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うつしみ  作者: 丘海 山場
第一部 成長
3/31

3個 死人に口なし。(任意)

「ここからでも入れる生命保険があるんですか?!」『根性ぉぉぉぉぉぉぉ!!』

吸血鬼の足が命の腕とぶつかり体が壁目掛けて大きく吹き飛ぶ

「っつ、がっ、、、、」

あまりの激痛に言葉の代わり血を吐き出す


意識が朦朧する。息がうまくできない。体中が痛い。視界が定まらないどころかうまく見えない。右腕だけじゃない、いろいろな骨をもっていかれた。確実に右腕の骨は折れたなこりゃ、、、

だけどーーーー

()()()()()

信じられなかった願いが現実になる


ぼやける視界の中で目の前の何か認識する。恐らく吸血鬼がとどめを刺しに来たのだろう。何とか最後の力を振り絞って遺言となるであろう言葉を吐き出す。


「ごめんオレ可愛い子のほうが好きなんだわ。かっこいい系はちょっと―――」


左側から視界が失われていく―――



声がした。女の子の声だ。


『負けるの?』

―――負ける?何言ってるんだ?

『べ、別に負けてなんかないんだからね!』

そんなの認められるはずがない。勝ち逃げは許さない。

いやそもそも負けてなどいない。

なぜなら


「―――次は勝つから1・1さ」


そんな言葉と共に()()()()()()()()()()()()()()()


この世界ではダンジョン内で死んでも最後の階層以外では生き返るのだ


はぁ、、と少しため息を吐き重い腰をあげる

『久しぶりに死んだな』そう思っていると後ろから声をかけられる

「おまえさんが死ぬとは珍しい。吸血鬼にでもやられたか?」

聞き覚えのある声に勢い良く後ろを振り向く。そこには白髭に白髪の老人が立っていた

「岡田さん!」


この人は岡田さん。ここのダンジョンの管理をしているいわゆるお偉いさんのおじいちゃんである。めちゃ優しい。この前飯奢ってくれた。


「よく分かりましたね」

「そりゃ情報来てたからな」

そりゃそうか。吸血鬼が出たらすぐ情報なんか出回るか

「そのせいで今日の稼ぎがほぼゼロになったんすよ、、、、、」

「そりゃ気の毒にな」

落ち込んだ(フリ)命を慣れたように軽くあしらう

だが命は諦めない。なぜならこうなるのは予想出来ていたからだ

ここで命は一生懸命(昨日の晩御飯の時)考えた作戦を実行する


ふ、この作戦でいちころよ!


「はい、、、、、。なので飯をおごってくれても、、、」

命が上目遣いで近づく。

我ながら完璧な表情を出来ていると思う。

『これならきっとおごりたく、、、

「この前奢ったばっかだろうが!!」

「ちっ」

年齢に似合わない元気さで言う岡田さんの返事を聞いて舌打ちをする


そんな和やかな会話をしていると奥の方で多くの人が集まっているのが見えた。

「どうかしたんすか?」

「ああ。吸血鬼が一階まで来たんだよ。今までこんなことがなかったもんで対応が遅れてな。そのせいで研修に来てたやつらがほとんどやられてな。そのせいだ」

「あーなるほど、まだ死んだことなかったんすね、、、、、」

普通に考えて死ぬのが平気な奴なんてそうそういない

まぁオレは平気ですけど



「我慢すれば稼げるのに、、、」

一瞬ロボットが頭をよぎる

そもそもオレというかダンジョン探索を生業としている奴らは基本的には平気である。誰かも言ってたろ?『金は命より重い』って。そういうこと

「そんな鬼畜なk、、、まあでもお前さんみたいのが沢山いたら探索者の人手不足も、ダンジョンの攻略ももっと早く進んだだろうな」

腕を組みながらガハハハッと豪快に笑う


目線の先の集団をさらっとではあるが全員確認する

全員まるでコピーしたかのように重苦しい雰囲気をまとっていた

あとなんか泣きながら叫んでるやつ

「―――まぁー今回はみんなダメそうっすね」

何も最初から死ぬのに慣れろなんて言わない。なぜならそれが当然の反応であるからだ。しかしたまに最初から平気なやつが―――


「いや?あそこの男を見ろ」

「え?」

自分の見落としてだったのかと岡田さんの指差す方を向く

その指は集団ではなく一人を刺していた

泣き叫んでるやつだ


「!?アイツですか!?」

「叫んでる内容聞いてみろ」

そう言われ疑う気持ちを抑え、よーく何を言っているのか聞いてみると


「生命保険出ないなんてェェェェ!!!!」

綺麗な可愛いらしい顔立ちが台無しになるほど泣きわめいていた。というか綺麗だからこそギリギリ許されてる顔だった。きっと作画担当が熱でも出したのだろう

というか・・・


なんか一人だけ違う恐怖感じてる奴いるんだけど?こわっ!


そんな恐怖を感じつつ怖いもの見たさかこれから関わらないようにするためか分からないがその泣き叫んでいるのを観察していると


「ん?てかあいつオレが助けたやつじゃね?」

じゃあ可愛い女かと思ったけど男じゃねぇか!!

「あいつと知り合いか?」

「いや、たまたま三階で助けただけです、、、てかあいつ研修してたやつなの?!アイツと会ったの三階だよ?!初心者が行けるわけなくない?!」

気が付きたくなかった気持ちと困惑の気持ちが混ざり脳をフル回転しているとと岡田さんが口を開く


「あーあいつはな、滅茶苦茶方向音痴でな。おそらくみんなとはぐれて迷子になってしまって戻ろうとしていたら三階についてしまったんだろう」

悟った眼をした老人が言う

「そんなバカな?!てか、モンスターは倒せないでしょ?!あのゴミモンスター(カスモンスター)の対象方法すら知らなかったのに?!」


あのゴミモンスターは探索者なら知ってて当たり前の常識。なのに当たりもしない攻撃をし続けるなんて早く死ぬだけの自殺行為である。知らないのは研修1~3回くらいしか研修を受けてない初心者くらいである。


「あーそれはな、あいつもヘレシーでな。魔力の続く限りは自分の許したもの以外を通さない壁を作れるんだよ。多分それを盾にしつつ逃げたんだろう」


それなら納得


うんうんと首を縦に振る

「なるほど!だからあんなところに。じゃあちょうど能力が切れた時に会ったわけだ」

「多分そうだったんだろう。というか生命保険出ないの教えたのどうせおまえさんだろ」

『知ってそうな感じだったのに知らんかったんか、、、』

謎の強がり見せていたことに気が付く


「まぁでもきっといい探索者になりますよ。死んだあとの一言目が保険出ないってねぇ?」

少し複雑な気持ちを持ちながらも認めたような口ぶりで命が喋る

だって今までの出来事でイカレてることはよくわかったからね、てか怖いまである。いや普通に怖いわ


「それもそうか。死をあまり恐れない、大切な要素だ」

「まあ方向音痴は心配だけど、、、」

「それは、そうだな、、、。ちなみにおまえさんはこの後どうするんだ?」

岡田さんが遠くを見ながらそう問いかける

命は『なんでこっち見ないんだ?』と思いつつも

「そりゃ、ほぼマイナスじゃ終われないからダンジョンに、、、」

そう答える

圧を感じる


「さっき吸血鬼に殺されたの肯定したよな?」

横にいたおじいさんの顔が悪魔のような顔になる

「あっ、、、」

そりゃ災害みたいなモンスターに会ったってさらに戦ったのなら、、、


肩に手を置かれる

「話、、、聞こうか?」


情報を洗いざらい話さなければいけないのは当たり前のことだった


「いや!あの保険男に聞けばいいじゃないっすか!」

「保険男って、、、やつも今違う意味で混乱しておる。話は聞けん」

くっそ!!助けてやったんだから恩返せよ!!

親の仇のような顔で遠くの男を見る


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!力つええええええ!!!はなせぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「終わった飯奢ってやる」

「釣り合わねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

抵抗虚しく

建物へと引きずられながら連れていかれる。





結局今日はこの後ダンジョンには行けませんでした。



きっと彼は3回勝負がローカルルールのところで育ったんでしょう

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