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ブローチを作りなさい①

 

 伯爵には双子の自慢の娘がいる。


 健康で活発な姉、病弱だが優しく聡明な妹。姉はとても妹思いでよく看病をしていた。

 そんなある日姉は特別な石を手に入れることとなる。




 *************




 暑い日差しが窓を照りつけ、セミの鳴き声が耳につく

 城ではまた侍女がなにやら話している。


(また王妃様が我が儘を言っているそうじゃない)

(今度は街一番の職人に、エメラルドでこの世に1つだけのブローチを作るように言っているらしいわ)

(エメラルド!?隣国との貿易交渉の為に王がほとんど渡したばずよね。いくら職人といえど手に入らないんじゃ、、)

(だけど、もしできないなんて言ったら、王妃に何をされるか分からないわ!!)





 扇子で口元を隠しにっこりと微笑む。隙間から覗く赤々とした瞳に冷や汗を垂らす。


「本日はお日柄も良く、王妃様におかれましはいっそうお美しい。」


「わたくし、晩餐会につけていくエメラルドのブローチがほしいの。作ってくださいますわよね?わたくしだけのブローチ」


「王妃様。。恐れ多くもブローチは作れど、エメラルドはございません。皮はいかがでしょうか?ちょうど先日、王妃様にぴったりの品が入りました。」


「いいえ、エメラルドで作りなさい。出来ないと言うのなら、今後あなたからの装飾品は結構よ。別の者にお願いするわ。」


「いえ、いえ!!王妃様、自分におまかせください!必ずや王妃様のお気に召すブローチをお持ち致します」





 ◇



 青年の夢は立派な職人になることだった。

 師匠に弟子入りした日から今まで、師匠が仕事をしているところを見たことがない。大抵下請けにやらせて、自分はギャンブルだ。

 俺がやってきたのは家事と雑用。暮らしていく金がないから、夜の仕事をすれば稼ぎは全てとられ、抵抗すれば殴られた。

 やっと仕事が来たと思えば、王妃のブローチを作れだなんて。。



「師匠、俺には王妃様のブローチなんて作れません!ブローチなんて作ったことがないのに、絶対に無理だ!!」


「うるせぇ!お前は黙って俺の言うこと聞いてればいいんだ!その辺のブローチを宝石だけ変えればいいだろ!?」


「そ、そんなんじゃ王妃様は納得しないし、許してくれない!!」


「いざとなりゃ、お前に処分を受けさせるから関係ない!見習いがブローチを壊しただの、盗んだだの言っておけば俺はおとがめなしさ!!」


 そういうと職人は部屋を出て飲み屋へと向かった。



 くそっくそっ!!このままじゃ俺は!!


 はっ、と青年は辺りを見回す

 放り投げられた壊れたブローチ、深い緑の石を掴むと、おもむろに何かを作る。それは職人が作ったとは到底思えず、どこか淀んでいた。


 こんな物を王妃はけして許してはくれない。でも俺だけ罰を受けるなんてごめんだ!!

 ブローチに針を着け、先端には毒。

 箱を開け持とうとすればそれは王妃の指に刺さる。毒となれば俺だけじゃない、師匠も罰を受けるはずだ。何せ俺は師匠の見習いだから




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