3,アンケート③
悠太は自分の前に置いてある紙とにらめっこしていた。
隣からは「急げ。」という視線が痛い。
こっちだって必死に考えてんだよ。
そう言いたかったが、研修先ということで我慢した。
学校だったら言ってる。
Q,動物園は必要だと思いますか?
もちろん「はい。」という答えをした。
特に何か特別な理由があった訳じゃない。
Q,上の回答でそう答えた理由を教えてください。
だからこと、この質問がとても難しかった。
「それぞれが動物を見て感じることは違うから、実際に見て感じてもらうため。」
と、理由を捻り出した。
気がついてはいなかったが、この時かなり時間をくっていた。
Q,人間が動物を支配することをどう思いますか?
悠太も祥生と同じように、この質問で止まった。
2問目でも時間を食ったというのに、ここでさらに時間をかければ、隣からの視線がまた痛くなる。
悠太は「人間が生きてきた上で必要だったと思う。」
と、回答した。
もちろん、急いで書いた回答だから深い意味とか大層なことを書いたつもりでもなかったのだが、この回答が地雷であることを彼は知らない。
2問目に関しては2人とも似ている理由を提示していたが、やはり3問目は回答が変わってくるものだ。
机の上に伏せた紙を長谷川が回収し、今はじっくりと見ているようだった。
悠太は特に長谷川を気にしている様子はなかったが、話をしている祥生がちょくちょく彼の方を見るのを気にしていた。
そんなに気になるやつか?
確かに、見た目だけなら怪しさはある。
「見た目だけ」なら。
喋り方も対応の仕方も優しさしか感じない。
悠太には長谷川が危険人物のようには見えなかったのだ。
だが、本人が目の前にいるから祥生に聞くこともできないというもどかしさを心に押し殺していた。
大人たちだって呑気に会話を弾ませている。
祥生の考えすぎだと悠太は思った。
その3分もかからないうちに、長谷川はホワイトボードの前に足を運び、まるで授業を始めたかのように話を始めたのだ。




