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10.

 

 中国情報部が日本に向け放った刺客、特殊飛行船は一路東京を目指し南下していた。

 無事、日本上陸を果たすと減速し、今度はのろのろと焦らす様な低速航行に移行していた。

 そして、遂に東京都下に向け、都知事の頭越しに非常事態宣言が発令された。

 無断外出禁止、電話も禁止、ネットも禁止。事実上の戒厳令宣言だった。

 無論、東京に隣接する一帯もその対象だった。近県から人員や車両が流入しては意味がない。

 美由紀と矢嶋がそれを知っていたら仰天しただろう。

 しかも、その遠因であり同時に主役でもある事実を知ったならば更に。

 矢嶋の”アジト”にはテレビは無く、ラジオはあったが聞く機会はなかった。

 先ほどの電話で、午後6時には東京湾の目的の埠頭に到着する約定を交わしていた。

 そろそろ出かけないと。

 矢嶋はごそごそと獲物を積み込んでいる様子。

「兵士は最悪想定、これでね」

 検問に引っかかるのを想定はしていないのかしらん、と美由紀。

 一応、ここは矢嶋の戦士のカンを信じることに。

 今日も美由紀は矢嶋から借りた男モノを着込んだ。ショートヘアと相まってかなりワイルドだ。

 そろそろ出るぞという矢嶋の声と共に小屋の奥から姿を表したのは軽では無かった。

 まるで装甲車だ、ホントに戦地に向かうみたいだ。美由紀は心の中で呟いた。

 姿を現したのはハマー。軍用ではハンヴィー、いや逆に本来軍用車両で、その民生品がハマーだった。美由紀が装甲車、との感想を持ったのも故あることだった。

 ハマーは山道に乗り入れ、ゆっくりと降り始めた。

 理由は無かった。直観だった。それが、智英には判った。

 この一連の騒ぎの中心に、安藤がいる。

 東京近県を含め、学校も全て休校だった。テレビもまた全ての放送局が同じ内容を伝えていた。

 非常事態宣言発令、外出禁止、自動車使用禁止、携帯・固定電話使用禁止、ネット使用禁止・・・。

 智英は決然と立ち上がると、家族に宣言した。

「ちょっと、出かけてくる」

 両親と弟はあっけに取られた。

「出かけるって智英、表に出ちゃいけないんだよ?」

 両親の声は、今の智英には届かなかった。

 安藤が、呼んでいる。

「ごめん、キー借りるよ」

「ええっ?!」

 もちろん無免許運転だがAT車なので、遠出の際は家族の公認でステアリングを握る機会も少なくはなかった。

 自分を必死に呼び止める家族の声を振り切って、智英は戦場へと乗り出した。

 もちろん、本人にその自覚は無かったが。


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