えた。

「まさか……こいつらも?」

 セクシー予感は的中した。本来であれば彼のドリブルを止める為に近寄った悪魔たちが王と同様に跳躍したのである。

「こいつら、サッカーを何だと思っているんだ?」

 そう悩む彼の脳裏に昔、父から聞いたサッカー部の話しが思い出された。その部は、サッカーの練習よりもゴールセレブレーション、ゴールを決めた後の決めポーズの練習の方が遙かに多かったという……。

「ゴーール!」

 次々とクリロナの真似をする悪魔を無視しながら進み、彼はシュートをゴールに叩き込んだ。

「そして前半終了!」

 審判役の悪魔が高らかに宣言する。どうやら悪魔たちは得点が入ったらピリオドが終わる系の競技と勘違いしているらしい。

「やるじゃん、セクシーパラディンっち!」

「もうどこから突っ込んだら良いのか……」

 セクシーパラディンは痛む頭を抱えながら、歓喜に沸くサキュバスたちの元へ戻った……。

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