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紅い月  作者: 式部雪花々
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「望くんっ。」




「あ、美月ちゃん。」


二週間後、大学の構内にある図書館で


俺が課題の調べ物をしていると美月ちゃんに会った。




「ここ、いい?」




「うん。」


美月ちゃんも図書館で勉強なのか俺の向かい側の席に


荷物を置くとなにやら本を探しに行った。


そして数冊の本を抱えて戻ってきた。




全部天文学の本・・・


そっか、美月ちゃんは天文学部だっけ。




彼女とは二週間前、一緒に昼メシを食ってから仲良くなった。


“望くん”、“美月ちゃん”と呼び合えるようになった今は


構内ですれ違ったりする時も前みたいに


ただ見つめるだけじゃなくなった。


お互い笑って手を振ったりしている。


彼女の持つ雰囲気がそうさせているのか


こうして図書館で一緒に勉強するのも


なんだか自然な事になってきた。




つい二週間前に仲良くなったばかりなのにな・・・。




美月ちゃんは俺の周りにいる女の子達とはちょっと違う。


なんていうか・・・太陽と言うほど明るくはないけれど


月のような感じ。


ちょうど美月ちゃんの名前と同じ、美しい満月・・・。


美月ちゃんと出会った時に見た、あの紅い月のようだ。




「ん?・・・何?」


不意に美月ちゃんが顔をあげた。


俺が思わずじっと見惚れていたから


視線を感じたらしい。




「え?・・・あぁ、いや・・・なんでも・・・」




「?」


慌てて視線を外すと美月ちゃんは小首を傾げた。






「美月ちゃん、明後日って空いてる?」


図書館を一緒に出た後、俺は明後日の7月7日に行われる『七夕祭』に


誘おうと美月ちゃんに予定を聞いた。




「うん、空いてるよ?」




「じゃあさ、『七夕祭』一緒に行かない?」




「うんっ!私も望くんと一緒に行きたいと思ってたの!」


彼女は嬉しそうに返事をしてくれた。




やった・・・っ!




俺は心の中で叫んだ。




ちなみに『七夕祭』とは、毎年大学内で行われる


もう一つの学園祭みたいなモノ。




学園祭は学園祭で秋にあるけれど、


大きく違うのは一日だけのお祭りで、


『七夕祭』が行われる二週間前から構内の数箇所に


設けられた笹に願い事を書いた短冊を吊るし、


それを『七夕祭』の夜、キャンプファイアみたいに


みんなで囲んで燃やす事。




「望くんはもう短冊書いた?」




「うん、書いたよ。」


先日、サークルの連中と一緒にふざけながら書いた。


けど、俺が短冊に書いた事は真剣な願い事だったりなんかする。




「なんて書いたの?」


美月ちゃんが興味深そうに俺の顔を覗き込んだ。




「内緒。」


俺がニヤッと笑ってそう答えると「ケチー。」と


笑いながら口を尖らせた。




だって、俺が短冊に書いた願い事は美月ちゃんとの事だから。




「『七夕祭』の時に言うよ。」


俺はその『七夕祭』の夜に思い切って彼女に告白しようと思っていた。




「うん。」


まさか俺がそんな事を考えているとは思っていない美月ちゃんは


小さく笑いながら頷いた。






―――二日後。


午前中、サークルの模擬店を手伝っていた俺は


午後から美月ちゃんと合流した。




一緒にいろんな模擬店を廻って、いっぱい一緒に笑った。




楽しい時間はあっという間に過ぎて


気がつけばもう夕焼け空が広がっていた。




そして太陽が沈んで月が見え始めた頃、


たくさんの短冊が吊るされた笹が


次々と燃やされ始めた。




紅い月・・・




あの時と同じ紅い月・・・




「きれいな月だね・・・。」


笹を燃やしている炎が空に浮かんだ夕月まで燃やしているかのように


紅く染めている。


それがとてもきれいで思わずその言葉が出た。




「・・・うん・・・。」


俺の隣にいる美月ちゃんも空を見上げ、


紅い月を眺めていた。


だけど、その横顔はどこかとても哀しそうで・・・


苦しそうで・・・。




美月ちゃん・・・?




どうしてそんな哀しそうな顔をしているんだ・・・?

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