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動物研修  作者: アズキ


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9,解剖実習①

ほぼほぼ寝ていないまま、時間だけが過ぎていく。

今は既に日をまたいでいて、もうすぐ起床時間だが、祥生はそれを知る由もない。


隣を見ると、悠太が寝ているのが分かる。

この状況でも寝れる精神は今の祥生にとっては羨ましいことであった。


自分の両親の状況がとんでもないと分かって、飯が喉を通ったり、すぐに眠れる方がおかしい。

むしろ、殺されてしまっていた方が楽なのだろうか…と不謹慎極まりないことすら頭をよぎってしまう。


母親はいつ使われるか分からない種をつけられるだけの母体として扱われている。

そして、誰かも分からない相手の子どもを産み、産んだ後は搾乳をされるだけの存在と化す。

そして、母乳が出なくなった矢先にはまた、新しい子を産ませられることを強制させられる。


それは生きるための子孫繁栄のためではない。

物として扱われているも同然。

しかし、実際に人間はこれを家畜に行い、そのありがたみを受け取り生きている。

自然が与えてくれる分だけでは人間は足りないのだ。


貪欲に自分たちが取れる分だけを搾取しようとする。それが人間という生き物なのだ。


祥生は少しでも寝ていた方が良いと、目を瞑る。

目を瞑った状態で、目を左右に動かすと、脳が眠りにつくというネットで見た情報を試してみるが、あまり効果は感じられなかった。


といっても、少しは眠れたのだが、眠りが深くなった時に、起床の時間となってしまい、周りが明るくなってしまったのだ。

やっと辿り着くことのできた、唯一の安息の地、そこにいられる時間はとても短かった。


朝食を受け取り、それを食べながら、悠太も起きたのを確認。

この間に、展示場の掃除が行われているのだ。


2人は飯を口に運んでいたが、その味が無駄に美味しいことに嫌気がさす。

食欲がないというのに、無理やり食欲を湧かせられているような感覚。


けれど、精神状態で沢山食べてしまえば、そのうちに吐き戻してしまうと思い、半分程度しか食べることしかできなかった。


その後は通路を通り、展示場へ移動。

初日と変わりはなかった。

ガラス越しにこちらを見る人々は何かを話したりメモをしているが、自分たちが話しかけたところでその声は「人間」の声でないことは分かっている。


何をするわけでもなく、ただベットに座ったり、寝転んだりする時間が過ぎていく。

ただ退屈だ。

楽しむものはない。

スマホもゲームも本もないのだ。

ただ、その場にあるのは退屈と、見られているというストレスだけ。


そんな苦痛な時間が過ぎてかなりの時間が経った時だった。

祥生たちは知ることはないが、時刻は11:00をまわろうとしている頃だ。

1つのアナウンスが入った。


『2日目の研修です。

今回の研修内容は解剖実習を行います。

通路を通って、バックヤードに言ってください。』


長谷川の声だ。

祥生はそのまま指示に従った。

精神状態が不安定なせいであろう、「解剖実習」という不吉な予感のするものへの恐怖をも忘れてしまっていたのだ。


バックヤードに戻ったが、悠太がなかなか戻ってこなかった。

何をしているのだろうか?

その答えは彼が姿を現した時に分かった。


悠太の体には数個のトゲが刺さっていたのだ。

おそらく悠太はバックヤードに戻るのを拒否したのだろう。

その結果、部屋のどこかに付けられている装備から棘が発射されたのだ。


人が誘導するのが普通なのだが、動物園で危険な動物、脱走が予想される動物に対してはそんなことはできない。

そんな時にされるのが、エサで釣るなどの方法だ。

しかし、頭のいい動物はそれで釣られるということを覚えてしまう。


そんな時、今では少なくなったであろうが、水をかけるなどの方法で誘導する場合もあるのだ。

今ではそんなところは殆どないだろう。

ましてや、体罰と同等な仕打ちは動物愛護団体の反感を買う。


だが、この場所には常識は通用しないようだ。

人間が動物に行ってきたことを徹底的に行う方針らしい。

そうして、抵抗をすれば罰が待っていると分かれば、2度と抵抗することはなくなる。

2日目に見た別の展示場の人間たちが死んだような表情になるのも無理はない。


昨日と同じように透明なケースが台車に押されて運ばれてくる。

祥生を運ぶのは昨日と同じ小澤だった。


「今日は解剖実習を行いますからね。

場所は2階の実験動物の部屋です。」


不可解なことに、昨日はなかったものが透明なケースの中に置いてあった。

それはかなりの大きさの袋。

何のためにこんなものを入れているのか分からないが、身を委ねるしかなかった。


エレベーターで運ばれ、2階へ移動。

実験動物のエリアに行くまでに家畜のエリアを通らなければならなかった。

祥生は母親の辛そうな顔を見るのが嫌だという気持ちと、安否確認ができるという気持ちが交互に来るのだった。


実際のところ、母親は無事だったが、やはり生きる気力が無さそうに見える。

「大丈夫、ここから出たら助けを呼ぶから。」

心の中で祥生はそう語りかけた。


だが、そんな余裕も無くなってしまう。

解剖されるのが「誰なのか」を考えていなかったからだ。

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