金のリンゴを持ってきなさい①
王国。貧困に苦しむことも災害に悩むこともない、緑の山野に囲まれ誰もが幸せに暮らす理想郷
そんなこの国にも王と王妃が存在する。
臣下や民に愛され慕われる王、傲慢で我が儘ゆえに嫌われた王妃、二人の物語である。
なにやら侍女がバタバタと忙しそうに走り回っている。
(また王妃さまの我が儘が始まったわ!!)
(森から金色のリンゴをとって来いと命令したそうよ。持ってこられなければ死罪と!)
(金色のリンゴ!?そんな物あるわけないじゃない。。それに死罪だなんて酷すぎるわ!!)
扇子で口元を隠しにっこりと微笑む。隙間から覗く赤々とした瞳に冷や汗を垂らす。
「金のリンゴよ。私は金のリンゴが食べたいの持ってきなさい。」
「し、しかし王妃様。。金のリンゴはこの世に存在しません。いくらお持ちしたくともそれは難しいかと…」
「北の森に黄金に輝くリンゴがあると街で噂になっているというのに、わたくしには持ってこれぬと、それならば他の者にお願いするしかないわね、、、下がりなさい。」
「お、お、おおお持ちします!王妃様に金のリンゴを必ずやお持ち致します!!どうか今しばらくお待ちください!!」
王妃の部屋を飛び出した召使いはすぐさま支度を済ませ、北の森へと急いだ。
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森でいくら探しても、腐った黄土色のリンゴはあれど金のリンゴは見つからなかった。
そこで、召使いは赤いリンゴを金に塗ることにした。だが普通のリンゴを金に塗ったところでバレるのは時間の問題、王妃を欺いた罪として死罪は免れない。どうせ己が殺されるのならば王妃も道連れにと毒を塗る。
コンコンッと扉を叩く音が鳴り男が声をかけた。
「お、王妃様!!北の森より金のリンゴをお持ちしました!」
「入りなさい。」
「しっ、失礼致します。王妃様こちらが金のリンゴにございます。ど、ど、どうぞお召し上がりください。」
「ご苦労でしたね、あなたには褒美をとらせましょう。ほぉ、これが金のリンゴ、、美しいわ。」
王妃は侍女にリンゴを切らせ1つ口元へと運ぶその様子を、早く食べろ、早く食べろ!と固唾を飲んで見る。
『何を、、食べているのかな?』