世界の終わり
──世界の終わり──
────「うん……?」
頭がぼんやりしてる。
また今日も仕事か、出勤の用意をしないと……
時刻を確認するため時計を見る。
「……え」
背筋が凍りつく、時刻は既に朝10時を回っていた。
「お、終わった…………やっちまったぁ………」
明日会社でしこたま怒られるんだろうな。
というか無断欠勤だしクビになるかもしれない。
いっそ、その方が解放されて気が楽かもしれない。
ん…………なにかを忘れているような気がする。
「あ、お兄さん、起きた?」
「ふぁ………………」
そこには純白のワンピースを纏ったあの少女がいた。
「き、君は…………」
「お兄さん…………凄いビビりだね……」
「ぅ…………し、仕方ないだろ、幽霊か何かかと思わない方がおかしい!」
「ふふ……それもそうだね。それに、ちょっと合ってる」
「へ……?」
「私は3100年に火星で作られたロボット」
そう言って少女はベッドにポスンと座った。
「私、人間じゃないの」
青眼の瞳は私をしっかりと見据えていて、その中には悲しそうな感情が見えていた。
「つまり、なんだ、君はタイムトラベルでもしてきたと言うのか?」
「そうだよ」
「ロボットなのに感情が……あるのか?」
「うん、だって私もともと人間なんだもん」
「なるほど…………」
俺は小説やアニメなどを見ていたおかげか割とすんなりと状況を飲み込めていた。
だけど、1つだけ分からないことがあった。
「それで、君はなんでここに、この時代に来たんだ?」
「…………世界は8100年に終わりを迎えるの。だからロボットになった私達はそれぞれに、過去にタイムリープしながら生きている」
「なるほどね、ちなみに今は何周目なんだい?」
「まだ……私は1回目……でも、他のみんなはなんでかどんどん機体数が減っていってる……私より先に行った機体はみんな……」
「……?どういうことだ、ロボットだってからには強いんだろ?俺以外の人間からは見えないし触れられないようにすら出来るんだから」
「違うの…………まず、お兄さんがおかしいの……普通の人なら認識出来ないはずなのに……」
「な………………」
そういう事か、よく考えればそうだ。
彼女が俺に認識させる必要なんて全くないんだ。
いや、本当にそうか?
本当にそうなのか?
何か忘れてしまってはいないか…………思い出せ…………
そ、そういえば最初からおかしいんじゃないか。
なんで彼女は血だらけで俺に助けを求めていたんだ。
「3100年で……何が起きたんだ?」
「太陽フレア、太陽が爆発したんだってさ………」
「なぜ、血だらけで倒れていた?」
「………………分からない…なにも覚えてないの……気がついたら血だらけになってて……大きな痛覚は遮断されてるはずなのに全身痛くて………………うぅ……思い出そうとすると頭が…………」
「分かった、もう思い出そうとしなくていい、それに君に敵意があったなら俺は既に死んでいるはずだ。もうこれで過去の話は終わり!これからの事を話そうか」
「……お兄さんって…ビビりだけどかっこいいね…………」
「て、照れるな……ビビりは余計だけど……。君はこれからどうするんだ?俺なんかのところにいても仕方ないだろう」
「そのことなんだけど…………お兄さんさえ良ければ…………ずっとここにいていい?」
そう言って上目遣いで俺にお願いする彼女は、人間味を感じすぎるほどに人間らしかった。
「それはだめだ、俺だって男だ。こんな可愛い子に近くにいられたらいつ爆発するか分かったもんじゃない……」
「いいよ?私はロボットだから、妊娠もしないようにできる。快楽は感じるから私としてもウェルカムだよ」
え、
「え、え、え!?で、でもさ……やっぱりちょっとそういうのは…………大事な人と………………」
「あははっ……どっちなのよ!…………ふふっ…………やっぱりビビりだね、お兄さん」
「う、うるせぇビッチ!!」
「あー!そんな事言っちゃう?私だってロボットとはいえ感情はあるんだよ!?」
「あ、いや……ごめん…」
「許さないもん、お兄さんを許せるまでずっとここにいる!」
「な、なにっ!?…不幸だぁ…………」
なんでこんなことになったのだろうか。
なぜか彼女と一緒に生活することになってしまった。
でも、久しぶりだな…………人とこんなに話せたのは………………。
久しぶりだな、こんなに人に笑ってもらえたのは。
いや、正確にはちょっと人じゃないんだけど…………それでも、楽しかった。
ワクワクしていた。
これから何が起きるのか。
こんな漫画やアニメのようなフィクションじみたファンタジーな出会いなんだぜ?
俺は、不幸だと言いながらも、幸運だと思っていた。
もちろん、仕事の事など頭から完全に抜けていた。
貯め書きしていた分を消費しきったら、ちょっとずつ投稿していくつもりです。