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動物研修  作者: アズキ


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11,精神崩壊

祥生はベットの中で早く眠りにつきたいと願った。

けれど、なかなか眠ることができない。

悠太の方はというと、泣き疲れたのだろうか、体力を使い切り、ほぼ気絶のような眠りについていた。


眠っている間だけ、この地獄を忘れられる。

いや、どうだろうか?

眠っている時に、あの解剖の様子が頭の中へと流れ込んできたのなら、夢の中でも地獄だ。


今は、その夢を見ないことを願い続けながら、目を閉じて眠りにつくのを待っている。

そして、いつの間にか眠りについていたらしい。

気がついた時には起床時間になってしまった。

暗闇だけを感じ、眠ったような感覚はほぼゼロに等しい、最悪の目覚めだ。


しかし、そうも言ってられない。

今日はここから出られるチャンスが巡ってくる日だ。

逃す訳には行かない。

朝食を出され、半分程度食べた。


その後は指示に従い、外にある放飼場へと案内される。


その場所はまるで、人間が使う公園だ。

遊具やベンチなどがあり、水道などもある。

人はある程度いたが、最初だけ。

途中からは何人かの人間が通りかかる。


監視カメラもここには設置されていないようだ。

そして、極めつけは遊具で1番高い滑り台が外壁の近くに設置されていること。

どうにかして高さを確保すれば外に出ることができるかもしれない。


だが、放飼場に出てから悠太の様子がおかしいことに祥生は気がついていた。

ベンチではなく土の地面に座り込み動こうとしない。


人がいないタイミングで祥生は悠太に話しかけた。


「おい、しっかりしろ。上手くやればここから出られるかもしれない。

手伝ってくれ。」


「出る?何のために…」


「はぁ?」


イラつくとかそういう段階をすっ飛ばして怒りが湧いた。


「なんのため?

ここから出たくないのかよ!?

俺の両親はまだ助かるかもしれないんだ。

何とかここから出て…」


「俺の親は死んだ!

俺の目の前で…これ以上ないくらい残酷な死に方をした。

そんな俺に対して自分の親が大事だから助けてくれって?

俺だって親が大事だった。でも助けられなかった。

俺の気持ちを少しでも考えたか?」


祥生は言葉を失った。

自分のことだけ考えていたのだ。

逆の立場になった時、そんな都合のいい話に乗る気にはなれないだろう。


「俺はもう、失うものはなくなった。

ここから出たとしても、何も無いんだよ。」


「じゃあ、お前の命は?」


「…」


「気持ち考えてやれなかったのは、本当にごめん。

自分の親が生きてるからって、それだけを考えてた。

でも、死んだ親はお前に諦めて欲しいとは思ってないはずだ。

こんな所で無駄な人生を過ごすことを望んではないと思う。それに…」


「なんだよ。」


「ここから出て、助かった時は俺のところに来ればいい。親も多分分かってくれるさ。」


まだ親を助けられる保証は無いというのに、そんなことを言ってしまったのも、悠太を慰めるためだったのだろう。

悠太の心は崩壊していて、方法があるのなら自殺してしまうのではないのかと思うぐらいだ。


学校にいた頃のチャラさは、この施設に来てからは見る影もなくなってしまっていた。


その後、悠太は少し涙目ながらに祥生の方へと近ずいてきた。


「悪かったよ。

俺も1人で諦めようとしてたよ。

それに、ここに連れて来たのも俺だしな。

責任は取らないと。」


この時、精神崩壊を起こしていた悠太は、また動こうという気力を取り戻した。

人間というのは少しの励まし、慰めで自分の脳を騙し、気力を取り戻すことができるのだ。


悠太の精神は確かに崩壊していた。

けれど、祥生の言葉が彼の脳を騙したのだ。


「どうやってここから出るんだ?」


「あそこの滑り台の上からなら、もしかしたら外に出られるかもしれない。」


「あの上から?どうやって?」


「片方の肩に、もう片方が乗るしかないな。

いい手ではないかもしれないけど、出られるのは1人だけ、でも1人出られれば助けは呼べる。」


「なるほど。」


話し合いの結果、下の台になるのは祥生に決まった。

悠太よりも力には少し自信があるためだ。


そして悠太は外に出て助けを呼ぶ。

これが彼らの作戦だったのだが、1つのことを見落としてしまっていることを彼らは知らない。


結果的には悠太は外に出ることができた。

肩車で外壁を乗り越え、助けを呼ぶために放飼場から脱出したのだ。


1つおかしな点があった。

あまりに静かなのだ。

人はその後も通りかかっていたのだが、1人が報告をしに行った程度で焦る様子もない。


その光景に祥生は少し不気味さを覚えた。

外に出た悠太はどうなってしまったのだろうか?

今はただ助けを呼んでくれるのを待つだけだ。

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