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うつしみ  作者: 丘海 山場
第一部 成長
3/21

3個 死人に口なし。(任意)

「ここからでも入れる生命保険があるんですか?!」『根性ぉぉぉぉぉぉぉ!!』

相手の足が命の腕とぶつかり、命の体が壁目掛けて大きく吹き飛ぶ。壁にぶつかり口から血を吐き出す。


意識が朦朧する。息がうまくできない。体中が痛い。視界が定まらないどころか見えなくなってきている。右腕だけじゃない、いろいろな骨をもっていかれた。確実に右腕の骨は折れたな、、、


だが、()()()()()


ぼやける視界の中で目の前の何か認識する。恐らく吸血鬼がとどめを刺しに来たのだろう。何とか最後の力を振り絞って遺言となるであろう言葉を吐き出す。


「ごめんおれ可愛い子のほうが好きなんだわ。かっこいい系はちょっと、、、、、」


左側から頭に蹴りが飛んでくる。



声がした気がした。女の子の声が。

『負けるの?』

―――負ける?何言ってるんだ?

『べ、別に負けてなんかないんだからね!』

そんなの認められるはずがない。勝ち逃げは許さない。

いやそもそも負けてなどいない。

なぜなら


「―――次は勝つから1・1さ」


そんな言葉を吐きながら()()()()()()()()()()()()()()()


この世界ではダンジョン内で死んでも最後の階層以外では生き返るのだ。


『久しぶりに死んだな』そう思っていると後ろから声がした。

「おまえさんが死ぬとは珍しい。吸血鬼にやられたのか?」

後ろを振り向くと元気そうな老人が立っていた。

「岡田さん!」


この人は岡田さん。ここのダンジョンの管理をしているいわゆるお偉いさんのおじいちゃんである。めちゃ優しい。この前飯奢ってくれた。


「そのせいで今日の稼ぎがほぼゼロになったんすよ、、、、、」

「そりゃ気の毒にな」

落ち込んだ命を慰めるように言う


「はい、、、、、。なので飯をおごってくれても、、、」

命が上目遣いで近づく。

我ながら完璧な表情を出来ていると思う。

『これならきっとおごりたく、、、

「この前奢ったばっかだろうが!!」

「ちっ」

年齢に似合わない元気さで言う岡田さんの返事を聞いて舌打ちをする


そんな和やかな会話をしていると奥の方で多くの人が集まっているのが見えた。

「どうかしたんすか?」

「ああ。吸血鬼が一階まで来たんだよ。今までこんなことがなかったもんで対応が遅れてな。そのせいで研修に来てたやつらがほとんどやられてな。そのせいだ」

「あーなるほど、まだ死んだことなかったんすね、、、、、」

普通に考えて死ぬのが平気な奴なんてそうそういない。

()()()()ね。

「稼げるから我慢すればいいのに。」

「そんな鬼畜な、、、まあでも、お前さんみたいのがたくさんいたら探索者の人手不足も、ダンジョンの攻略ももっと早くすすんだだろうな」

ちなみにおれは別に平気である。どっかのだれかが言ってたろ?『金は命より重い』って。そういうこと。


「今回はみんなダメそうっすね」

「いやあそこの男を見ろ」

「え?」

「生命保険出ないなんてぇぇぇぇぇ!!!!」

綺麗な顔立ちが台無しになるほど泣きわめく男がいた。


『なんか一人だけ違う恐怖感じてる奴いるんだけど?こわっ。』

そんな恐怖を感じつつ怖いもの見たさかこれから関わらないようにするためか分からないがその泣き叫んでいる男を観察していると


「ん?てかあいつおれが助けたやつじゃね?」

「あいつと知り合いか?」

「いや、たまたま三階で助けただけっす、、、てかあいつ研修してたやつなの?!あいつとあったの三階だよ?!初心者が行けるわけなくない?!」

気が付きたくなかった気持ちと困惑の気持ちが混ざり脳をフル回転しているとと岡田さんが話をしだす


「あーあいつはな、滅茶苦茶方向音痴でな。おそらくみんなとはぐれて迷子になってしまって戻ろうとしていたら三階についてしまったんだろう」

悟った眼をした男が言う

「そんなばかな?!てか、モンスターは倒せないでしょ?!あのゴミモンスターの対象方法すら知らなかったのに?!」


あのゴミモンスターは探索者なら知ってて当たり前の常識である。なのにあたりもしない攻撃をし続けるなんて早く死ぬだけの自殺行為である。知らないのは研修1~3回しか研修を受けてないやつくらいである。


「あーそれはな、あいつもヘレシーでな。魔力の続く限りは自分の許したもの以外を通さない壁を作れるんだよ。多分それを盾にしつつ逃げたんだろう」


それなら納得

うんうんと首を縦に振る


「なるほど!だからあんなところに。じゃあちょうど能力がきれた時に会ったわけだ」

「多分そうだろう。てか生命保険出ないの教えたのおまえさんだろ」

『知ってそうな感じだったのに知らんかったんか、、、』謎の強がり見せていたことに気が付く。


「まぁでもきっといい探索者になりますよ。死んだあとの一言目が保険出ないってねぇ?」

少し複雑な気持ちを持ちながらも認めたような口ぶりで命が喋る

だって今までの出来事でイカレてることはよくわかったからね、てか怖いまであるもん


「それもそうだな。死をあまり恐れない。大切な要素だ。」

「まあ方向音痴は心配だけど、、、」

「それは、そうだな、、、。ちなみにおまえさんはこの後どうするんだ?」

岡田さんが遠くを見ながらそう問いかける

命は『なんでこっち見ないんだ?』と思いつつ

「そりゃ、ほぼマイナスじゃ終われないからダンジョンに、、、」

そう答えると

圧を感じる


「さっき吸血鬼に殺されたの肯定したよな?」

横にいたおじいさんの顔が悪魔のような顔になる

「あっ、、、」

そりゃ災害みたいなモンスターに会ったってさらに戦ったのなら、、、


肩に手を置かれる。


「話、、、聞こうか?」


情報を洗いざらい話さなければいけないのはあたりまえだった。


「いやあの保険男に聞けばいいじゃないっすか!」

「保険男って、、、やつも今違う意味で混乱しておる。話は聞けん。」

『くっそ!!助けてやったんだから恩返せよ!!』

親の仇のような顔で遠くの男を見る


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!力つええええええ!!!はなせぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「終わった飯奢るから!!」

「釣り合わねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

抵抗虚しく

建物へと引きずられながら連れていかれる。





結局今日はこの後ダンジョンには行けませんでした。



きっと彼は3回勝負がローカルルールのところで育ったんでしょう

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