第一話 この時の僕は思いもしなか(ry
「ーさん。鳴海 チセさん。起きてください」
「う、うーん・・・?」
僕が目を覚ますと、そこらには林や草原が広がっていた。爽やかなそよ風に吹かれ、草木がなびいている。たが、それよりも気になるのは頭に感じる冷たくも柔らかい感触と僕の頭上。
そこに巨乳の美女がいた。
「あなたは・・・?」
「私はネアル。あなた達が天使と呼ぶ存在です」
ネアルと名乗るその美女、年は見た感じだと僕より少し年上だろうか、三つ編みにした金色の長髪に宝石の様に蒼い瞳。さらに、ゆったりとした真っ白の服装も相まってさながら天使のようだった。
・・・おかしい。
たしか僕はさっきまで河川敷でジョギング(走り始めたのは10時)をしていたはずだ。それなのに辺りに広がっているのは奥の方を見ても一切手入れのされていない林と日本ではめったに見られないような広大な大地。
それに気温だってさっきと全然違う。今日は確か8月1日、夏真っ盛りだ。しかし、ここではどうだろう。いくら木陰にいるとはいえ、春並の暖かさだ。
そして天使を自称するこの美女。だとすれば、ここから考えられる答えは一つ。
「そうか、夢か」
きっと走っている内に疲れてその辺の公園のベンチで寝てしまったのだろう。もう12時になっているだろうし、そろそろ起きないとー。
「違います、現実です。紛れもなくリアルです」
・・・え?
「や、やだな〜。だったら証拠見せてくださいよ証拠を」
「そうですか・・・。では失礼します」
そう言うと彼女は、目を瞑りながら起き上がった僕に顔を近づける。
え、何?ま、待って!これは・・・まさかー。
「ってああああああー!!!」
もしかしたらとちょっと期待した次の瞬間。鮮明な記憶が流れ込んできた。今年こそは7月中に夏休みの宿題を終わらせようと、ゲームや漫画という欲望にも耐えて、月末に見事その目標を達成。翌日の8月1日、ずっと家に引きこもっていたため、運動不足になってはいけないと思い、 中学時代に買ってもらったスポーツスウェットがまだ着れたので、それを着て近くの河川敷を走っていたのだ。
しかし30分した辺りから、急に日差しが強くなり汗も大量に出始め、このままではマズいと思った所近くに自販機があることを思い出しそこへ向かおうとしたところ、めまいに襲われ、その場に倒れてしまい、今に至る。
「鳴海 チセさんあなたはー」
これにつながる説が一つだけある。でもそれはあまりにも非現実的。しかし、ネアルはその非現実的行為をいとも容易く行ってしまった。でも認めたくない。だってそれはつまりー。
「あなたは・・・死んだのです」
ネアルは無情にも平然とそれを伝えた。一方で僕の脳内は混乱で満ちた。自身が死んだという悲しみ、それへの現実逃避。他にもいろんな過去の思い出が入り混じる。
「うっぷ・・・がはがはっ!」
あまりの事態に気持ち悪さを覚え、僕はその場で数十分吐き続けたのだった。