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いつか優しい未来  作者: 名月らん
パンドラの箱
7/20

淡い想い

夕食が終わり部屋へ帰る途中、麻衣子が青ざめて


「奈月さん、あれはないって」


と言うと実加も


「確かに、あれは私も無理かな。結さんも珍しく目が点になってたし」


ひきつりながら言った。


「おかしいなあ、うちでは隠し玉で大人気なんだよ。せっかく隠しておいた大人気のあんパンを入れたのに」


奈月は2人の意見に納得がいかず何度も首をかしげていた。


鍋に、あんパンは入れちゃいけません


ある意味天才なのではと麻衣子と実加は思った。

そんな2人の前に奈月はヌッと顔をだし


「何よ何が言いたいの、あー馬鹿にしてるんでしょう」


言い当てられた2人は必死で違う違うと誤魔化した。


「だったら明日は麻衣子さんが作ってよ、不味かったらウフフどうしようかなぁ」


と奈月がイタズラっぽく笑うので麻衣子はひきつり笑いをし


「分かりました、なんか美味しいもの作るから奈月さんも少しは手伝ってよね」


と麻衣子がそう言うと奈月は嬉しそうに


「手伝っていいの?任せなさいドンとこいよ」


と胸を叩いて言った。麻衣子はしくじったと後悔をしたが後の祭りだった。


その日の夜中、いつの間にか2人の部屋に居着いている奈月がソファーでうとうとしていると、麻衣子がポケットから細長いライトをとり出し部屋を出ていこうとした。

それに気付いた実加が


「麻衣子もう行くの?」


と声をかけると、緊張した面持ちで麻衣子が


「うん行く」


と言った。その麻衣子の言葉に実加は頷き


「わかった、奈月さん奈月さん起きて私たち今から行ってくるからあとお願いね」


実加が奈月を起こすと大きな延びをして起きた寝ぼけ眼の奈月は


「今から行くのね、分かった気を付けていってきて」


と言いまた眠りかけたので麻衣子が


「奈月さん寝るならベッドで寝てね」


と言うとパッと飛び起きた奈月が


「了解です」


と言いながらベッドに潜り込んだ。


本当に面白い人

じゃあ行ってきます


麻衣子と実加はそっと扉を開けあたりを見回し薄暗い廊下に消えていった。

2人が出ていくと奈月は深々と布団に潜り込んだ。


薄暗い廊下に麻衣子と実加の影がのびる。

そんな2人から少し離れた所にもうひとつの影が見え隠れしていた。

その影はただ静かに2人の後をついて行った。

しばらくして麻衣子が実加に声をかけたが返事がない。麻衣子は実加の姿が無いことにやっと気が付いた。


「え!?実加どこ」


麻衣子は小声で実加を呼んだが返事がない。麻衣子はひきつりながら


嘘でしょ、なんなのよ実加ったら


「ちゃんと付いてこないなんて困った美加だよ、どうするのよ私一人で」


と呟いた。その時


クスッ


誰かの小さな笑い声がした。


「だれ!?」


麻衣子は辺りを見回したが薄暗い廊下には人の気配すらない。


気のせい…だよね


麻衣子は気をまぎらわす為にブツブツと独り言を話し出した。


「だいたい方向音痴の私を一人にするってのが可笑しいのよ。いつも私にちゃんとついて来ないとダメでしょって言うくせにさ…

肝心な時にいないってどう言う事?ワザと?ワザとか、なるほどワザとなのね

でも…もしかしたら何処かで倒れてたりしないわよね?いやいや実加にかぎってそれはないわ

それかお腹壊してトイレにこもってるとか、いやいやそれもないわ

だって牛乳でお腹ゴロゴロするのって私だし」


クスクス


また誰かの笑い声がする。気味が悪くなった麻衣子は


「誰かいるの?」


と言い辺りを見回すが誰もいない。ゴクッと息を飲んだあと


「大丈夫大丈夫怖くない怖くない、私は美味しくない私は美味しくないんだからね」


と言い麻衣子は走り出した。


「待って」


「いやぁ~待たない」


完全にパニックに陥った麻衣子は目をつぶり走り続けていた。

突然ガクッと麻衣子の片足が宙に浮いた。落ちると思った瞬間、麻衣子は誰かに腕を捕まれた。


「だから、そこは階段だ」


えっ


そしてドンッと誰かの胸の中に抱きとめられた。淡い艶やかな香りが麻衣子のそばで薫る。


うわっ何これ何これ


「だから待てって言ったのに」


何が起こったのか分からずパニックになっている麻衣子に


「ほらライトを当てて下を見てごらん」


と声に促されてライトを当てると下には真っ暗な階段が奈落の底のように口を開けている。


「あーこれは頭から落ちたら死ぬよね絶対に危ないよね」


「だろ」


その声に顔をあげると、うっすら差し込む月明かりに白く滑らかな首筋と栗色の髪が映えて艶めいていた。


きっきれい…いやそれよりこの人誰?


戸惑う麻衣子に


「どうした」


と優しい声がかかる。麻衣子は広いその胸に抱き抱えられていることに気付き真っ赤になりながら


「ありがとう、もう大丈夫だから」


体を離そうとしたが思わずギュッと引き寄せられた。

はじめてのことで戸惑い身動きができず、何も考えられなくなっている麻衣子の耳元で


「怖くても慌てて走らないこと暗いと危ないよ、それと良い子だからしばらくここを動かないで良いね」


と言いふっと腕をはなし


「あと独り言は他のひとの前では少なめに、俺は楽しかったけどね」


と言い暗闇に消えていった。

はじめて男性に抱き締められ耳元で囁かれたことで気を失いそうになっていた麻衣子だが、静まりかえった廊下に身震いをして我にかえった。


だから今のは何?何が起こったの


麻衣子は消えていった方をライトを当てて探したが薄暗い廊下にはもう誰の姿も見えなかった。


その頃実加は


はぐれるなんてなんてことなの…

何があっても守るって決めてたのに

お願い麻衣子どうか無事でいて


必死で麻衣子を探していた。そんな実加の前に青白い人影が現れた。


あれはまさか


実加が思っていると人影は奥へとゆっくり進みだした。


まっ待って


美加がかけよりその腕をつかんだ瞬間フワッと淡い艶やかな香りがした。そんな美加の手からスルリと抜け出しいつの間にか奥に。美加はその動きに


あなたがそうなの?


と何かを確認するかのように見つめた。そして実加は誘われるようにその影の後をついて薄暗い廊下を進んでいった。

どれくらい歩いたのか、いつの間にか人影は消え前の方に小さな明かりが見えた。それをライトで照らすと麻衣子が一筋の光に照らし出された。


麻衣子


実加はホッとして麻衣子に駆け寄った。


「実加、何やってたの探したんだよ、ダメだよはぐれちゃわかってる」


と言う麻衣子の言葉に実加は唖然としたあと笑いだした。


「何?」

「ううん、いつもの麻衣子だ」


迷子は自分の方なのに麻衣子ったら相変わらず…


実加は優しく麻衣子に微笑みかけ


「分かった分かった今度からは麻衣子を見失わないようにするから」

「当たり前でしょ頼んだわよ」


そう言いながら震えている麻衣子の肩を実加は優しくつつみ


「そうだよね暗いの本当は苦手だもんね、ごめんもう大丈夫だよ」


と抱き締めるとビクッと麻衣子は体をこわばらせた


「麻衣子?」


麻衣子はあっと気付き大丈夫と実加に言ったが、実加は麻衣子から香る匂いに気が付いていた。


この香り…麻衣子はあの人に直接会ったのね

でもどうしたらいい?このままだと結さんに気付かれてしまう


実加は麻衣子の移り香り消すために首の後ろに手当てて力を込めた。

麻衣子は首の後ろが暖かくなるのを感じたが、それが美加が亡くなった父から教わった力の使い方の1つだとは気付くはずもなく


「まあ、心配かけたことだし今日はもう部屋に帰ろう」


と言いそして実加の手をぎゅっと握りしめた。


「分かった」


美加はフッと笑いまだ小刻みに震えている麻衣子のその手をそっと握り返した。

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