十七日目:集いし戦士たち5
騎士たちが去っていくのを見届け、美咲はホッと息を吐く。
その横でも、ディアナが胸を撫で下ろしていた。
「危ないところでした。中を改められずに済んだから良かったものの、もしあれらを見られていたらと思うと……」
ディアナは複雑そうな目で、馬車の中を見ようと扉に手をかける。
馬車の中では、魔物たちがそわそわして外の様子を窺おうとしていて、扉を開けたディアナと目が合った。
「くまー、くまくまくまくまくま。くま(面倒だなー。オレが出て全部ぶっ飛ばしちまえば早いのに。あ)」
一番前で扉の前に座っていたマク太郎が顔を挙げ、ディアナの顔をまじまじと見つめる。
「(一応臨戦態勢には入ってたけど、何事も無くて良かったわ。でも、人肉食べる機会を逃したのはもったいなかったわねぇ。美咲たちの仲間になったから、もう滅多に食べられるものじゃないのに。あ)」
同時に巣を作って普段はそこに棲むベウ子も巣から出てきていて、後部扉近くの壁に張り付いているところに扉が開き、ディアナを見た。
「バウバウバウ! バウバウバウバウ! バウ(ワシもワシも! 人肉食いてぇ! あ)」
「バウバウ、バウ バウ(最近食べてないわねぇ、そういえば。あ)」
すっかりリラックスした様子でごろごろ転がっていたゲオ男とゲオ美が転がった姿勢のまま、ディアナを見つけて硬直する。
「ぴいいいいい?(人肉って美味しいの?)」
「ぴいいいいい?(どんな味がするのかな?)」
「ぴいいいいい、ぴいいいいい(食べていい人間、いないかなぁ)」
「ぴいいいいいい、ぴいいいいいい(あんな奴ら、ぼくたちが戦えばイチコロだったのにぃ)」
一方で、ベルークギアのベル、ルーク、クギ、ギアの四兄弟姉妹は、馬車の奥で無邪気に雑談するかのように鳴いている。というか、美咲だけにはサークレットのお陰でまるっきり雑談そのものだということが伝わってくる。あと地味にバイオレンス染みている。懐いていてもやはり魔物だからだろうか。
「これは、私らも自分の馬車を持って行った方が良さそうだな」
「そうねぇ。騎士団の奴らには、売れるうちに恩を売っておきましょ」
二人で話し合ったアリシャとミリアンは、振り向いて美咲に告げた。
「一度、宿屋に戻って馬車を回収してくる。お前たちは先に行っていてくれ」
「すぐに追いつくから、心配しないでねぇ」
「あっ、はい。分かりました」
美咲が頷くと、アリシャとミリアンは早足であっという間に雑踏に消えた。素早い。
「では、私たちは門に向かいましょうか。皆、乗って。出発するわよ。美咲様も、ご乗車なさってください」
御者を務めるディアナが、馬車の固定具を外したり、騎獣であるバルガロッソの様子を確認したりと、慌しく馬車を出す準備を始める。
「手伝うぜ。こう見えても、俺も馬車の扱いには慣れてるんでな」
タティマに手伝いを申し出られたディアナは、しばらく考えて頭を下げた。
「では、お願いします」
「あんた、あの時のメイドだろ? 馴染んでるようで何よりだ」
驚いた表情を浮かべるディアナに、タティマは笑った。
「こちらへ。美咲様専用の席をご用意しております」
セザリーに案内された美咲は、何故か外の座席ではなく、馬車の中に案内された。
「……なんか、疎外感が」
納得のいかない表情で、美咲は呟く。
大切にされているのはいいのだが、こうも特別扱いされると、美咲は微妙な気分になる。
様子を見て美咲の気持ちを察したセザリーは、次の人物に中に入るよう促す。
「ではミーヤちゃんもお付けしましょう」
「やったー。お姉ちゃんと一緒」
元気よくミーヤが馬車の中に乗り込み、そのままの勢いで美咲の胸に飛び込んだ。
「ミーヤちゃん」
自然と、美咲の表情も綻んでいく。
頬を緩ませて美咲とミーヤのやり取りを眺めていたテナが、ふと振り向いて、呆気に取られて馬車を見上げているタティマ、ミシェル、ベクラム、モットレー、タゴサクの五人に告げた。
「悪いけど、男共は外で我慢してよね」
テナに話しかけられて我に返ったタティマは、慌てて頷く。
「いや、十分だ。こんなすげえ馬車に乗れるだけでもいい経験だぜ」
口を開けて未だに馬車を見上げた状態のまま、ミシェルがポツリと呟く。
「こいつはたまげた。馬車ってレベルじゃねえぞ」
好奇心で目を輝かせたベクラムとモットレーが、夢中になって馬車の外観を眺めている。
「へえ、中の他に、御者席の後ろと屋上にも席があるのか。しかも、御者席の後ろの席は十人分だって? 凄いな」
「しかも、これだけ豪華なのに、戦闘用でやんすよ! 外側は金属で出来てるでやんす!」
これだけの馬車に乗って移動できることに、ベクラムとモットレーの二人は嬉しくてたまらない様子だった。
馬車を見つめていたタゴサクが、美咲を見て感慨深い表情になる。
「しばらく見ぬ間に、ずいぶんと成長したでござるな、美咲殿」
眩しいものを見るかのようなタゴサクに、美咲は若干恥ずかしそうに、けれど嬉しそうにはにかんだ。
「……色んなことがありましたから。頑張ったんですよ、私」
「そのようでござるな。今の美咲殿を過去の美咲殿が見たら、驚くでござろうよ」
何しろタゴサクは、まだルアンが生きていた頃から美咲のことを知っている。
あの頃の美咲は、尻に卵の殻をつけた雛同然だった。戦い方もろくに知らず、無意識に誰かに頼ってばかりで、自分で道を切り開く覚悟すら無かった。その結果がルアンの死と、ルフィミアとの別離だ。
反射的に、美咲は歯を噛み締める。ようやくここまできたのだ。
タゴサクが手を伸ばし、美咲の頬に触れようとする。
「さて、私たちは外と中に別れる必要があるわけですけどぉ」
不意にイルマが口にした言葉に、美咲とミーヤ以外の女性たちの間で不穏な空気が走る。
「ちょ、何始める気!?」
今までの空気を全て吹き飛ばして美咲が慌ててイルマを振り返り、タゴサクはがっくりと膝をつく。
「なんだなんだ?」
目を丸くするタティマが、イルマを見つめた。
「空気が変わりやがったぞ。何が始まるんだ?」
ミシェルが髭面の中に埋もれた目を丸くして、表情を変えた女たちを見る。
「彼女たちの目が真剣だ。よほどのことなのか」
女同士で火花を散らしているかのような雰囲気に、ベクラムが笑みを濃くする。
「何故か手に汗握るでやんす」
ハラハラしながら、モットレーが拳を握った。
「拙者、結構美咲殿といい雰囲気だったと思うのでござるが、台無しにされたでござる」
ただ一人、タゴサクだけがタイミングを外されて項垂れている。
「中が良い人、挙手」
ペローネが挙手を募って手を上げると、次々に手が上がっていった。
「全員か。まあ、当たり前よね」
最終的にはペローネ自身を含め美咲とミーヤ以外の全員が手を上げ、ペローネはため息をつく。
「出来なくもないですけど、流石に手狭ですから、前に五人、上に四人くらいで分かれてもらえると、助かるんですけど」
「ならあたしは中かなぁ。戦闘が得意な奴が前に行った方がいいでしょ」
遠慮がちに口にした美咲の言葉に、女性陣のうち、ペローネが一番早く返答した。
他にもペローネに遅れて、何人かが反応する。
出来るだけ美咲の側に居たい。美咲の言うことを聞いて点数を稼ぎたい。二つの選択肢の間で、判断が揺れているようだ。
「ちなみに、今譲ってくれた人は、今日の野営で私と同じ班で休むことになりますよ?」
美咲がそう付け足した途端、ざわりと女性たちの間でどよめきが起こる。
今を取って後で我慢するか、今を我慢して後を取るか。どうでもいいことだが、本人たちにとっては大切なことである。
「仕方ありませんわね。わたくしは前に行って差し上げますわ」
ため息をついてイルシャーナが告げると、タゴサクを除くタティマたちが歓声を上げた。何しろイルシャーナは美人である。美人が隣に座ると言っているも同然なのだから、男たちにとっては喜ばしい選択に違いない。
もっとも、イルシャーナに限らず、美咲に従う女たちは皆見目が良く美しいので、隣に座るのが誰であろうと、彼らは等しく喜びの声を上げるだろう。
「あの時、捕まっていた女たちの一人か。こうして見るとさすがに綺麗だな」
イルシャーナの美貌を見て、タティマが口笛を吹く。
「でもきっと、すっげえ性格がキツかったりするんだぜ。見た目も性格も非の打ち所がない女なんて、中々いねえよ」
台詞とは裏腹に、ミシェルはにやにやと笑いながら言った。その目は胸と尻の隣に吸い寄せられている。直視は出来ないらしい。よく見ると顔も赤い。純情男子か。
「ああいう気位が高そうな女は、好みだね。ヒイヒイ言わせてみたいな」
逆に、ベクラムの方がミシェルよりも平静を保っている。貴公子然とした彼だけは、イルシャーナたちの容姿に負けていない。
「凄い目で睨まれてるでやんすよ」
一方で完全に負けているのがモットレーだ。公爵家子息だから家柄では勝っているが、小男かつ醜男では話にならない。せめて体格が良ければ美女と野獣程度には見えたかもしれないが、体格も貧相なのでせいぜいが美女と鼠である。
「あなた方、わたくしに不埒な真似をしたら、馬車から放り出しますから、そのおつもりで」
男たちの視線を受けたイルシャーナは、先んじて釘を刺しておく。イルシャーナはまだ彼らを信用してはいない。油断して襲われたのではたまったものではない。
「心配せずとも、拙者らは既に美咲殿と共に戦うと決めた身。そのような狼藉はしないでござる」
厳かな声音で安心させるように、タゴサクがイルシャーナに言った。
だが、イルシャーナがタゴサクの発言を聞いて目を吊り上げる。
「わたくしよりも美咲様の方が好みですの? あなた、ロリコン? ロリコンは近付かないで下さらない?」
手を出されるのは嫌だが、眼中に入れられないのも嫌らしい。イルシャーナは我がままな女だった。
「誤解された上に、酷い言われようでござる!」
いきなり変なレッテルを貼られ、タゴサクが嘆いた。
「じゃあ、ボクも前に行こうかな」
にこにこと微笑みを浮かべながら、マリスがイルシャーナの後に続いた。
歩くマリスを見て、タティマが歓声を上げた。
「おお、ボクっ娘か!」
どうやらマリスはタティマの好みにクリーンヒットしたらしい。タティマにロリコン疑惑が持ち上がった。
「あの金髪巻髪女と違って清楚そうだ! 三つ編みほどきてぇ! お父様って呼ばれてみてぇ!」
ミシェルが獲物を前にした野盗のように舌なめずりをしている。彼の願望は少々ニッチなようだ。
「ああいう子を淫らにさせるのも、燃えるよねぇ」
目を細めて薄く微笑むのは、ベクラムだ。ミシェルよりもよほど悪党っぽい。
「何だか、あの子の笑顔を見ていると体が震えるでやんすよ……あ。こっちを向いたでやんす」
モットレーだけが、危険予知に優れているのか不安げな表情をしている。
「男がそういう人種だってことは奴隷時代に十分知ってるからとやかくは言わないけど、手を出したらその股間についてるもの、ちょん切らせて貰うから。切られてもいいなら、好きにすれば?」
タゴサクはマリスを安心させようと微笑んだ。
「拙者は美咲殿一筋でござる。それに、美咲殿を守るというのなら、拙者とお主は同じ目的で動く仲間でござる。心配無用でござるよ」
マリスは安心するどころか、表情を険しくした。
「もしお姉さんに手を出したら、バラバラに切り刻んで魔物の餌にしてやる」
さすがにこれには美咲もびっくりして、思わず声を上げた。
「ちょっ、いきなり何キレてるのマリスちゃーん!」
「お、恐ろしい女子でござる!」
底冷えがするマリスの声に、タゴサクが数歩後退る。
「他に前に出たい人はいる? いないなら、私が出るけど」
ミシェーラはどちらでもいいのか、まだ声を上げていない他の女性たちの様子を窺う。
「私は中に居ますよ。非戦闘員が外にいても、いざという時邪魔でしょうし。それに、後のことより今のことです」
システリートが答え、美咲に手を向けてわきわきと動かした。動きが怪しい。
「止めてくれませんか、その手の動き。キモイんですけど」
美咲はシステリートに対して割と辛辣だ。
「ニーチェは屋上に上がるのです。ニーチェの目は外にいないと役に立てませんから」
戦闘が起きた時のことを考え、ニーチェは自分の居場所を決めた。彼女の場合、目も足も良いので、物見役にとても適している。そのニーチェが屋上に上がるのは、理屈に適っている。
「あたいはどっちでもいい。余った方に回るから他の奴らが先に決めていいぜ」
ドーラニアも特に希望はないようで、他人に選択権を譲った。
それを受け、ユトラが自分の希望を述べる。
「なら、私は前に行くわ。何かあった時にすぐ戦闘に移れるようにしておいた方がいいもの」
「本当に美人ばかりだなぁ」
女性率の高さと容姿レベルの高さに、タティマは感心を通り越して呆れた様子で一人ごちる。
「おほっ! あの美女もこっちに来るのか! おおお、緊張で指が震えてきやがった」
ミシェルが喜色を露にし、同時に自分の手を押さえた。山賊のような容貌をしているくせして、意外と繊細らしい。
「彼女も美人だ。美咲ちゃんも残念だねぇ。もし男だったら嬉しすぎるハーレム状態なのに」
ベクラムはユトラの容姿を褒めると、美咲に羨ましそうな視線を送った。
「何だか、また冷たい目で見られてるでやんす……」
ぶるりとモットレーが体を震わせる。
「違うわ。美咲が女の子だからこそ、私たちは美咲に全てを捧げたのよ。誰が男なんかに尽くすものですか」
ユトラの声には怒りが滲んでいた。
もしかしたら、ユトラにとって、奴隷として男と交わされた経験はトラウマになっているのかもしれない。そんな経験をすれば、男嫌いになるのも無理はない。
分かった風なしたり顔で、タゴサクが頷く。
「拙者も同じでござるよ。美咲殿がか弱い女子であるからこそ、力になると決めたのでござる。男子であれば、拙者の手助けなど要らぬでござろう。男子は手助けを恥と思うことも多いでござるからな」
その言葉を聞いた途端、ユトラは表情を凍りつかせた。わなわなと体を震わせると、キッとタゴサクを睨みつけた。
「男であれば助けなかったの!? これだから男は!」
「ブーメランしてますよユトラさーん!」
美咲のツッコミは冴え渡っている。
「理不尽でござるー!」
怒鳴られたタゴサクが頭を抱えた。
「私は残るわ。姉さまの警護の役目があるもの」
少し悩んだ様子を見せたラピは、結局元と同じ、自分の責務に忠実な選択をした。
ラピは人一倍自分の手で美咲を守ることに拘っているので、ある意味当然の選択結果だろう。
「レトワは残るよ! 残ってベウ蜜をもらうの!」
やはりレトワが取った選択は食べ物が絡んでいた。つまみ食いがしたいがために、中に残るのだという。
苦笑しながら、美咲はベウ子にレトワの発言を通訳した。
「ですって」
「(えっ)」
我関せずと巣の増築と幼虫の世話を娘たちに任せ、産卵に勤しんでいたベウ子がびっくりしてレトワを見た。
馬車の中の天井に新しく作られた巣は結構大きくなっていて、働きベウの数もだいぶ増えている。
「(……物々交換。他に食料を分けてくれるならいい)」
美咲は少し考え、すぐに答えた。
「肉ならこの前狩って保存したのがそのまま残ってるから、いくらでも持って行って」
「(何か入れ物を巣の近くに置いておいて。娘たちに蜜を分けておくよう言っておく)」
ベウ子の返答を聞いた美咲は、振り向いてレトワにお願いした。
「レトワちゃん、この前ベウ蜜を入れておいた空のビンがどこかにあるはずだから、探しておいてくれる?」
「うん! 今探すね!」
表情を輝かせたレトワが、荷物置き場にすっ飛んでいく。
「もちろん中。外で寝るのもいいけど、中の方が寝やすい」
きりっとした顔で言ったアンネルに、美咲は苦笑した。
「あなたの判断基準はいつもそれなのね……」
「私も中ね。非戦闘員だもの」
セニミスが当たり前のことのように言った。
まあ、確かに当然である。ディアナ、システリート、セニミス。この三人には戦う力は無いので、できれば中に居てもらった方がいい。
「じゃあ、私は中にいましょう。前は私よりも適任がいるでしょうし、上はセザリーたちの方が適しているでしょうから」
バランスを考えて、メイリフォアは自分の位置を定める。
専門の投擲武器ではないが、天井に設置されている戦闘弩座はメイリフォアも扱える。固定されている関係上、狙いその物はつけ易く、ただの弓よりも扱いは容易だ。
だがそれでも、元々弓が専門のセザリー、テナ、イルマに任せた方がいいのは間違いない。
戦闘弩座は天井にしかないわけではないので、メイリフォアも扱う機会はやってくるだろう。
「なら、私は外かな。戦闘要員が中にいるのでは示しがつかん」
「私も外に出ましょう。アヤメさん居るところにサナコ有り、です」
アヤメが外に出ると決めれば、当然アヤメが大好きなサナコもその後に続く。
「おお、二人もか。場が華やぐな」
タティマが凛とした女侍姿のアヤメと、清楚な和風美女のサナコに緩んだ表情になった。
「どうしてどいつもこいつもこう容姿のレベルが高いんだ!」
髭に覆われて分かり辛いが、ミシェルはアヤメとサナコを見て顔を赤らめている。
「一人くらい、分けて貰えないか真剣に考えそうになるね」
ベクラムが軽口を叩いた。
「口は災いの元でやんす。黙るでやんす」
さすがに学習した様子で、モットレーはベクラムを注意した。
だが少しばかり遅かったらしく、アヤメとサナコは冷たい目でベクラムを見つめていた。どうやらベクラムは発言を聞かれていたようだ。
今までなら何か喋っていたタゴサクは、アヤメとサナコを凝視していた。明らかに同郷のような雰囲気の三人であるから、タゴサクの知人に二人が似ていたのかもしれない。
「なら、あたいは外になるかな」
「私は中の方が良さそうね」
保留していたドーラニアとミシェーラが判断を下し、全員がどこにつくか決まった。
イルシャーナ、マリス、ドーラニア、ユトラ、アヤメ、サナコの七人が外に出てタティマ、ミシェル、ベクラム、モットレー、タゴサクと一緒に座り、天井にセザリー、テナ、イルマ、ニーチェが出る。残るディアナ、ペローネ、システリート、レトワ、ラピ、アンネル、セニミス、メイリフォアの七名は、美咲とミーヤと一緒に中で待機だ。
ちなみにこの中で御者が務められるのはディアナ、セザリー、タティマの三人なのだが、消去法でタティマに決まった。ディアナは外に出すのは危険だし、セザリーは御者に当てるよりも、天井で敵を警戒して貰った方が都合がいい。実質タティマが一番適任だろう。
各々が持ち場に着くと、装甲馬車がゆっくりと動き出した。