ゴッタブ 8
ミドと話しながら、近くを探索することにした。ミドが言うには、食事になるのは草やキノコ、果物くらいらしい。肉か魚はないのか。できたら塩も欲しいぞ。
そういうことで、食料を求めて探索しようとしたのだが、一時間も探索すればすぐに化け物に遭遇ししてしまった。いや、こちらが見つけただけで、接触はしていないのだが。
「……でかい狼やら、猪やら、角の生えたゴリラみたいな奴やら……なんて森だ」
結局もとの隠れ家まで戻り、死の森の理不尽さに文句を言ってみる。すると、その文句に返事をするようにミドのお腹が音を鳴らした。グゥという可愛らしい音が鳴り、ミドが両手でお腹を押さえる。
「何か食べ物が必要だな。本当なら水も煮沸して飲みたいけど、文句も言えないし……」
そう呟き、川の方を眺める。
無意識に、何かないかとポケットを探っていた。すると、ズボンの右ポケットに何か硬い物があることに気が付く。普段、携帯電話をそこに入れていた為、違和感に気が付かなかったのか。
驚きつつ、ポケットの中の物を取り出した。
現れたのは四角い金属製のカードのようなものだった。銀色のカードで、模様と文字らしきものが描かれている。模様はツルや草をモチーフにしたものだ。
「……? それは何ですか?」
ミドも手に持っているカードに気が付き、首を傾げる。
「なんだろうね……あ、文字が読めそう」
返事をしつつカードを観察していると、文字が英語であることに気が付いた。
要約すると、初回記念アイテム。スーパーレア。ゴッドタブレット、といったものだ。その文章を確認し終えて、にっこりと微笑むおじいさんの顔が思い浮かんだ。
「……え? これがゴッタブ? 形が変わってるんだけど……」
やはりボケていたか。そう思いつつ、カードの表面を指でなぞってみる。
その瞬間、カードは眩い光を放った。
「な、なんですか!?」
驚くミド。そりゃ、いきなりカードが光り出したら驚くよね。一方、俺は光り輝くカードに目を奪われていた。
光はカードの形から少しずつ大きくなり、少しずつディテールまで変化していく。そして、徐々に光は薄くなっていった。
やがて、手元にはカードに代わり白いタブレットが出現していた。例のゴッドタブレットである。
「そ、それはマジックアイテム、ですか……?」
「まぁ、そんな感じかな?」
答えつつ、タブレットの側面に触れてみた。予想通り、馴染みのある場所に電源ボタンがあった。それに触れようとしたが、その前に画面に何か表示された。
白いおじいさんが歩いてきて、画面の真ん中で立ち止まる。どこかで見た顔だ。何をする気だと思って見ていると、画面に白い文字が浮かび上がった。
『おお、聡太よ。イリアスはどうじゃな? 空気が綺麗で良いところじゃろう』
このおじいさんめ。出てきて早々にイラッとさせてくれる。
こちらが何か言おうとする前に、おじいさんは肩を揺すって笑った。
『ファファファファ。冗談じゃ。ファファファファ』
おじいさんめ。絶対に許さん。
ゴッタブをへし折ろうかと思いながら睨んでいると、おじいさんが人差し指を立てた。
『さて、それでは本題じゃ。このタブレットはGOD tabletというアイテムじゃ。先に言っておいた通り、このタブレットでCOCのシステムが使えるようになっておる。なんと、UIはゲームのままじゃぞ。感謝するように』
そんな内容が表示されて、不覚にもおじいさんに感謝しそうになる。ゲームの機能をそのまま現実で使えるだと!? くそ、死ぬほどワクワクするじゃないか!
だが、本当ならCOCの最新作で遊べていた筈である。うーん、素直に喜べない。
「……あの、ソータさんはこれ、読めるんですか?」
「ん? あ、読めないのか。あれ? 会話はできてるのに、どうしてだ?」
「……?」
隣でタブレットの画面を見ていたミドとそんなやり取りをして、顔を見合わせる。
二人で首を傾げ合っていると、画面に新たな文字が浮かび上がった。
『それでは、街づくりのスタートじゃ! お主なら、GOD tabletを使いこなしてくれると信じておるぞ。頑張るんじゃぞーい』
そんな緩い言葉を最後に、おじいさんと文字が消えていき、黒い背景だけになった。
そして、ついに画面にcreate of citiesのロゴが浮かび上がる。
「おぉ! きたきたきた!」
「っ!?」
思わずテンションが上がって叫んでしまい、隣で見ていたミドが驚いて飛び上がる。
「あ、ごめんごめん」
謝りつつ、画面を見つめた。ゆっくりとロゴが薄くなっていき、様々な都市の映像が流れていく。しかし、COCの映像ではない。どちらかというと、中世ヨーロッパを舞台にした歴史ゲームみたいな映像だ。
「あ、い、今のは……もしかして、ヴェリン王国の街、だったような……」
驚きを隠せずに画面に映る映像を見ていたミドが、一つの街の風景を見てそう呟いた。
なるほど。ならば、これはCOCの世界の映像ではなく、この世界の町が順番に映っているのか。そう思うと、別の意味で楽しみが増えてくる。中には水晶でできたような不思議な城もあるし、洞窟を改造したような巨大な街もあったのだ。こんな不思議な街を超えるものが作れるだろうか。
そう思うと、COCで他のプレイヤーが作った町を見て、ワクワクしていた頃の気持ちが蘇った気がした。
ここから、ようやくチート能力の解放となります。
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