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過去

美味い…。サンドイッチってこんなに美味しい物だったかな。

何が違うのかはよく分からないけど取りあえず美味しい。

しかしこの事は自分の前にいる理事長には言えないな。

また新しいご飯出してきそうだし、既にキッチンにお茶用の出し物あるし。




ルイ「ご馳走様でした。ありがとうございます」


アリス「お粗末様です。どうでしたか?今回のは結構自信作だったのよ?」


ルイ「お、美味しかったです。もしかして理事長が作ったんですか?」


アリス「そうよ?意外かしら?」


ルイ「まぁ、意外っちゃ意外ですね」


アリス「そう、私って結構料理好きなの。家でも自分で料理を作ります。お昼も自分で作ってるんですよ?」


ルイ「そうだったんですか。お嬢様って感じがするのでそういう事は家の人に任せているのかと思いました」


アリス「確かに家柄は悪くは無いですけど、私だって女ですのでそういった嗜みにだって気をつけているつもりです。それにルイくんだって料理ができない人よりできる人の方がいいでしょ?」


ルイ「何か変な意味が含まれてそうなのでノーコメントで」


アリス「あら、残念」


ルイ「それより、そろそろ僕をここに呼んだ理由を話して下さい」




ルイがそう聞いた途端にアリスは黙り込んだ。何故黙ったのか分からない以上、ルイも下手に話し出せない。

アリスが話し出すのを待っていると、2分の沈黙の後にアリスが口を開いた。




アリス「ルイ君、あなたは何者なのですか?」


ルイ「質問の意味が分かりません。それは僕の出身の事ですか?種族のことですか?それとも、魔盲なのに試験で見せたあの魔法もどきの事ですか?」


アリス「もどき?あれは魔法では無いというのですか?」


ルイ「それでは理事長、あなたは魔素を使った現象を魔法以外に何を知っていますか?」


アリス「それは魔術、錬金術では?」


ルイ「それではルーンとは一体何かご存知ですか?」


アリス「それは文字であり【完成された魔法陣】の一つでは?そのたった一文字に膨大な情報量がある。ルーンを使った現象は魔法に近いですが魔素を使わずにその一文字の情報量を理解することで魔法陣を発現させ、魔法を打つことが出来る。その情報量が【完成された魔法陣】と言われる所以なのではなのですか?」


ルイ「それは違います。それはもう根本的に」


アリス「根本的に…ですか。それでは一体ルーンとは?」


ルイ「それは【未完成の魔法陣】、言い換えれば【魔法の可能性】というやつですね」


アリス「未完成?完成されてないということですか?それでは何故ルーンを使って魔法陣や魔法を放つことができたのですか?」


ルイ「それはルーンの中に他のルーンの情報を割り込ませたからです」


アリス「「な!そんな事出来るはずがありません!ルーン1文字の情報量は上級魔法約50発分、多い物だと100発近くになるのもだと聞いています!私でも上級魔法の同時展開は4発が限界です!しかしそれでもルーンを発動できるのは複数の動作がいらなからです!それでもルーン1文字を発動させるのには上級魔法1発の発動時間より倍以上の時間を要します!それに発動には上級魔法3発並みの技術は最低条件です!」


ルイ「さすが理事長、よく理解してますね。ここまで正確にルーンのこと知ってる人は専門学者くらいでしょう。他の人はルーンの情報量だけを知っているくらいですからね。理事長が先ほど仰った事はその通りです」


アリス「い、今はそんな事どうでもいいんです!それに私が一ったことが間違いじゃなければルイ君はどうやってルーンの中にルーンの情報を介入させるなんてことが出来るのですか!?」


ルイ「そう…ですね。理事長に教える方法は2つあります。一つは口頭でお伝えする事、もう一つは僕の記憶を映像として視覚的に見る事です」


アリス「記憶を視覚的にですか。それもルーンを使って行うのですか?」


ルイ「はい。まぁ記憶と言っても必要最低限のものですけど、全て見るよなるとかなり疲れます。それに見るに耐えないものですか」




ルイは笑顔で言うがどこか重みのある言葉だった。何故だろうと気になったアリスは少し考え込む。




アリス「ルイ君、一つ質問です。その記憶はルイ君にとってはどの様な記憶なのですか?」


ルイ「どの様な、ですか。それは少し答えづらいですね。敢えて言うなら【僕の始まりの記憶】ですかね」


アリス「そうですか。それではルイ君の記憶を見せて下さい」


ルイ「分かりました。このルーンを使うと終わるまで記憶を止める事は出来ないので大丈夫ですか?」


アリス「大丈夫です。いつでもやって下さい」


ルイ「それでは行きますね」




ルイは杖を使ってルーンを空中に書く。3文字書くと周りの光景が変わり始めた。

アリスは初めての体験を目に前に少しワクワクしていた。しかしアリスはこの後自分がいかに軽率な考えでルイの記憶見ようとしていたのか、思い知らされることになる。























目の真っ白に光り目を瞑った。しばらくして目を開けるとそこには闇が広がっていた。

何も見えない。しかし自分の手や足はしっかりと見えていた。




アリス「これがルイ君の記憶、視覚的に見れると聞いていたので、映像が流れると思っていたのですが……」



「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ"あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!」


アリス「!?!?!?な、一体今のは…?」


「あ”あ”あ”あ”あ”!!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」


アリス「っ!!!これは一体…誰の…」




謎の叫び声に恐怖しながらアリスは考える。しかし考えは纏まらない。

謎の叫び声は一向に止む気配がない。恐怖に足が(すく)みながら周りを見渡す。

しかし闇に包まれたままだ。その内また周りの景色が変わった。

そこに広がっていたのは地下と思われる部屋の血だらけの壁に床、そして白衣を着た複数の人間とその人間が扱っている複雑な魔法機。



そしてその部屋の中央にはベッドに何重にも縛り付けられた見るに耐えない血だらけのルイの姿があり、魔具であろう物がルイの頭を覆っていた




ルイ「あ”あ”あ”っ!!あ”っあ”あ”あ”っ……あ”あ”あ”あ”あ”…あ”あ”あ"あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!」


アリス「何なんですか、これは…一体何を…」


『被験体の脳波はどうだ?』


『まだ何も変化がない。そろそろアクションが起きてもおかしくはないと思うのだがな』


『それならもう少し魔素の注入量を増やしてはどうだ?』


『そんな事をしてこの被験体が保つとは思わんのだが』


『それに関しては問題ないだろ。他にもまだ被験体は腐るほどいる』




白衣の服の男たちが話している内容を理解なんてしたくなかった。

魔素を注入している?魔法機官を通さない方法での魔素の取り込みが一体だそれほど危険なのかわかっているのですか!?

そんな事をし続ければ確実にルイ君は死んでしまう!


ルイ「あ”あ”あ”!!!」


やめて…


ルイ「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」


お願いだから…


ルイ「あ”あ”あ”あ”あ”!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」


もうやめて!!!!これ以上はお願いだから!!!







アリス「はっ!!!はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…」


ルイ「お疲れ様です理事長。大丈夫ですか?あまり顔色が良くない様ですが」


アリス「……ルイ君、あの記憶は……」


ルイ「どうしたんですか?」


アリス「あの記憶は、本当にあった事なの…?」


ルイ「??そうですけど?」


アリス「!?」




アリスはそれ以上何も言えなかった。

あんな記憶を何もなかったかの様にしているルイの精神を疑った。

何も感じてないのか?何故そんな笑顔ができる?何故そんなにも綺麗な瞳をしている?

分からない。




ルイ「やはり、理事長には少しきつかったですか。すみません、この方法を教えるべきではありませんでした」


アリス「あの実験は一体なんですか?あんな事が一体いつから行われていたのですか?」


ルイ「あの実験は最強の魔法師を作るための実験です。無理やり魔素を体に流し込み、体内へ取り込める情報量と魔素量を増加させると言う物です。いつからかは僕にも分かりません。ですが100年前には既にこの実験は行われていた様です。この実験の被検体になるのは僕みたいな魔盲です。魔盲は必要とされませんからね、少しでも金になると分かればこれ以上いい話はないでしょう」


アリス「そんな…。ルイ君も売れたのですか?」


ルイ「いえ、僕は売られてはいません」


アリス「それでは何故なの実験に!」


ルイ「…僕の家系は代々ある魔法の継承を密に(おこな)ってきました。それは人体魔法、かつては神の魔法とされ、悪魔の魔法とされ、禁忌の魔法とされ、今ではロストマジックの一つです。そしてその人体魔法の一つが人工魔法師の作成です」


アリス「そんな…、あんんな事が100年もの間続けられてきたなんて」


ルイ「そんなに気にしないでください。確かにあの時は辛かったですけど、そのおかげで今の僕があるんです」


アリス「でも…」


ルイ「大丈夫ですから、そんな顔しないで下さい。それより用意してあるお茶を飲みましょう。そろそろお昼ですいし」





ルイがそう言うのでアリスは仕方なくこの話を一旦終わりにした。

このやり切れない気持ちを抑え、二人で昼食を始めた。自信作にはずだったのだがどれもこれも不味く感じた。

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