金のリンゴを持ってきなさい 完
私はこの国の王妃、我が儘で傲慢な王妃として生きてきた。
そんな私の長年の夢が今まさに叶うところだ
ことの成り行きは、召使いに金のリンゴを持って来いと無理難題をふっかけるところから始まる。
「金のリンゴよ。私は金のリンゴが食べたいの持ってきなさい。」
「し、しかし王妃様。。金のリンゴはこの世に存在しません。いくらお持ちしたくともそれは難しいかと…」
「北の森に黄金に輝くリンゴがあると街で噂になっているというのに、わたくしには持ってこれぬと、それならば他の者にお願いするしかないわね、、、下がりなさい。」
「お、お、おおお持ちします!王妃様に金のリンゴを必ずやお持ち致します!!どうか今しばらくお待ちください!!」
あの怯えよう、私に殺されると思ったわね。事がうまく運びそうでよかったわ。
そろそろ森から戻ってくるかと城の中をうろうろしていれば、案の定ただのリンゴに金を塗り毒をぬっている召使いを見つけた。
あとはそれを食べるだけという時に、あの忌々しい王が来たのだ。
『何を、、食べているのかな?』
「ご、ごきげんよう。珍しいですわね、こんな時間に王様がわたくしの部屋にいらっしゃるなんて。これは金のリンゴよ、美しいでしょう?これからいただくところですの」
「へぇ、金の、、珍しい物があるんだね。僕もいただこうかな?」
「あぁ、すまない王妃。大事なリンゴを落としてしまった。金のリンゴはまた今度でもいいかな?それよりも君が作ってくれたという、タルトを一緒に食べよう。ね?」
「え、えぇ。構いませんわ」
(なにがすまないよ!完全にわざとじゃない!!)
そう、あの王は何かと私の邪魔をする。
馬に蹴られようとすれば手を引かれ抱き締めたくなっただの、ベランダから飛び降りれば、今夜は外で夜空を見ながら寝ようと思ったんだと、マットが何十にも敷かれていたり、、まったく毎回タイミングが悪すぎる!!
◇
僕の王妃はバカ(可愛い)だ。
なぜかいつも死にたがる。色々頑張ってはいるみたいだけど、僕が僕の大事な可愛い王妃を死なせるはずがないのにね。おバカな王妃。。
政務の休憩がてら城内を歩いていると、なにやら召使いが必死にリンゴを金色に塗っていた。そして少し後ろには王妃がその様子を見ている。
あ~あ、隠れているつもりだろうけど、そのきらびやかな服じゃ丸見えだね。なにかありそうだから王妃の部屋へ行こうか。
部屋の中からなにやら声が聞こえた。金のリンゴを食べるだのなんだの…あれを王妃に食べさせる気なんだねあの召使いは。そっかそっか、
『何を、、食べているのかな?』声をかければ召使いの顔がひきつったのが見えた。
危ない危ない、あと少しで毒リンゴを食べられちゃうところだったよ。あの見た目で毒だって分からないのかな?いや、まぁ本人は食べたかったのか。でも死なせてなんかあげないよ。
僕の大事な愛しい王妃。
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暖かい日差しが窓から差し込む
「この前のタルトとても美味しかったよ。王妃はお菓子作りも上手なんだね。また食べたいな」
「気に入っていただけたのなら、好かったですわ。王様のために一生懸命作りましたの」
「ありがとう、嬉しいよ。そうだ!今度は二人でピクニックにでも出掛けようか。たまにはデートもいいよね?」
「デ、デートでございますか!わたくしとても嬉しいです。そのおりは王様のために、お弁当なるものをお作り致しますわ!」
部屋からは明るい笑い声が聞こえる。
数日前、王妃に金のリンゴを届けた召使いは城を出て行ったという。
(今度こそ叶えて見せるわ)
(今日も王妃はおバカだね。)
金のリンゴを持ってきなさい。をお読みいただきありがとうございます。
のんびり楽しく書いていきたいと思います。読んでいただけますと嬉しいです。
ありがとうございました。