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動物研修  作者: アズキ


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5,役割

普通、何かプリントを見ながら予定というものを確認するものだと思っていたが、とことんこの研究所は常識が通用しないようだ。

アンケートを取って、それを否定するところも非常識に感じてしまった。

こういう場所では共感してくれるものなのではないのかと。


予定も長谷川が話し始めるだけだった。


「明日は、この施設の見学をしてもらいます。

思っている以上にこの施設は広いのでどんなものがあるのか見てもらいます。

その後は、実験に付き合ってもらいます。」


その実験の内容を知りたいと、祥生は心の中で言った。

そして、もう1つ疑問があった。

ここまで聞いていて親が同伴する意味が理解できなかったのだ。


「では、それぞれの役割についてご説明しましょうか。

動物には様々な役割というものを人間が割り振りました。

その中には残忍で冷酷なものから、謎にVIP待遇を受けれるようなものまで様々です。

今回、ここにいる6人にはそれぞれその役割を担ってもらいます。」


その場にいる6人全員が長谷川の言っていることが理解できずにポカーンとしたアホ面になってしまう。

一体それはどういう意味なのか…

動物の役割を自分たちが担う?

その意味が全く分からなかった。


「理解できないと思います。

大丈夫です。これから説明しますので。

今回研修生として来てくれた2人には『展示動物』という役割を与えます。」


「展示…動物?」


悠太が言葉を発した。

純粋に疑問に思ったのだろう。

だが、その声は少し怯えているような気がしていた。


「そうです。

動物園で飼育され、人々に見られている動物です。

その役割を担い、飼育されるんです。」


怖くなった。

長谷川の目がここに来て活き活きし始めたのだ。

さっきまで生気が全くなかったというのに、急に命を宿されたかのように輝きを見せた。


だが、この内容に親も黙ってはいない。

1番最初に声を上げたのは悠太の父である黒田隆志であった。


「それは一体どういうことなんですか?

子どもたちを観察対象にするということなんですか?」


「そうです。」


長谷川はなんの戸惑いも見せずに、それが当たり前かのような口ぶりで答えた。


「なぜそんなことを?」


「動物たちは苦痛を味わっています。

どれだけ幸せに見えたとしても、それは人間が勝手に決めつけているだけ。

動物の声も聞けないくせに、幸せだとうたう。

そして死んだ時は悲しみ、泣く。

そんな人間に私は反吐が出るんですよ。

ですから、人間はそれを知る必要があるんです。」


「冗談じゃない。

自分の息子をそんなふうに扱われてたまるか!」


悠太の父は席から立ち上がり、長谷川の方へと歩き出した。


「席からまだお立ちにならないでください。

説明の最中です。」


「説明なんて聞いてられますか。」


そのまま、悠太の父は長谷川の胸ぐらを掴み、いかにも殴るぞという姿勢を見せた。

この時、その場にいる全員が「いいぞ。」と彼が頼みの綱であるということを理解している。


だが、長谷川は未だに余裕を見せている。


「まだあなたたちの役割について話していません。

今日話す予定ではなかったのですが、必要であれば話しましょうか?」


「ふざけるな!」


長谷川の頬目掛けて拳が振り下ろされ、ホワイトボードの横の壁に長谷川は吹っ飛ばされた。

誰もが勝ちを確信した瞬間、希望という文字が絶望の2文字に変換されてしまう。


バンッ!

というものすごい音とともに、悠太の父は頭を撃ち抜かれてしまったのだ。

脳天を貫かれ即死。

その場に倒れ、頭からは見たこともないほどの血が大量に流れ出てしまっている。


こんな状況の時、ドラマでは「きゃぁぁぁぁ」と悲鳴が出るものだが、部屋は沈黙が続いた。

やっとの事で沈黙が収まった時、最初に声をあげたのはもちろん、悠太の母だ。


泣きながら席を立ち、旦那の亡骸に抱きつく。


部屋には1人の男が入ってきた。

手には猟銃を持っている。

男は長谷川同様に白衣を着ている。


「大丈夫ですか?長谷川さん。」


「問題ないです。よくあることなので。

もう慣れてしまいました。」


悠太の母は亡骸を抱えて泣きながら、長谷川の方を向いた。

しかし、抵抗はできない。

自分の目の前には今、猟銃が向けられているから。


「『害獣』です。

あなたの旦那さんは人に害を及ぼすもの。

そういう動物を人間は排除したがる。淘汰することも厭わない。

あなたの旦那に与えられた役割は『害獣』です。」


悠太の母は声も上げずに、勇敢にも前に出ようとしていたが、部屋に大勢の白衣を来た人間が入ってきた。

彼らは悠太の母だけでなく、そこにいる全員を取り押さえたのだ。


「研修は明日からです。

今日はゆっくり休んで、体力を温存しておいて下さいね。

それでは、おやすみなさい。」


祥生の記憶はここまでだ。

首元に何かを刺され、何かを注入された感覚があり、瞼が勝手に閉じてしまったのだ。

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