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第五章 海底洞窟潜伏中

「アメリカ艦隊に見つかりましたっ!!!!洞窟の入口を包囲されています!!」

旗康が藤堂艦長に告げる。

「では、洞窟の反対側に穴を開けて逃げよう!!!!魚雷四発を前方に発射だ!!」

「了解、魚雷装填…………発射!!!」

旗康は叫ぶ。魚雷が発射管に装填される音、そして、魚雷が撃ち出される振動が四回連続で響く。

だが、それだけで、穴は開かない。

「さらに二発魚雷を発射!」

指令室内に、藤堂の張り上げた声が共鳴した。


□□□


「ローレライ、洞窟の反対側に穴を開けて逃げるつもりのようですが、無駄でしょう」

ボーンフィッシュの艦内で、兵士が報告する。

「よぉし、そのまま包囲を続けろ、2日後に絶望を味わわせてやるっ!!!」

「引き続き包囲を実行、各自待機!!!!」

「ふふふ、必ず鉄の骸に変えてやろう、深海の魔女よ!!!!!」


□□□


「えっと、このプラグを溶接してっと…………」

枢木征人は、機関室でレーダーエンジンの修理を続けている。見たこともない機械だが、その形を見れば、だいたいの仕組みもわかるというのが、この少年の能力なのだ。

そこに、鉄製の扉を開けて、一人の少女が入ってくる。征人たちと同じカーキ色の軍服、しかしブカブカ。手元には調理した乾燥飯を使った、六個の球形の小さなおにぎりと、線のように細く切った鶏肉がわずかに入った粉末スープを乗せた、アルミ製のトレーがある。

「あっきみは!!!!」

「先程は助けてくださってありがとうございます!!!!えと、後わかんない…………」

「…………食事、貰っていいかな、君はもう食べたの?」

「あっはい!!…………えっと、食べていません…………」解ってるじゃないか………。

「それは駄目だ!!俺の食事を半分食え」

「でも、そんなことしたら、あなたが戦えなくなってしまっ…」

「大丈夫だ!軍人は食事を半分抜いたくらいで死にはしない!!だから食え!!!」

「あっありがとうございます!!だけど、今私が食べると多分全部食べてしまうから、先に半分食べてください…」

「なら全部食え、衰弱しているのはお前の方だ!!」

「そんなことできません!!あなたが死んでしまいま………」

「なら俺が全部食う!!!!」

そう言って征人はトレーを取り上げる。

「待って!!!!」

そう言って少女、イリアス・パーラーはトレーを奪い返し、数十秒でスープを半分飲み干し、ご飯を上半分だけ食べて征人に差し出す。

「終わりました!!」

「できるじゃねぇか………」


□□□


「引き続き魚雷を発射!!!!障壁を薄めろっ!!!!!」

「了解、魚雷を二発ずつ継続発射、通路完成まであと50メートルですっ!!」

倉木旗康少尉が声を張り上げる。

「艦長、いいんでしょうか、既に全魚雷の三分の一を使い果たしていますが………?」

「構わん!!魚雷のことなど後で考えればいい!!!!」

「しかし………」

「貴様は命令に従えんのかっ!!!!!!」

「はっ!!作業を続行します!!!!」

□□□


「じゃあ、君はこの潜水艦ドンガメコアとして乗り込み、君があのプラグから外れると、レーダーの性能は最大の半分以下になってしまう、というわけだね?」

征人は拳銃型のハンダゴテで作業しながら、イリアスの話を聞いていた。

「半分というか、4分の1です。あのレーダーは、人間の共感覚を利用した、画期的かつ、とても野蛮なレーダーなんです。最近の軍の研究では、クジラやコウモリのような動物が鼻腔から超音波を放って、仲間と会話したり、暗い場所で障害物や獲物の場所を探すことがわかっていますが、最近、五感を鍛え上げた人間には、それと同じような能力が発現することがわかったんです。ナチスはそれを利用して私のようなコアを用いた、高性能レーダーを備える戦闘機や軍艦、潜水艦、夜でも動き回れる戦車などを製造し、ヨーロッパの征服に成功すれば次は日本、そして中国、イスラム世界、最後にはアメリカを征服し、南極を除くほぼ全世界をその支配下に置こうとしています。そうなれば世界中に拡散しているほぼ全てのユダヤ人が殺され、政策に逆らう者は、たとえドイツ人であろうと殺されるでしょう。ヒトラーが作ろうとしているのは理想世界シャングリ・ラなんかじゃありません。彼が作ろうとしているのは、自分の意志が絶対的に行き届く徹底的な独裁国家、第三王朝ハーケンクロイツ帝国なのです。私の今の発言が妄想だと思うなら、私の眼を見なさい、き

っとあなたは、私が正気であることを知る筈ですっ!!!!!!!!!!!!!」

「分かった、とりあえず落ち着けって。……じゃあ、なんでお前は彼ら《ナチス》の命令に従って、このドンガメに…」

「その言い方は止めてください、ややこしいです………」

「ん………わかった。なんで君はこの潜水艦に乗っているんだ?」

「私は一反ナチスに従ったふりをして奴らを欺き、いつか反旗を翻して、あのハーケンクロイツの悪魔を殺してやります。父も母も友人も、みんなアウシュヴィッツで殺されました。私はこの憎しみを忘れません。命に代えてでも、独裁者ヒトラーを殺害し、これ以上人が死なないようにします!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「だが、高性能の戦艦とはいっても、こんな潜水艦一隻で、一国を滅ぼすことなんてできるのか!?」

「やって見せます。今も殺され続けている、私の同胞たちの為にっ!!!!!!!」

「だが意味はこんな身体だ。無理するのは良くない」

「いった筈ですっ!!命に代えても、奴らを殺すと……………!!!!!!」

「ああ、俺達も、命に代えても国を守るように教え込まれてきた。今は、多くのアメリカ人を殺せと言われている。それも、兵士だけじゃなくて、女子供も皆殺しにしろって言うんだ、ふざけた話だと思わないか?そのせいで世界中でたくさんの人々の命が奪われている。多くの弱い人々が、人権の欠片もない目に合っているんだ。なのに、そうやって上の奴らに意見すれば、俺達まで収容所に入れられて、下手すりゃ死刑だ。俺はこんな世界が正しいとは思わない。もし日本が戦争に勝っても、こんな差別が続くなら同じことだ。もし今俺達に言論の自由があれば、俺はこの戦争をすぐに終わらせるよう軍の上層部に意見するよ!!!!俺の父も母も、みんなB29の空爆で死んだんだから…………………………!!!!!!!!って熱っ!!!!!!!」

「落ち着いてください!!!!!!!!」

ハンダゴテを誤って左手の甲に押し付けてしまう征人。イリアスは慌てて医務室まで消毒液とガーゼを取りにいく。

《ああ、早く戦争が終わって、もう一度本国の土を踏めないかなぁ、もう知ってる人誰もいないけど……………》

少年は心の中で呟いた。


□□□


「当艦は既に4分の3の魚雷を消耗していますっ!!!!!!」

「余計なことを考えるなっ、今は逃げることが優先だっ!!!!!!」

旗康と藤堂艦長の押収が続いている。

艦内は急激なエネルギーの消耗と、兵士たちの過労による悲鳴に蒸されていた。

溜まった汗の臭いが、倉木旗康少尉の鼻筋を突き上げる。


「俺は…………國にぃ………帰るんだぁ………………………………………!!」

はあはあと息を切らしながら、旗康はレーダーとその2つ左の燃料と魚雷の残量を示すメーターを見詰め続ける。旗康の左隣の二人の兵士は、既に過労で倒れ、あと2日は働けない状態にある。

むさ苦しさはいつしか皮膚を刺す針のような痛みに変わり、艦は内側から蒸し上がる空気に押し上げられて、徐々に膨張していく。酸素はもう、2日と少ししか残っていなかった。

□□□


「艦長、これ以上酸素が保ちません、洞窟の入口に魚雷を撃ち込んで、総攻撃を仕掛けましょう!!!!!」

ボーンフィッシュの艦内で、レーダー係の一人が告げる。

「よし、作戦変更、洞窟を奇襲する!!!!!!」

ウィッティングトン艦長の雷鳴のような声。それが、戦いの狼煙だった………。


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