一年 誕生日
一年 誕生日
「イセの兄貴!コイツは良いな!」
「……肉…美味い…」
「ファリド、ビジャン、おまえら肉ばっかりじゃなくて野菜も食えよ!」
バーベキューである。
宴なるものをどう主催すべきか考えた末、伊勢にはこれしか思いつかなかったのである。ジャパニーズスタイルの、焼き肉っぽいバーベキューだ。モラディヤーン家の庭を少し汚す事になるが、ベフナーム先生もレイラーもこころよく承諾してくれた。彼らはそもそも、庭になど興味が無いのである。
子羊と鶏のいいところを大量に買い込んできた。子羊は一頭丸ごと。朝に潰したばっかりの奴だ。本当なら豚肉や牛肉が欲しいところだが、この国で手に入る肉は羊か山羊になってしまう。こればっかりは仕方が無い。
野菜はナスと瓜とピーマンみたいな奴と玉ねぎ。
ソースは自家製だ。ニンニク・玉ねぎ・とうがらし・塩コショウ・醤油・砂糖・酢・ワイン・蜂蜜、適当に混ぜて火にかけてから冷ますだけ。味見しながら調整していけばいいから適当である。が、伊勢はなかなかに美味いと思っている。
前日にレンガを買ってきてカマドを作り、その上に網をかけて、炭火で焼くだけである。実に簡単だ。
肉も野菜も薄く切って焼いてタレにつけて食べるだけである。実に簡単だ。
しかし、簡単なようで、やってみると、なかなかに作業は大変なものである。
でも、おもしろい。
「この酒はなんだ?うめぇ…それにしていつ振りの休みだ…」
「お父さん、飲み過ぎないでね!」
「アールさん後でこのソースの作り方教えて下さい!」
「イセ君!野趣あふれる料理だが実にいいねぇ!」
「アール君!このような様式の料理は君の国ではよくあるのかね!」
「ジャパニーズ焼き肉おいしい。とりください」
「あたしにナスをとっておくれ。肉は少しで良いからね、ババアだから」
「師匠!肉が無くなりそうです!」
「ロスタム君、落ちつきたまえ。君が切ってくれば沢山あるのだよ」
「相棒、焼き肉おいしいれもぐもぐ」
上から順に、ファリド・ビジャン・親父・ラナーヤ・アフシャーネフ・レイラー・ベフナーム・セシリー・マルヤム・ロスタム・伊勢・アール。
この国にやってきて一年。生まれて一年。
ここにあるのが、アールが作ってきた人との関係だ。
みんな気のおけない仲の良い友人たちだ。
異邦人で、変な伊勢とアールを受け入れてくれた人たちだ。
しばらくして、全員の腹が満腹になると、プレゼントの贈呈会と相成った。
ファリドとビジャンからは綺麗な買い物用の袋。
鍛冶屋の親父からは鉄のハンマー。
ラヤーナからは渾身の出来のガラスペン。
アフシャーネフからは薔薇のジャムと紅茶。
レイラーからはオレンジ色のスカーフ。
ベフナームからは銀ボタン。
マルヤム・セシリー・ロスタムからは紙と藤で出来たお手製の籠。
相棒からは小さな紫水晶。
アールは一人一人から丁寧にプレゼントを受け取った。
一番最後は相棒からだ。
いつもありがとう、って。アールがいるからだ、って。
相棒は周りに聞こえないように、小さな小さな声で、恥ずかしそうに、そう言って渡してくれた。
わかっているけど、言葉にして聞いてみると、うれしい。
ありがとう、みんな。
ありがとう、相棒。




