決意
──『決意』────
────それから家中を探したが、もう1人のエリリアーナは見つかることは無く、血溜まりだけが色濃く残った。
エリリアーナに、5年間何してたのかを聞くと、彼女は俺のためにお金を稼いできてくれたらしい。
なんの連絡も無く、置き手紙すら無かったのは、忘れていたとのこと。
いや、忘れていたっておかしいだろう。
というか行く前に話せよ。
…稼いできてくれた金額は500万円と馬鹿にならない程のお金だったっていうのもあるが、なによりエリリアーナが戻ってきてくれた嬉しさが先行してしまい、疑念や怒りは吹き飛んでいった。
臓器への損傷が大きく、手術費と入院費でまあまあのお金は吹き飛んでいった。
なんか申し訳ない気持ちになってしまった。
表面的な損傷も多いので、起きた事を信じてもらいやすくなったかと思ったものの、あんな事をエリリアーナに話すわけにもいかないので、とりあえず階段からころげ落ちたと言っておいた。
とはいえ、明らかに俺一人の量では無い大量の血と、散らばり壊れた家具や壁は誤魔化しようがない。
起きた事をそのままに話す。
「んん?んー……ん~??」
「ま、そりゃわかんないわな、俺もわからんもん」
怪訝そうな顔をするエリリアーナ。
「えっと……、お兄さん、大丈夫?」
「もうダメかもしれない」
「そんな!諦めないでっ!まだいけるよ!!」
「うるせぇ!お前のせいだ!!」
口調は荒いが顔は笑っているのでただのツッコミだ。
だが、エリリアーナはみるみるうちにシュンとなり、目をうるうるさせはじめるではないか。
「え、あ、いや、ご、ごめ、ごめんなさい!!!!!!!」
凄い馬鹿みたいに慌てて謝る俺氏。
その様子を見てエリリアーナ。
「……ぷっ」
「へ?」
「ふふふ!あはははっ!お兄さんって馬鹿みたい!なにその反応っ!!」
こ、こいつ……謀ったな…………。
「ふふっ……、それにしても変な話だね、私が狂ったように暴れ回って最後に自殺してただなんて」
「そうだな、不可解だし理不尽だ」
「……、不可解……か、……実はちょっと思い当たったんだけどね」
「え……?」
「【この時代に来たのが2週目以降の私】……だったとか」
……!!…なるほど、それならエリリアーナが2人いたのもなんとなく説明がつく。
「なるほどな。もしそうだとして…なんであんなに辛そうだったんだろう。あんな……どれだけ酷い拷問を受けてもあんなに狂いはしないだろうってくらいの………」
「そ、そんなに酷かったの?」
「……あぁ」
「なんで………」
……エリリアーナ………、理由も分からないし、状況把握もあやふやだけど、
1つだけ自分の中で確信して言えることがあった。
「そんな辛い目、俺がさせない。
未来なんて知ってたら変えられるって相場で決まってるもんだろ?
……お前の事は俺が守ってやる」
後で思うと、なかなかに凄いセリフを言ったもんだと思う。
「お兄さん……!」
「だから安心しろ、エリリアーナ、今まで通り楽しく暮らそうぜ!あ、あと遠出する時は心配するから連絡しろよっ!!」
「うん……、ありがとう!お兄さん!!」
そこで、ふと思った。
「……エリリアーナって毎回呼ぶの長いな、“エリー”って呼んでもいいか?」
彼女はみるみるうちに笑顔をぱあっと咲かせていく。
「うんっ!!えへへ、愛称ってもらったの初めて!」
喜んでいるみたいでよかった。
…不安な事や怖い事はたくさんある。
けど、これからもエリーと幸せに暮らしていこう。
俺は心からそう思った。






