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シーツの海の中で

作者: 一布


 あなたは私を包み込む。


 暖かく、優しく、柔らかく、抱き締めるように。


 そんなあなたに包まれて、私は幸せな眠りにつく。


 冬の、寒い夜。


 家の中でも、凍えるほど寒い。


 でも、あなたに包まれていると暖かい。裸でも、寒くない。


 体だけじゃなく、心まで温めてくれているよう。


 優しく包まれる感触が気持ちよくて、眠気に包まれているのに、幸せすぎてなかなか眠れない。


 こんな時間が、ずっと続けばいいのに。


 私を包むあなたに、そっと触れる。


 私の体温が伝わって、あなたもとても暖かい。


 ずっとこうしていたい。


 いっそ、あなたと結婚できたらいいのに。


 そんな、現実的じゃないことまで考えてしまう。


 ずっと一緒にいられないなら、このまま時間が止まってしまえばいい。


 動かない時間の中で、私は永遠にあなたに包まれているの。


 あなたの温かさに包まれながら。


 私の体温を、あなたに伝えながら。


 でも、時間は止まってくれない。


 私の幸せを奪うように、朝がくる。


 あなたと私を引き離す、朝がくる。


 カーテンの隙間から朝日が差し込んできて、夜が明けたことを残酷に伝える。


 目覚まし時計が鳴った。


 十二時を過ぎたシンデレラのように、夢のような時間が終わった。


 私は手を伸ばす。


 目覚まし時計を止めた腕が、部屋の寒さで冷えてしまった。


 あなたに包まれて、暖かくなっていたのに。


 私を包み込むあなたからスルリと抜けて、私はシーツの海から抜け出した。


 裸の体が、一気に冷えた。


 さっきまでの暖かさが、嘘みたい。


 私はあなたに視線を向ける。


 ベッドの上の、羽毛布団。


 すごく高かった、羽毛布団。


 暖かかった。


 名残惜しさを感じながら、私はシャワーを浴びに行く。


 その前に、足を止めた。


 ベッドの方を振り返って、別れを告げる。


「私、もう行くから」


 私を温めていたあなたは。


 暖かい羽毛布団の中で、まだ寝息を立てている。

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― 新着の感想 ―
[一言] お見事! お上手です♪ 感想欄を読んでニヤリとなりました。
[良い点] 情景と情感ばかりで相手が<誰>かを悟らせない作風と思いました。 やはり相手は<男性>と思うと<旦那>とも<不倫相手>とも取れますが、今までの著者様と作風から察するに・・・。 [気になる点]…
[一言] 最初は「シーツ」か「ふとん」をあなただと思っていたのですが…。 『暖かい羽毛布団の中で、まだ寝息を立てている』で 「誰!?」となりました。 シーツって寝息たてない。 オチを読者に投げかける短…
感想一覧
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