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FATAL LOOM  作者: 水織慧
第一章
9/18

幕間:盤上の支配者たち

 混乱を極める城内の一角。影に溶けるようにして、その様子を窺う男がいた。

 魔法都市ミストラルが放つ二重スパイ――メギナス・サレン。


 彼は窓から、広場で荒れ狂う紅蓮の雷光――ガドルフの最期を冷ややかな目で見下ろしていた。

「……あの、ガドルフがやられるとは。しかも、あれはただの風魔法だぞ。まさか本当に『災厄』なのか?」


 直後、爆音が響き、天守すら揺るがす衝撃が走る。


「アリウス。もはや貴様に掛けるしかないか。……さて、鬼が出るか蛇が出るか」


 メギナスはそう言葉を残すと、音もなく闇へと消えた。




+ + +


「不完全だ。あまりに、不完全すぎる」


 ヴァレリウスは、血の海と化した広場を見下ろし、吐き捨てるようにつぶやく。

 ギルド長の死も、王の無能さも、アリウスという『バグ』の脱獄も、すべては人間という不確かなシステムが招いたエラー。


「この不完全な世界を『修正』できるのは――もはや、この私しかいない」

 彼は己の信ずる正義という名の狂気を瞳に(たた)え、一人、静寂に包まれた教会支部へと歩を進めた。




 ――冷たく、暗い教会。

 灯りもつけず、ヴァレリウスは一人、祭壇へ(ひざまず)いた。


 自らの意識を神聖な領域へと沈め、彼は静かに、祈りを捧げる(リンクする)



≪スキャンを開始……完了≫

≪対象:適格者候補 [VALERIUS BLACKWOOD]≫

≪魂の適合率:70%≫

≪クエリ:付与済みプロトコル『CODE: Tartaros(タルタロス)』の昇華≫

≪昇華条件:適合率80%以上 ―― [警告:条件未充足]≫

≪プロトコル移行:適格性確認(テスト)フェーズを強制執行します...≫


≪権限限定譲渡:CODE: Keraunos(ケラウノス)

≪最優先事項:CODE: Atropos(アトロポス) の排除。付随する世界不全(エラー)を全て消去せよ≫


≪≪最終指令:PURGE DISORDER. ――『粛清』を開始せよ≫≫



 脳内に鳴り響く無機質な『神』の啓示。それが、彼の狂信に絶対の正義(コード)を与えた。


 掌に収束するのは、純白の輝きを放つ秩序の象徴――『CODE: Keraunos(ケラウノス)』。


「ふん。神はまだ、この私を試されるというのか。……よかろう。かつての私の『家族(汚点)』のように、すべてを白く清浄な輝きへ戻そう」


 彼の瞳には、救済ではなく、一切の情を排した「抹消(デリート)」の光だけが宿っていた。




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