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FATAL LOOM  作者: 水織慧
第一章
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幕間:歪む歯車

 サイラスはギルドに向かいながら、前日のことを考えていた。


(あの魔法はなんだ? いつの間にあんな力を……。

 教本を完璧に修めたおれが、あいつのデタラメな魔法に翻弄される。メギナス様も、おれではなくあいつばかりを見ていた。

 昨日のドラゴン戦だってそうだ。あいつは最初から一人でやれた。トドメを譲ったのは、(あわ)れみか?

 ……ふざけるな。アリウス、きさまはずっと、おれを見下していたのか?)


 ギルドに到着したサイラスは、そこで足を止めた。

 見慣れたはずの入り口が、異様な静寂に包まれている。


 そこに鎮座していたのは、白と金で装飾された豪奢(ごうしゃ)な馬車。間髪入れずに、ギルドの入り口から純白の衣をまとった集団が現れる。


(なんだ……あいつらは? 聖都の……?)


 その集団の中心で、サイラスは信じられないものを見た。後ろ手に拘束され、連行される人物――アリウス。


「ア、アリウス!?」


 思わず叫ぶサイラス。

 だが、先頭を歩いていた長身の男は、サイラスの方をチラリと見ただけだった。路傍の石ころでも見るような、完全なる無視。


 男は(ちり)一つない衣を翻して馬車に乗り込み、アリウスもまた、無言のままその闇の中へと消えていく。


 馬車が遠ざかる音だけが響く中、サイラスは呆然と立ち尽くした。


「いったい……何が起きてやがるんだ……」


 サイラスは急ぎギルドの中へ入り、ギルド長室の方から歩いてくるメギナスを見つけた。


「メギナス様! 今、聖都の者が……」


「ああ、アリウスに異端審問の令状が下った。そして、ギルド長はアリウスを正式に破門した。もう二度と戻ることはないだろう」


(アリウスが、異端……? …………は、はは。……そうか、そういうことか)


 サイラスの脳裏で、閃光のように辻褄(つじつま)が合った。


(あいつの異常な強さは、才能じゃなかった。努力でもなかった。……すべては、禁忌に手を染めた結果だったのか)


 ストン、と胸のつかえが落ちた。自分が劣っていたわけではない。相手がルールを破っていただけなのだ。


(所詮は、呪われた『オルフェウスの血』か……。(あわ)れなものだ)


 サイラスの中で何かが、歪な音を立ててカチッとはまった。


「……アリウスだけじゃない。教会(やつら)に目をつけられた以上、このギルドも終わりかも知れんな」



「いえ、私がおります! このギルドの秩序は、()()()が正してみせます! ――では、失礼します」



 そう言うとサイラスは、奥へと歩いていった。その瞳からは迷いが消え――代わりに、どこか(くら)い光が宿っていた。




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