ルイの存在
ルイとの対談を終えた。アリスは朝から夕方までルイを理事長室に居座らせていたので全授業を公欠扱いにしておいた。
今回の対談でルイの事を1割でも知れればいい、そう思っていたが予想以上に壮絶な過去、人格だった。
ルーンにおいても根本的な常識をひっくり返す思考、技術、発想。
魔盲は昔からその理不尽さに対して自らの才能を常人よりも磨いてきた。それは称賛せずにはいられないものだ仮だった。
しかし、今回はそんなレベルではなかった。本来ならルーンを使える。それだけでも歴史に名前を残せると言っても過言ではない。現にルーンを使える者は100年に一人と言われるくらい少ない。
ルーンを行使できる者が同じ時代に二人いたと言う記述はこの1440年でわずかの3回だけ、いや3回もあったと言った方が正しい。何せルーンを行使できる者が400年現れなかったと言う記述もあるくらいだ。
それなのにルーン文字の中にある【完成された魔法陣】とまで言われる膨大な情報の中に他のルーンの情報を混ぜ込むなんて型破りにも程がある。いかに才能があろうと、いかに技術があろうと、いかに時間を費やそうともそれ使いこなせる自信はアリスにはなかった。
アリス「ルイ・ゼノン君。君は本当に人間なの…?それにあの記憶、あの様な経験をして精神を保っているなんて」
アリスはルイの事を考えながら紅茶をすする。そんな時、理事長室のドアを誰かがノックした。
「すみませ〜ん。理事長います〜?」
アリス「空いてますよ。どうぞお入りください」
「そんじゃ失礼しま〜す」
そう言って部屋に入ってきた人数は4人、ドアをノックしたであろう人は先頭にいる少し気の抜けた雰囲気だがその目にはどこか強い信念の様なモノを感じさせる。他の3人は付き人であろうか、黒いローブに身を包み畏っている様に見える。
アリス「あなたがここを訪れるなんて珍しい事もあるモノですね。ハウザさん」
ハウザ「いや何、気になる噂を聞きましてね。あのアリスさんが興味を持った少年がいたと聞きまして」
アリス「相変わらず耳が早いですね。それに私が他人に興味を持つ事がそんなに珍しい事ですか?」
ハウザ「いえ、こっちが気になるのはあなたが興味を持った少年ですよ。どんな少年なのですか?」
アリス「この事はあまり他の人には言いたくはないんだけれど」
ハウザ「他言しません、俺の口の硬さ知ってるでしょ?」
アリス「…そうね、分かったわ。まずは大前提を話しておくわ。あの子は魔盲でありながらこの学院に修学を果たしました。その入学は私が決めました、その決定に不正は一切ありません」
ハウザ「魔盲で入学ですか?一体何をしたんですか?」
アリス「……ルーンを行使できるわ」
ハウザなっ!あの歳で!?一体何者なんですか、ルーンを行使できるなんて国宝級なんてもんじゃありませんよ。国王よりも上の地位も権威も富も手に入れる事ができるルーンの行使者、それが魔盲だなんて知れた日にはその少年、バラされますよ」
アリス「分かっていす。そんな事をさせないために国王にも、ガルフ様にも報告していないのですから」
アリスはハウザの言葉で、ルイの記憶で見たあの地獄の様な映像が脳裏を過ぎ、不機嫌になる。
顔に出ていたのかハウザが心配してきた。
ハウザ「アリスさん?どうしました?」
アリス「いえ、何でもありせん。それよりハウザさん、まだ話は終わっていません」
ハウザ「まだあるんですか?そんな話よりまずその少年をどう匿うかを考えた方がいいんじゃないんですか?このままじゃ本当にバラされ…」
アリス「ルーン文字の複数同時操作」
ハウザ「……!!!!」
ハウザはあまりの事に声を出せないでいた。頭がついていかない、それは当たり前の事だった。
ルーンの行使者が出たと言うだけで世紀の大ニュース。しかしそれを複数を同時に操作するのはあらゆる面で不可能。そう結論づけられたのだ。
ハウザ「何を言ってるんですか。そんな事できる訳がない。それが出来るとしたらそれはもう神の域です」
アリス「落ち着いてください。簡単に言えばルーンの同時操作と言う事です」
ハウザ「簡単、ですか…」
アリス「はい。正確に言うと、ルーン文字の中にある情報に他のルーンの情報を介入させる事ができる」
ハウザ「…すみません。その話今度でいいですか?もう、頭が回りません」
アリス「そうですね、また今度にしましょうか。その時までにルーンの事を知っていて下さい。そうでなけれなば到底理解できないので」
ハウザ「簡単に言わんでください。ルーン文字を知るなんて口では簡単に言えますけど、複雑な基礎構造を解くのに1000年以上はかかったと言われてるじゃないですか」
アリス「あなたにならできるでしょ?」
ハウザ「まぁできない事もありませんが…、分かりました。やっておきます」
二人がそんな話をしていると再びドアがノックされる。
アリスが許可を出し、この学院の教師であろう女性の人が入ってくた。
「失礼しますアリス様、学園の設備で相談したい事があるのですが…あ、申し訳ありません。御来客の方がいらっしゃったとは」
ハウザ「あぁ、気にしないでください。俺たちの用事はもう済んだんで。それじゃアリスさん、また今度」
アリス「ええ、ハウザさん。また今度」
ハウザとお付きの3人は部屋を後にする。
教師はハウザと言う名前に驚きを隠せないでいた。
「あ、あのアリス様。さっきのお方もしかして、聖十聖騎士第5部隊隊長。ハウザ・ウィンキル様ですか?」
アリス「ええ、そうですよ。相談に乗って欲しいと頼まれて。それよりも設備について相談があると言ってましたね?どうなさったんですか?」
そう言うと教師は話を始める。アリスはもちろん聞いてはいるがそれよりもルイの事が心配で少しだけ上の空になっていた。明日もまた同じ様な方法で無理やりこの部屋に連れてこよう。そして彼の事をもっと知ろうと思ったアリスのだった。