17,本質
気がついた時、長谷川は闇の中にいた。
気を失ってから、どのくらい時間が経ったのであろうか?
感覚としては気を失ったという感覚の後は何も感じずに目覚めたような感覚だ。
自分は横になり、ベットの上にいるらしい。
掛け布団が自分の上にかかっている。
起き上がろうとした時、自分の隣が壁になっていることに気がつく。
それも、網状の…
ハッとしたと同時に明かりがつく。
自分がどこにいるのかすぐに分かった。
これまで自分が人々を閉じ込めてきたあの場所。
そう、そこはバックヤードの檻の中だった。
長谷川の呼吸が荒くなりだす。
自分の置かれたこの状況を理解することができない。
その時、人の足音がこちらに近ずいてきた。
明かりに照らされ誰なのかが分かる。
小澤だった。
「お前…裏切ったのか?!」
「人聞きは悪いですが、そういう事になるんでしょうかね?この場合は。」
「なんでこんなことを!?」
「最初はこんなことをする気はありませんでしたよ。でもね…」
小澤の顔は長谷川の知っている小澤ではなかった。
彼は施設にいる人間たちに怖いくらいに優しい眼差しを向けることを知っていた。
自分も今は飼われる側にいるというのに、彼の目は死んでいて憎しみすら感じるような気がする。
「長谷川さん、あなた言いましたよね?
人間をやめれるならやめたいって。
その答えが分かっているのに、なぜ実行しないのか、その時から気になって仕方がなかったんです。
それに、あなたが1番気がついていたはずです。
人間の本質を自身が表してしまっているということに。」
図星をつかれた長谷川は何も言うことはできない。
気がついていたが、気が付きたくはなかった現実。
「人間で動物園を実行して、その他の動物の扱いを人間に教えさせる。
そして最後には野生に返す、それが目標だと。
でも、失敗を繰り返すうちにあなたはその目標を見失い、ただ動物の受けた仕打ちだけを人間に与えるようになった。
それは何故なのか?
人間を支配して、思い通りに動かし、飼育することに優越感を覚えたからですよね?」
これも図星だった。
そう、長谷川はいつしか人間を支配する、ということに対して優越感を覚えてしまっていたのだ。
いわゆる支配欲。
自身の理論を納得させるために支配し、服従させるような形を取る。
「でも、安心してください。
あなたは人間ではなくなります、今日から。」
「待て!お前はどうするつもりなんだ?
同じことをすれば、お前も人間の本質のようなものじゃないか?」
「そうですよ。」
小澤は表情1つ変えずに言い放った。
それが、まるで絶望の一言のようで、長谷川を完全に硬直させる。
「僕は人間です。
どう頑張ろうが人間なんです。
そして、我々が作り出してしまったサイクルは壊すことなんて今更不可能なんです。
動物園はこれからもあり続ける。
生きるために多くの家畜の命をいただく。
それはどうやったって覆りはしない事実なんです。
ただ僕はここで人間を飼うことが気に入ってしまった人間なんです。
だからこの施設は続けていくんです。」
話終わり、小澤は元いた方向へと歩いて行ってしまう。
「待て!私は!こんなこと望んでいない!
私が望んだものは!
動物たちの…」
ガチャン…
扉が閉まる。
閉められた扉の後ろで小澤は呟く。
「自由…とでも言うつもりですか。
その檻に入ってやっと気がつくとは。
でも、入る前のあなたは違うことを願った、そして、支配する人間に対しての憎悪があるというのはブーメランすぎますよ。
そこでじっくりと考えるといいです。」
施設の中には微かに聞こえる長谷川の嘆きが聞こえるが、誰も反応を示そうとはしない。
誰も人間の本質には逆らうことはできない。
そして、それに逆らおうとすれば矛盾が生まれてしまう。
完全にそれを無くしてしまわなければ、人間が作り出してしまった世界の理を崩すことはできないのだ。
最悪の場合、その不幸が自分に降り掛かってしまうかもしれないのだから。
こんばんは
ここまで作品を読んでくださった方、ありがとうございます。
まえがきで注意喚起をしたのですが、やはり自分の思うところもあり、あとがきでもこの作品について語らせてもらおうと思います。
作中で散々、動物を扱う人間について否定をしてきたのですが、私自身は動物園は必要だと思っています。
無くてもいいものだと思っているのは事実です。
しかし、やはり受け継いできてしまったもの、それを放棄するのは動物たちの幸せを願う上で1番ダメな行為なのではないかと思います。
では、限られた動物園というスペースで動物たちを幸せにすることができるかということを考えていくべきだと思います。
「しっかり」「ちゃんと」飼うということ、意外とできていないところも多いかもしれないんじゃないかと考えています。
ペット、家畜、実験動物に関しても命を扱い、その命をいただく、自分たちの利益のために使わせてもらっているということを理解するべきだと思います。
学ばなければならないというのは人間が環境を破壊して、学ばなければいけない状況を作っているということだと思いますが、そうしてしまった以上、学び、改善をしていかなければ未来はないと感じます。
この作品に心打たれた方がいましたら、
動物園に行った時に、見た動物について学び、危機にあるなら自分たちにできることを考えてあげて欲しいです。
ペットを飼っているなら、幸せにしてあげて欲しいです。
家畜を見た時には命に感謝して欲しいです。
そうすることで、動物たちとの共存を目指していければいいのではないかと思います。




