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突然「あなたが生贄です」と言われても困る(3)

少しずつ「水色の国」(仮)に入っていくさとり。

今いるところは『仮の国』だと言われてしまった。

いよいよ『水色の国』『生贄』のナゾに迫る!

あ、『イケボのライル』のナゾはまだ?

その日からだんだんと「スケジュール」というか「サイクル」のようなものが分かってきた。


初めて「水色の国」(って勝手に言っているが、イケボは何も言わなかったので「水色の国」という事に)に行ったのは、金曜日の夜だった。


土曜日は午後3時までの仕事なので、いつもより早く帰宅する。


それで何となく「水色の国」の事を思った途端に『では行きましょう』と来た。


断っても良いとはチラっと思ったが、やっぱり

「不思議な水色の国」と「イケボ」に興味はある。



しかも今のところいきなり『生贄』でもなさそうだと、ちょっと気が緩んでいる。


いくらなんでもそれはないだろう。

もし万が一そうだとしても、一通りの説明ぐらいあるはずだ。


現に『今日はこのくらいにしておきました。』って感じだったではないか。


段々慣らすにしてもしばらくは時間がかかりそうだし、あちらも(誰だか何だか知らないが)

いきなり『食べる』もしくは『差し出す』気はない感じがした。


『生贄』にだって人権はある!


『ふふ』


ん?笑った?


『いえ、失礼しました。』


「だって、そうでしょ?この状況につきあってるだけでもありがたいと思ってよね。」


『ありがとうございます』


どう返事しようかと思っているところで


『ワタクシの事は、ライルとお呼びください。』


「あら、ラインじゃないのね」


『違います。』


『じゃあライルさん。あなたは誰なんですか?』


『ワタクシは、使者でございます。』


「誰の?」


『貴女さまの』


「わたしの?」


『はい。』


「ちょっと待って、それはおかしくない?

そちらの国の人だか何だかが、ライルさんをわたしに使わしたんじゃないの?」


『いいえ、お忘れでしょうか?

ワタクシは生まれてこの方、貴女さま以外の方にお使えした事はございません。」


「は?」


やっぱりこれは悪い夢だ。

ずっとお一人様を楽しんで来たバチだか何だかが当たったんだ。


もしくは妄想癖が悪化して、ワケのわからない事になってると思い込んでるんだ。

えらい事だ!

こんな田舎町に精神科なんてあったっけ?

あったとしても、行った途端に職場にバレそうだ。

田舎のネットワークは恐ろしいんだぞ。


父が亡くなった時からずーーーっとわたしは

「早くに父を亡くした子」として分類されていた。

母でさえそう分類していた。ような気がする。

そして、自分でもそう分類した。


進学する時がデータの更新のチャンスだが、どこからどう嗅ぎつけてくるのか(本当にそう思えた)必ずバラすというか、わざわざ言う人が現れた。

「あぁ、お父様は早くにお亡くなりなったのね。かわいそうに」


そして知らなかった人も知っていく。


とっても子煩悩で優しくカッコよかった父は

あっと言う間に「ただの早死にした人」になってしまった。

(そしてわたしは「早くに父を亡くしたかわいそうな娘」でしかなくなった。)


でも「亡くなった」という事実としては間違ってはいないので、その不躾な多少の嘲笑さえも含んでいるような言葉にどう返そうかと思っているうちに、年月は過ぎて行った。


今となってはもうそんなに言ってくる人もいないし、親戚の集まりにも行かないので、家に帰ってからじわじわと悔しい思いをする事もなくなって行った。


でも、油断はしていない。


目に見ない鎧を着て自分の世界に入った。


ちゃんと現実との折り合いもつけ、仕事もして、人に何だかんだ言われる筋合いはないようにした。


わたしがちゃんとしていれば、父だって守られるのだ。


なのに、ここにきて「水色の国」「生贄」

「イケボのライル」だ。


あ、順番が違う。

「生贄」「水色の国」「イケボのライル」だ。

ん?まぁ順番はどうでもいい。


やっぱり何か自分にムリをさせていたのだろうか?


泣きたい時は泣けばよかった!

言い返したい時は言い返せば良かった!

悔しい思いを隠して、あんな失礼な人達に礼儀正しくなんてしなくて良かったんだ!

誰かの歌みたいに「うっせぇわ!」って言ってやれば良かった!


『落ち着いてください。』


『ここは貴女さまの国ではございません。』


『仮の住まいでございます。』


は?どゆこと?


そう思った途端に『水色の国』に来ていた。


『明日は「仮の国」は「日曜日」ですので、

こちらに一日中居ていただきます。』


またそんな勝手な!


え?仮の国なの?


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