願いを叶えなさい①
王国には、ある双子の姉妹がいた。
活発で気立てが良く、頭の弱いちょっと残念な姉
病弱だが優しく聡明な妹
病により床に伏せることが多い妹を姉はよく看病していた。
「何か食べられそうな物はない?少しでも食べた方がいいわ」
「お姉様、、、市場にあるあのリンゴなら少し食べられそう」
「リンゴ?隣国から仕入れたっていうあのリンゴね!わかったわ、すぐに買ってくるから少し待っていて!」
姉はリンゴを買いに街へ
その途中、露店で売られている1つの石が目にとまる。なんて綺麗な石だろう、宝石とは少し違いその深い青にどこか吸い込まれそうだ。
(綺麗だろう?お嬢ちゃんにあげるよ、持っていきな。その石に願い事をしてごらん、きっと叶えてくれるさ)
露店の老婆はどこか少し不気味だったが、何より石を気に入っていたため貰うことにした。
数ヶ月が過ぎ、回復に向った妹に婚約の話しが持ちあがる。妹も好意を寄せているようで縁談はすぐに決まった。
「おめでとう!私もとても嬉しい!その方とは以前から知り合いだったの?」
「ありがとう、お姉様。えぇ、少しだけ、、」
ある日、婚約者が妹の様子を見に家を訪ねた
どんなヤツが可愛い妹の旦那になるかしっかり見定めてやる、そう意気込んで扉をあける
あっ、ーーーー?
今日は具合が良さそうだね、ーーーーー。
その顔はよく知っていた
理解した瞬間モヤモヤした何かが心を覆う
その日を境に婚約者はよく家を訪れるようになった。
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妹の体調はどんどん良くなり外に出られるまでに回復した。婚約者が家を訪れては二人はよく庭を散歩していた。
なんだか今日はその様子が気になり、こっそり後をつける
(きゃっ!!)
(おっと、大丈夫?)
転びそうになる妹を支え、微笑みかける横顔に胸が酷く痛む、、
(あぁどうして、どうして妹なの?何故そこにいるのが私じゃないの?大好きだった妹が恨めしい)
考えれば考えるほど醜い感情に支配されていく。
そんな時、ふとあの石のことを思い出した。
叶うはずがないとは分かっていても願わずにはいられない
『ーーーの隣に私が立ちたい。愛されるのは私よ』
ところが、いくら願えど石に変化はなかった
残念なような、ほっとしたような複雑な気持ちのまま、また日常へと戻っていく。