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魔導書

登校2日目の朝、ルイは昨日の様にアリスに捕まりたくはなかったので朝早く学校にきた。まだ誰もいない学校、生徒は誰もきていない。自分がこんな早く登校するとは思っていないだろうと言うルイの考えだった。

しかしアリスにはそれが通用しなかった。




ルイ「……」


アリス「おはようございます。ルイ君」


ルイ「昨日に引き続き、あなたは僕を困らせるのが好きなのは分かりました。ですが昨日講義を受けれんかったので今日はお相手はできませんよ」


アリス「昨日新しいクッキーを作ってみたのですが、一緒にどうですか?おいしいお茶もありますよ?」


ルイ「聞いていましたか?今日は遠慮させていただくと言ってのですが」


アリス「あら、それでは今日以外は大丈夫とう事ですね?それなら明日にでも」


ルイ「そういう事じゃ…。僕はここに魔法の勉強をしにしたのですが」


アリス「ルーンをあれ程理解しているには魔法基礎学やその他、魔法学を熟知していなければいけません。ここで学べる事がある様に思いませんが」


ルイ「それはあくまで今ある知識が僕にはあると言うだけの事です。新しい発見はいつ、どこで、何を引き金で見つかるかは分かりません。僕はそのためにここに来たんです」


アリス「それはそれは、理事長として嬉しい限りです」


ルイ「そんな貴方が僕のやりたい事を邪魔してると言う事に気付いてますか?」


アリス「そうですか?私はてっきり貴方は新しい知識を求めていると思って、トップレベルの魔法書を用意していたのですが、仕方ありませんね。せっかく理事長権限で何重にもあるセキュリティーの手続きを終えて今朝届いたのですが、これは返すしかありませんね。次にあの本が手元に来るのは一体何年後になる事か…」




アリスはチラッとルイの方を見る。するとルイの目は信じられないくらいキラキラしていた。

その目を見たアリスは強烈な母性本能にかられた。




ルイ「そ、その魔導書は一体、第何魔導書なんですか?」




ルイは恐る恐る聞く。魔導書には全てランクが付けられている。それは数字が大きいほど価値がある。第一魔導書は初歩の初歩、子供お小遣いで買えるほど安価だ。しかし第二魔導書となるとその価値は10倍以上に跳ね上がる。更に第三魔導書ともなれば貴族にしか手に入れれない程にもなる。




アリス「第五魔導書です」


ルイ「なっ!!それは本当ですか!?全部で8種ある魔導書の中でもお金で買えない魔導書…。世界中で20冊しかないと言われている第五の魔導書が今あると言うのですか?」


アリス「はい、私の権限なら第八だって閲覧する事ができますよ」


ルイ「第八魔導書まで…。本当に、本当に読めるんですか?世界で第4以上の魔導書は国王でさえも閲覧できないと言われている程です。それを何故貴方が?いくら貴方の高い地位でもそれを信じる事は…」


アイス「その通りです。本来、私の地位で閲覧できるのはそれこそ第五までです。しかし私は第六、七、八の魔導書を全部で13冊見つけています。それを大魔導禁書庫に寄贈する事を条件に全ての魔導書の閲覧権を持っているのです」


ルイ「それって何かの冗談ですか?聖遺物である第四以上の魔導書は10年に一度しか発見されないと聞いていますが…」


アリス「私は運が良かったのでしょう。少し気になる遺跡に入ってみたら見つけちゃったんですよ」


ルイ「そんな軽い感じで言われても…」


アリス「その話はまた今度にしましょう。それで今日は一緒にお茶をしてくれないと言う事でしたよね?それでは私は返却の手続きがあるのでこれで」


ルイ「ぁ……」


アリス「どうかしたのですか?」




なんてアリスは言うがルイの言いたい事は誰にだって分かるくらい顔に出ている。




ルイ「その……本当に魔導書を読めるんですか?」


アリス「はい、貴方が私とお茶をしてくれればの話ですが」


ルイ「はぁ、分かりました…。今日は貴方の口車に乗るとしましょう。一生ないチャンスですし」


アリス「それは良かったです。では行きましょうか」


ルイ「はい」




ルイは仕方ないと言う様な言い方をしたが、その顔はこれ以上ないと言える程キラキラとしていた。

魔法使いは基本、知識欲は強いがルイはその中でもかなり強い方だろう。

今回は周りに生徒がいる訳ではなかったので、歩きで理事長室に向かった。

その道中、ルイは常にうずうずしていた。そんなルイを見てアリスは柔らかい笑みを浮かべていた。




ルイ「オィ…!!これが5人の大賢者様に認められた者しか手にとる事が出来ない第五魔導書…。ほ、本当に読んでいいんですか!?」


アリス「えぇ、好きなだけ読んでくだい。私はお茶とクッキーを準備してきますから」




アリスはチッキンに向かう。お茶の準備をしながらルイの方を見てみるとかなり集中して魔導書を読んでいた。

恐らくアリスが話しかけてもその声がルイの耳に届く事はないだろう。




アリス「本当に、不思議な子ですね。あれ程の残酷な過去を持っているのにも関わらず、あんなに幸せそうな顔が出来るなんて…」





アリスは魔導書に釘付けになっているルイを眺めながら自分で入れた紅茶に口をつける。

幸せの味を、綺麗な朝陽に照らされてアリスは1日の始まりを感じていた。












朝の7時から12時現在まで魔導書を読み続けているルイを見ながら、アリスはルイについて考えていた。

この年であれ程の技術と知識、そして今も圧倒的な集中力を前に驚愕していた。

一体何がルイをここまでさせるのか。あの記憶が関わっているのか…



コンコン




「アリス様、よろしいでしょうか?」


アリス「開いてますよ」


「失礼します」


アリス「メリーさんでしたか」


メリー「はい。昨日の設備の事はお疲れ様でした。それで先ほど1年Aクラスの担任からルイ・ゼノンという生徒が2日連続で無断欠席していると報告を受けました。それで退学させて欲しいと言われたのですが」


アリス「ルイ君ですか。彼ならそこにいますよ。今私の魔導書を読んでいます」


メリー「何故ここに?それにあの魔導書はアリス様のでは?それも第五魔導書の様ですが…」


アリス「色々ありまして。彼は今後Aクラスには行きません。と言うよりAクラスから外します」


メリー「それではどうなさるおつもりで?その様子だと退学はさせない様ですが」


アリス「新しいクラスを作ります。彼だけのクラス、担任はこの私が勤めます」


メリー「それは他の教師や生徒だけではなく、貴族や王族の反感を買う恐れがありますが」


アリス「分かっています。しかしこれはもう決めた事です」


メリー「アリス様がそう言うのであれば、私は従います。それでよろしければ彼の説明をさせてもらってもよろしいですか?」


アリス「そうですね、言うなれば五人の大賢者になり得る人材とだけ言っておきましょうか」


メリー「五人の大賢者って…。生きた神話とまで言われている方々ですが、彼がそこまでの才能を?Aクラスの担任は魔盲と言ってましたが」


アリス「はい。彼はその知識と技術でルーン文字をこの世界の誰よりも行使できます。恐らく五人の大賢者でさえできない事も」


メリー「それほどの逸材なのですか。それで新しいクラスを仰ってましたが具体的にはどの様なクラスを?」


アリス「特進クラスです。とは言ってもルイ君専用のクラスの様なものですが」


メリー「それは何とも思い切った事をしますね」


アリス「えぇ、それでメリーさんには副担任になってもらいたのです。もちろんその分の給料も上乗せします。それに副担任と言ってもやる事はこれまでとほぼ変わりません。どうですか?」


メリー「私は構いません」


アリス「それは良かった。それではルイ君に紹介したいのですが、ご飯の準備を手伝ってくれますか?彼今、魔導書を読むの夢中になってしまって。それに今はそんなに畏まらなくてもいいのですよ?」


メリー「そう?それじゃそうさせてもらうわね」


アリス「外でもそれでいいんですよ?私は気にしませんし」


メリー「それでは他の教師たちに示しが付かないでしょ?」


アリス「それもそうですが」


メリー「アリスは昔から甘えん坊ね。それより早くご飯の準備をしましょう?」






二人はまるで本当の姉妹の様に仲がいい。この関係は学院で知る者はいない。

そして笑いあいながら昼食の準備を進めていった。

メリー・ケイズ 29歳 女性アリスの姉の様な存在。10歳と13歳の妹がおり、両親は既に他界。実力はかなり高い

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