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焦燥〜推しの子に逢いたくて〜

作者: 源なゆた
掲載日:2026/07/20

……2時47分。

(今日の推しの子のライブは)

15:00〜15:30。

「寝過ごし、た?」

 昨夜寝たのは9時過ぎ。数時間後に一度起きたが、二度寝して、現在(いま)

(いや、いくらなんでも……)

(あり得る、か)

 ラヴレターを書くのに必死で二連続徹夜だった。

 (にわか)には信じ難いが、時計は嘘を吐かない。少なくともスマホである以上、電池切れではなかった。

(電車で、何分だ?)

 田舎者である。東京の電車事情など、若い頃に住んでいた&通っていた範囲以外ほぼわからない。

 目的地は下北沢まちの案内所、下北沢駅東口前広場内。

 G先生の地図によれば、公共交通機関で57分。──絶望だった。

(いや、待て)

「タクシーなら」

──25分。

(どう呼べば最速だ?)

 フロントへ頼むか……いや、確かホテルのチラシに、

「あった」

某飯宅配屋のタクシー手配アプリ、その広告だった。

「これで行こう」

 首都高代込みで約一万円。

(それがどうした!)

 こっちは電車代と宿泊費だけで八万円近く出しているのだ。今更惜しむ額ではない。一億円、とでも言われようもんなら流石に払えないが。

 ともあれ大事なのは、「四日間全通します」と推しの子へ告げたにも拘らず「行けませんでした」では済まされないことだ。──愛するあの子を悲しませるわけにはいかない。

 初めて使う配車アプリに戸惑いながら、乗車場所をホテル前に。どうやら1分か2分で来られるらしい。

 髭は案外伸びていなかったので無視。今日は話せるわけでもない。それぞれ三十秒と掛けずに歯磨きと着替え。コーディネートは元々今日明日のどちらかで着るつもりだったラフなもの。靴だけ合わないが、荷物の都合で仕方なかった。

(貴重品と部屋の鍵)

 あとはライブ時間内に辿り着ければ今望み得る最善だ。

 近年稀に見る素早さで部屋を出て、エレベーターで一階へ行き、玄関からガラス扉越しに外を見る。

(暗、い?)

 今日は雨か曇りだったろうか。

 いや、何かがおかしい。

 外へ出てみても、人が居ない。

 結構な人が行き交う地域である。

 地元のド田舎とは違うのだ。

(まさか)

 もう一度スマホを確認。

……2時。

(14時、では、ない)

 良かった、ちゃんと、逢いに、行ける。

 なお、配車先を指定したつもりだったアプリは、更に操作が必要だったらしく、手配出来ていなかった。

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