一緒に森へ 60
冒険者ギルドへ入ると、ニナが一番にこちらに気が付いた。掲示板の前で何か作業をしていたニナは手を止めて、こちらに振り返り口を開く。
「あ、ソータさん! 無事だったんですね!」
「あ、ははは……まぁ、大丈夫ですよ」
苦笑いと共に返事をした。掲示板の前まで移動すると、ニナがリリー達に気が付く。
「あれ? あまり見ない方々のようですが……」
「なんと、セルディカ神聖国? って国からきた冒険者の人です」
そう説明すると、ニナが目を瞬かせる。
「セルディカ神聖国の? め、珍しいですね。わざわざ、二つも国を超えて……」
驚くニナに、ラウムが笑いながら答えた。
「おお、お陰様で冒険者になって半年でBランクになったぞ」
「なんと、Bランクの冒険者でしたか。そんな皆さんが、どうしてソータさんと? あ、もしかして、ソータさんが危ないところを助けてくださったのでしょうか?」
ラウムとニコニコしながら話していたニナだったが、その言葉にフォルが首を左右に振って答えた。
「いえいえ! 助けられたのは我らの方でして……! あの巨大な鉄大鰐の脅威から救ってくれたのです!」
「え? ソータさんが、Bランク冒険者の方々を……? それに、鉄大鰐って、Aランクでも上位の魔獣ですが……?」
「お、大袈裟だなぁ。はっはっは……」
苦笑いしながらフォルにこれ以上喋らないように肩に手を置き、ぐっと力強く握った。そこでようやくフォルが口を閉じる。
「まぁ、三人が追われていたんで、代わりに囮になってあげただけですよ。はは」
誤魔化す為に少々無茶な言い訳をしてみたが、思いのほか効果があった。ニナは感動したように胸の前で手を合わせて、こちらを見上げてくる。
「そんな……新人冒険者のソータさんが、凶悪な魔獣から逃げる三人を救うために自ら……? とても、とても素晴らしい行いです! しかし、自分が死んでしまっては何にもなりません。ソータさんはまだ新人なのですから、自分の身が危険だと思ったら、そういったことは御控えください」
「りょ、了解です」
命懸けで他者を助ける聖人のように思われてしまった。いや、とりあえずゴッタブがバレるよりは良いか。どこでも町を作れる能力があるとバレれば、どうにか悪用しようという輩も寄ってきそうだ。後で、三人にしっかり口止めをしておこう。一応、最初に一言伝えておいたけど、あまり浸透していなさそうだ。
そんなことを思いつつ、ラウムと一緒に依頼書を見てみる。
「……やはり、森の近くということもあり、大型魔獣の討伐依頼も出ておりますな。逆に、小型の魔獣討伐依頼が少ないというのは面白いですぞ」
「なるほどー」
ラウムの解説を聞き、他の地域との違いに頷く。他にも採取できる資源なども違うようだが、今は保留だ。折角だから、どんな魔獣が討伐報酬が高いのかだけ確認して、冒険者ギルドを後にする。
何故か、ラウムたちにソータさんを宜しくお願いします、とお願いするニナ。保護者みたいである。心の中でニナママと呼ぼうか。
そんなこんなで、村の案内は速攻で終わってしまった。さて、明日には森に向かわねばならないのだが、この村であとやるべきことと言えば、荷台が欲しいくらいだ。外貨を得る為にも、マルサスが倒した魔獣の一部を村で売りたい。
そういった狙いもあり、再び商店へ向かった。本当なら一人で来るつもりだったが、何故かリリーたちも付いてくる。荷台は安い銀貨五枚ものを購入した。後は、明日にでも森のすぐ近くの家にまで移動し、マルサスを待つばかりである。
「……ソータ様はどこかに行かれるのですか?」
旅の準備をしていると、リリーからそんな質問をされた。
「えっと、ちょっと森の中に用事があって……」
そう答えると、フォルが目を輝かせて声を上げる。
「おお! そ、それは、やはり大樹の塔に……!」
「伝説の大樹の塔ですか……それは、見ておきたいですな!」
フォルの言葉にラウムもテンションを上げて同調した。しかし、リリーがそれを静止する。
「皆さん。ソータ様は賢者様ではないと仰いました。恐らく、ソータ様は静かに暮らしたいと思われているのでしょう。邪魔をしてはなりません」
リリーが気を遣ってそう言ってくれたので、フォルたちは口を噤んだ。それに苦笑して頷き、感謝を述べる。
「ありがとうございます。それでは、ここで」
そう言って別れの挨拶をしようと思ったのだが、リリーがこちらに振り向き、祈るような格好で口を開いた。
「ソータ様……決して、お邪魔はしません。なので、どうか我々も同行させてください。そして、少しでも良いので、お力をお貸しいただけたら、と……」
リリーはそう言って、真剣な顔で俺の目を見た。
「……困った」
ちょっとやそっとでは引き下がりそうにない。リリー達の目を見て、そんな感想を抱く。
「それなら、絶対に約束してほしいことがあります。良いですか?」
そう告げると、リリー達は表情を引き締め、真剣な顔で頷いたのだった。




