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3話

できるだけ、短くても毎日投稿していきたいと思います。

 『ピピピピピピピピピピ』

 

 6:10の文字を表示しながら超高音で騒ぎ立てる目覚まし時計をすぐさま黙らせ、俺は上半身を起こした。昨夜の雨音がまだ耳から抜けきっていない。


「あー、なんか耳鳴りがする気がするんだが気のせいか」


 それほどまでに激しい雨だったということだろう。耳を軽くぽんぽんと叩きながら、枕元のスマホを取り、ベットから降りる。昨日は風邪をひかないよう早めに寝たため、何かメッセージが来ている可能性がある。電源をつけ、ロック画面を見ると案の定、通知がいくつか来ていた。

 俺はそれを処理しながら、洗面台へと向かった。六月とはいえ、夏の入り口である。朝とはいえど、夏の始まりを感じる温度だ。軽く顔を洗い、ふかふかのタオルに顔をうずめた。と、そこで俺は昨日の少女の事を思い出す。一夜ずっとあの公園にとどまり続けたとは思えないが、一応出かけるときに公園に立ち寄ってみよう。寝癖がないか鏡を見ながらそう考え、俺は洗面所を後にした。


 コーヒーを飲みながら、ラジオを聞く。どうやら早く入眠したため、いつもよりも質の良い睡眠がとれたらしい。

 普段よりも調子がよく、少しうれしく思っていると、ラジオから聞きなれた音楽が流れてきた。

ラジオ体操の音楽だ。あまり体を動かすことがない自分は、運動不足になりがちである。そのため、このラジオ体操をすることが毎日の習慣となっているのだ。

 しっかりと体操をこなし、深呼吸をする。朝に少し運動するだけでかなり体が軽く感じるものだ。

 朝食はトーストとヨーグルトの軽いもので済ませ、俺は昼食用のお弁当を作り始めた。それが終わったら、そろそろ通学の時間だ。

 忘れ物がないか確認をし、俺は家を出た。玄関のドアを開け、空を見上げる。これで、雲一つない青空であるならば最高だった。しかし、昨日の天気から一転、快晴になるはずもなく曇天の空である。それに加えて、月曜という週の始まり。あまり気分は上がらないだろう。

 

 しっかり鍵をかけたことを確認し、昨日の公園のほうに目を向ける。どうせ誰もいないのだろう。そう思って、昨日少女が座っていたベンチを見て、


「……は、はあ!?」


 思わず、声が出た。俺の視線の先には、昨日と変わらず座り続ける少女がいたのだ。しかも、俺が渡した傘は開いた状態で地面に転がったまま。つまり、傘を差さずにずっと雨に打たれ続けたということだろう。


「あいつ、まじでふざけるなよ……!」


 俺は居ても立っても居られなくなり、すぐに駆け出した。道路を渡り、公園に向かう。そして、彼女の目の前で仁王立ちになった。今、雨は降ってない。が、地面がすぐに乾くわけもなく、ぬかるんでいるのが当たり前だ。足元を見れば走ったせいで靴は汚れてしまっている。だが、それ以上に、言いたいことが多すぎる。


「おい、あんた。何してんだよ」

「……」


 敬語で話すことはやめた。俯く少女を上から見下ろし言葉を放つ。だが、彼女は昨日と同じように、全く反応を示さない。昨日はいら立ちを覚える程度だったが、今回ばかりはかなり気がたっていた。


「まじで、なんか言えよ!」


 しゃがみ込み、彼女を覗き込みながら言う。思えば、これが初めて彼女と目を合わせるのではないか。そう思いながらも、彼女の顔が目と鼻の先にあるぐらいまでは近づく。


「…っ!」


 やっとその時、彼女の小さい口から息が漏れ、反応した気がした。いや、反応した。しっかりと、その琥珀色の目が俺の顔を捉えた。


「やっと、こっち見たな」


 そして彼女がこちらを向いてくれたことに、何とも言えない気持ちを抱く。なぜ、今まで俺の声に反応しなかったのか?あんな雨の中ずっとここに座っていたのか?まずは何から聞けばいいのだろうか。


「…なんで、見えるんですか」


 彼女の口から細い声がこぼれた。聞き取れるか聞き取れないかの狭間ほどの声量だ。幸いにも俺は聞き取ることができたが、その言葉の意味を理解することができなかった。“見える”とはどういうことだろうか?


「何を言って…」

「だから、何で見えるんですか!……わ、私、死んでるのに!!」





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