希望へ続く道
全ての終息まであと少し
広人はそれが村で会った青年だと気付いた。
確か村で…
広人の視線に青年が気づき驚いて
「あんた達がここにいるってことはもう終わったのか」
と言った。その青年に奈月が
「もしかしてはじめてこの村に来たときに声をかけて来た…たしかもう一人いたはず」
考え込む奈月に実加が
「ひかる…そう言ってたわよね」
と言うと奈月は思い出し
「そうそう光だよ、彼は?何処なの」
と聞くと青年が苦々しいかおをして
「光は…あいつはこの村の闇にのみ込まれたんだ」
と言った。広人もその名前に覚えがあった。
光…もしかしてあのブログ…
「その光ってヤツはブログをやっていなかったか」
と聞くと何故それをと青年は驚いた。
「彼のだったのか、闇に飲み込まれたっていったいどういう…」
皆はそれが死を意味していると気が付いた。
青年は悔しそうに
「光は村の掟をやぶりこの村から出て、今までやって来た事の全てを告発しようとしてバレて殺されたんだ」
と言った。そんな青年に黒沢が
「未来がみえ操ることができる2人を利用して裏から日本を支配し利益を得る。
その為には人殺しも当たり前、それだけではなく世界中の紛争も操っていたという事実をですね」
と言った。青年は驚いたあと頷き
「光は許せなかった。
笑いながら他人を踏みにじり死に追いやるやり方が許せなかったんだ。
はじめは城の2人が仕組んだと思っていた…村の皆を洗脳してやらせているんだと思っていた…でも違ったんだ」
広人がその目に怒りを宿して
「2人の方が力のせいで権力の欲しい村人達に利用されていたんだな」
と言うと青年は
「ああそうだ…でもやつらがこの村に来なければこんな事にはならなかったんだ。
貧しくても平和に寄り添いながら生きていられたはずなんだ。
皆が悪に堕ちた原因はやっぱりやつらだ…
なんでなんでこうなっちまったんだよ」
と言い拳を握りしめる青年に実加が
「あなたの言う通りこの村に来なければ平和だったのかもしれない。
でも同じことが他で起こっていたかもしれない。
何処に行っても同じ誘惑に負ける…それが人間なんだから」
実加の言葉に
何処にいても同じ
と青年はめを見開いて実加を見た。そんな彼に広人が
「彼らを止めようとしたのか?その光って人を助けようとしたのか?」
と聞くと青年はドキッとしてうつむいた。そんな彼に黙って聞いていた奈月が
「ただ見ていただけなんでしょ、一度でも本気で助けようと彼を救おうとしたの?」
と言うと青年はますますうずくまった。
「何もしなかったのね、それって結局は村の人と同じじゃない」
と怒りに震えて言う奈月を麻衣子は抱き締めた。その言葉に青年は青ざめ
「怖かったんだ…あんな事をしたら殺されるのが分かっていた。
だから何度も光に止めろって言ったんだ」
その彼に麻衣子が
「その人は本当は一緒に戦ってほしかったんだと思う。きっと一緒に戦ってくれると信じて待ってたんだと思う。
でもあなたは死にたくなかった。
だから自分が生き残る事を選んだと言うことね。
でも私もあなたと同じ立場だったら同じ選択をしたかも知れない。
だって私も弱い人間だから」
青年は目を見開き麻衣子を見た。
俺は…俺は
広人は青年に
「その光って人に一緒にこの村を出ようとかって誘われたりしなかったのか?
もし誘われていて2人でこの村を出ていたら今はどこかで幸せに暮らしていたかもしれないのに」
広人の言葉に青年は光の言葉を思い出した。
なあ一緒にこの村を出ないか?
ここにいちゃダメなんだ。
大丈夫だ俺達ならどこでだって生きていけるさ。
青年は震え出した。
「俺は…俺は…結局やつらと同じだ、この村に染まり化け物と言いながら2人を利用し友人を死に追いやった。
もっと早くこの村を出ていたら…もっと早く」
広人は青年の前にしゃがみ肩に手をおいて
「まだ遅くない今からココから始めるんだ。
二度とこんな事が起こらないようにあんたが頑張るんだ」
青年は顔を上げて広人のを見た。
「誰だって完璧じゃない間違える事は当たり前だ。でも生きてる俺達は生きてる。
俺達が諦めたらそこで全てが終わってしまう。
だから苦しくても醜くても、もがきながら必死で生きて行くしかないんだ。
彼の死を…今まで犠牲なった人達の死を絶対に無駄にしないために忘れちゃいけない」
広人のその言葉に青年は深く頷き
「俺は生きる最後まで生きぬいてここであった事を語り継いでいく。
現実離れしているから何処まで信じてもらえるかは分からない…でも必ず語り継ぐそれが俺の償いだ」
そう言う青年に落ち着きを取り戻していた奈月が
「そんなの心配しなくていい、だって目撃者の私たちがいるから全て事実だから。
だから約束よ必ず生きてここで有ったことを伝えるのよ。
私もここであった事を忘れないんだから分かったわね」
と言った。青年はフッと微笑み立ち上がりみんなを見て
「ありがとう俺を忘れないでくれ、いつかもう一度会う時まで」
と言った。そんな青年に黒沢が
「逢えますよいつか必ず、それまで生きてください」
と言った。青年は深々と頭を下げ去っていった。
そんな青年の後ろ姿を見送っていた広人が
「名前を聞くのを忘れた」
と言うと麻衣子が
「次に会う時の楽しみにとっておくのもいいんじゃないかな」
と言い実加を見た。そこには虚ろな目で立ち尽くす実加がいた。
「実加…もしかしてあの人に言いながら本当は自分の事を責めてたんじゃないの?何もしなかったのは自分だって」
麻衣子に言い当てられて実加は
「…そう私がいちばん卑怯者なの」
と言った。そんな実加に黒沢が
「それを言うなら私も同じです結局は逃げたのですから。
だからこそ生きていかなくてはいけない。
これからの貴女に全てがかかっているのですお分かりですね」
と言い優しく微笑んだ。そして広人が
「大丈夫、俺達はまだまだ始まったばかりなんだから」
と言った。
そこに白山達がやって来た。そして麻衣子達を苦々しく見て
「なんでお前たちが生きてここにいるんだ」
驚き言った白山に野々村が
「すぐに城の中を見に行ってこさせましょう」
と言い3人の村人に
「お前達、今すぐ城を見に行ってこい」
と言うと3人の村人は急いで城へ向かった。白山は黒沢を睨み付け
「お前やってくれたな。何てことだあの力がどれほどの物か分かっているはずだろうが」
そう言う白山に黒沢は
「ええ分かっております。
あなた達があの力を利用して今迄どれだけ卑怯な事や、卑劣な事をしてきたのかも全て知っております」
白山は舌打ちをして
「分かっていながらなぜこいつらを逃がすのだ、2人の力を長らえさせる為のエサだったのだぞ」
エサ…
と麻衣子が呟くと白山が
「あの求人は吸血鬼である2人の為のエサを集めるために村ぐるみでやっていたのだ」
と言った。麻衣子はたまらず白山に
「エサって…人の命をなんだと思ってるの。
2人をあんな風にしたのは、こんなふうに終わるしかなかったのは全部あなた達のせいよ。
自分達の欲望の為にずっと2人を利用してきたんだから」
白山はそんな麻衣子に
「それがどうした、やつらは化け物なのだ
そんなやつらをワザワザ村に住まわせてやって結婚相手まであてがいここまで存在を隠してやった。
そのうえ餌まで用意してやったのに感謝されはしても恨まれる筋合いなどない」
すると実加が
「そうですね、あなた達の協力がなければこの村に住む事はなかった。
そして宿命に縛られて生きる事もなかったはずですから」
そう言い白山達を睨み付けた。そんな実加の言葉に続けて黒沢が
「ヴァルカスキー家は自国でも力を利用され化け物と蔑まれ続けてきました。
海を渡りこの国に辿り着いたが行く宛など無い…
そんな自分達を快く受け入れてくれた村の皆さんに少しでも恩返をしたいという思いで未来を操る力を提供してきたのです。
でもあなた方は裏切り、いつの間にか全てを手にいれようとした。
それが過ちの始まりだと気付かずに」
すると野々宮が
「あまりの言いようですね、あなたもそのお陰で生きてこられたはずでしょう何を今さら」
と言った。すると黒沢は
「そうですね、その通りです。だからこそ私はもう二度と過ちを繰り返しません」
と言い野々宮を真っ直ぐ見た。その目に怯んだ野々宮に白山が
「どれだけ話しても平行線のままだ、さっさとこの村から出るぞ。
やつらには力も残っていまい、ここに住む必要はなくなった行くぞ」
と言い村人と共に歩き出した。
「はい」
と言い野々宮は黒沢を睨み付けた。そして白山の後について歩き出した。そんな村人達に広人が
「あんた達がやった事はどんな理由があれ許される事じゃない。
今は地位も名誉もお金も人脈さえもあるんだろうな。
でも2人を失った事の大きさは分かっているはずだ。
こんな事があっても悔い改める気のないあんた達が、これからどうやって生きていくのか俺は…
いや俺達はずっと見続けてやる」
と言った。
白山達は広人を睨み付け去っていった。
そんな村人たちを見ながら麻衣子が
「2人は最後まで人間だった…悪魔はあの人達の方よ、あんな人達のために」
そう言い肩をおとす麻衣子に奈月が
「またみんなでここに来よう2人に会いに来よう。今度は笑って会いに来たよ~って色々話に来たよ~って言って。
だって、せめて私たちくらいは人としての2人を忘れないようにしたいじゃない」
とボロボロと涙をこぼして言った。そんな奈月の言葉に麻衣子は
「そうだね、うん…2人に会いに来よう絶対に約束する」
と言った。実加も
「うん必ず会いに来る」
と言うと広人も
「ああ、必ずみんなで来よう」
と言ったあと黒沢を見て
「黒沢さんあなたもですよ、あなたも一緒にここに2人に会いに来てください」
広人の言葉に黒沢は
「私も…わかりました必ず」
と答えた。
5人は降りしきる雪の中、真っ白に染まる館を振り返りつつ森から去っていった。





