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異世界ツーリング  作者: おにぎり
第六章~戦争と平和
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一年 誕生日

一年 誕生日


「イセの兄貴!コイツは良いな!」

「……肉…美味い…」

「ファリド、ビジャン、おまえら肉ばっかりじゃなくて野菜も食えよ!」


 バーベキューである。

 宴なるものをどう主催すべきか考えた末、伊勢にはこれしか思いつかなかったのである。ジャパニーズスタイルの、焼き肉っぽいバーベキューだ。モラディヤーン家の庭を少し汚す事になるが、ベフナーム先生もレイラーもこころよく承諾してくれた。彼らはそもそも、庭になど興味が無いのである。

 子羊と鶏のいいところを大量に買い込んできた。子羊は一頭丸ごと。朝に潰したばっかりの奴だ。本当なら豚肉や牛肉が欲しいところだが、この国で手に入る肉は羊か山羊になってしまう。こればっかりは仕方が無い。

 野菜はナスと瓜とピーマンみたいな奴と玉ねぎ。

 ソースは自家製だ。ニンニク・玉ねぎ・とうがらし・塩コショウ・醤油・砂糖・酢・ワイン・蜂蜜、適当に混ぜて火にかけてから冷ますだけ。味見しながら調整していけばいいから適当である。が、伊勢はなかなかに美味いと思っている。


 前日にレンガを買ってきてカマドを作り、その上に網をかけて、炭火で焼くだけである。実に簡単だ。

 肉も野菜も薄く切って焼いてタレにつけて食べるだけである。実に簡単だ。

 しかし、簡単なようで、やってみると、なかなかに作業は大変なものである。

 でも、おもしろい。


「この酒はなんだ?うめぇ…それにしていつ振りの休みだ…」

「お父さん、飲み過ぎないでね!」

「アールさん後でこのソースの作り方教えて下さい!」

「イセ君!野趣あふれる料理だが実にいいねぇ!」

「アール君!このような様式の料理は君の国ではよくあるのかね!」

「ジャパニーズ焼き肉おいしい。とりください」

「あたしにナスをとっておくれ。肉は少しで良いからね、ババアだから」

「師匠!肉が無くなりそうです!」

「ロスタム君、落ちつきたまえ。君が切ってくれば沢山あるのだよ」

「相棒、焼き肉おいしいれもぐもぐ」


 上から順に、ファリド・ビジャン・親父・ラナーヤ・アフシャーネフ・レイラー・ベフナーム・セシリー・マルヤム・ロスタム・伊勢・アール。


 この国にやってきて一年。生まれて一年。

 ここにあるのが、アールが作ってきた人との関係だ。

 みんな気のおけない仲の良い友人たちだ。

 異邦人で、変な伊勢とアールを受け入れてくれた人たちだ。


 しばらくして、全員の腹が満腹になると、プレゼントの贈呈会と相成った。


 ファリドとビジャンからは綺麗な買い物用の袋。

 鍛冶屋の親父からは鉄のハンマー。

 ラヤーナからは渾身の出来のガラスペン。

 アフシャーネフからは薔薇のジャムと紅茶。

 レイラーからはオレンジ色のスカーフ。

 ベフナームからは銀ボタン。

 マルヤム・セシリー・ロスタムからは紙と藤で出来たお手製の籠。

 相棒からは小さな紫水晶。


 アールは一人一人から丁寧にプレゼントを受け取った。

 一番最後は相棒からだ。


 いつもありがとう、って。アールがいるからだ、って。

 相棒は周りに聞こえないように、小さな小さな声で、恥ずかしそうに、そう言って渡してくれた。


 わかっているけど、言葉にして聞いてみると、うれしい。

 ありがとう、みんな。


 ありがとう、相棒。




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