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男が落ちてきた  作者: 佐藤トシオ
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第一話

初投稿です。

俺の名前はジョニー。佐藤トシオともいう。

俺が住んでいるこの世界「パラドクシア」は、君らが住んでいる世界とは別の世界、異世界ってやつだ。

例の如く、剣と魔法の世界だし、魔界からやって来た魔王率いるモンスター軍団も蔓延ってやがる。ちくしょう。

俺も元は君らと同じ世界に住んでいた。でも、高校時代にいじめられ、それ以来引きこもりをやっていた。ああ、ニートってやつさ。

ある日、夜中に散歩していたらトラックに轢かれ、気付いたらこっちの世界で赤ん坊になっていた。そう、俺は異世界転生したんだ。

前世の記憶があった俺は今度こそ真面目に生きようと決意した。勉学に励み、魔法を覚え、労働をして生活費を稼いだ。


……なのに、俺は最悪なことに、勇者に選ばれちまった。勇者ってのは、魔王を倒すために駆り出される国家公務員で、勇者の血を引くものだけがなれる役職だ。

確かに、給料はいい。でも、常に死と隣り合わせだ。一応、伝説の剣、伝説の鎧、伝説の盾があるからどんな敵にもダメージを与えられるし、どんな攻撃も防げる。

でも、俺は元農民、もっと前は元ニートだ。訓練なんか受けていないし、武器を扱うには技術とセンスが要る。俺にはどっちもない。

王様はそんな俺に、お供をつけてくれた。


女戦士ユキ(20)


彼女はボンッキュッボンのナイスバディで美人…なのはとりあえず置いといて、確かに、俺よりは場慣れしてるし、強い。

でも、所詮は20歳の若者(俺と同い年)だ。俺より少し強い程度である。


そして、俺は今、大ピンチに陥っている。

目の前にいる狼男のパンチを食らったユキがダウンし、当の俺は腰が抜けている。ちくしょう。

狼男は無力な俺を見下ろし舌なめずりしている。

「勇者と聞いて期待したが、大したことないな。俺の牙の餌食になるがいい!」

その時だった。



ひゅぅぅぅ~


グシャッ


『何か』が空から落ちてきて、落下エネルギーで狼男を押し潰した。


「え?」


「ファッ?」


「うーん…いってぇ~なぁ…ちくしょう!」


『何か』は男だった。

青い作業服を着た、筋肉質な男だ。腕捲りをしている。

茶色い短髪に、薄い口ひげ。なんかワイルドな感じだ(※個人的な感想です)。

そして、何より、

「うわ、イケメンじゃん!」

イケメンだった。しかも、ワイルドなイケメンだ。

ユキの目の輝きが俺に対するものと明らかに違うからちくしょう。

そのワイルドなイケメンはよろよろと起き上がると、自分の下敷きになって死んだ狼男を見て一言。


「うわ、グロいな…。」


次にこちらを向くと


「俺の名前は岩田健太!『ケンちゃん』もしくは『ケン』と呼んでくれ!年齢は16だ!よろしくな!」


と、ハイテンションで自己紹介した。


ユキ「16なの!?」


呆然とする俺をよそに、ユキか健太に質問する。っていうか、最初の質問がそれかよ!


ケン「ああ、16だ!」

ユキ「ホントに16?」


ユキは健太をまじまじと見つめる。


ユキ「うん…確かにその肌や髪は10代特有のもの…ヒゲ剃ったら?」

ケン「いや、これはトレードマークだから…」


何このやりとり。


ユキ「じゃ、高校生なの?」

ケン「いや、フリーター。高校はクビになっちまった。まぁ、あんだけ悪戯すりゃぁ退学になるよなぁ…」


こいつ、DQNだ!DQNの陽キャだ!

俺をいじめたアイツと似た雰囲気だ…。


ユキ「あなた、空から落ちてきたけど、天上人?」

ケン「いや、違うよ。俺は田舎街の火徒運市からきたんだ。」

ユキ「カトゥン?聞いたことないけど?」

ケン「まァ、田舎だしな。」


そういう問題か?というか、そんな街ホントに聞いたこと無いぞ?コイツ、何者なんだ…?


ケン「それで、ここは?」

ユキ「ここは『王国』だけど?」

ケン「王国?何王国?」

ユキ「王国は王国よ。A県A村。」

ケン「超覚えやすい!」

ユキ「ねぇ、ジョ…トシオ、この人記憶喪失かな?何も知らないっぽいけど。」


突然こっちに振るなよ。


トシオ「さあ、そうなんじゃないの?」


適当ならぬテキトーに返答した。


ケン「いやいや、そんなんじゃないさ。俺は本当に、何も知らないんだ。」

ユキ「そんな事ってあるの?」

ケン「田舎に住んでる奴は大体そんなもんだよ」

ユキ「そうかぁ…」


納得しやがったちくしょう。


ケン「それで、お二人さんはアベックかい?ずいぶんとゴツい格好してるけど?」

ユキ「いやいやいやいや!そんなんじゃ無いから!」


そんな全力で否定すんなや。


トシオ「俺たちは勇者だよ。例の如く、魔王を倒すために旅してるんだ。」

ケン「へぇ、ゆうしゃ…ゆうしゃ?まおう?…って…なんだ?」

ユキ「どんなド田舎に住んでるの?」

トシオ「勇者ってのは魔王を倒す使命を与えられた国家公務員で、魔王はあんたの下敷きになって死んだソイツらのボス。」

ケン「そうか…魔王…」


ケンは神妙な顔をして黙ってしまった。


トシオ「それじゃ、俺達はもう行くから…」

俺は面倒なことになる前に、そそくさと去ろうとした


「待ってくれ!」


ちくしょう。呼び止められた!


「頼む、俺に同行させてくれ!お願いだ!」


さっきの雰囲気とは一転し、真剣な表情で頼み込んできた。


「な、なんで…?命の危険もあるし、誰もやりたがらないけど?」

DQNで陽キャでワイルドなイケメンがパーティーに加入などという最悪な事態は避けたかった。せっかく異世界転生したのだから、俺だってハーレムパーティーを作りたい。男は不要だ。


「まあ、いいじゃん!入れてあげなよ!こんなに真剣に頼んでるしさ!」


ユキ、ちょっとだまってろ。


「なあ、頼むよ…この通りだ!」


なんと、ワイルドな陽キャDQNイケメンは土下座した。この俺に!

ユキは怒りの形相でこちらを見ている。『イケメンがここまで頼んでるのに無下にするのか』という無言の圧力を感じる。


「ちくしょう!わかったよ!わかった!」

「マジか!超 うれしいぜ!」

「ケンちゃん!よかったね!」


こうして、空から落ちてきたやべぇやつとの旅が始まった。

始まっちまったよちくしょう。


やったぜ。

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