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都市開発スキルで楽々異世界街作り!  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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【別視点】 リリー 58

【リリー】


 小さくとも、セルディカ神聖国は平和だった。隣国であるティアバルナ帝国は脅威だったが、相手に有利な貿易と密な外交を続け、攻め込まれることなく今日まで過ごしている。


 だが、そんな状況が崩れかかっていた。国土の小さなセルディカ神聖国において、資源は貴重であり、足りない物は隣国との貿易でどうにか賄ってきたが、その均衡が崩れてしまったのだ。


 ティアバルナ帝国との関係の悪化である。国境に騎士団を配備するようになった帝国の為に、我が国でも多くの騎士団を国境に配備する必要が出てしまった。その防衛費は通常の五倍以上であり、半数は農民から徴兵している状態だ。


 それが半年続いただけで、我が国は困窮してしまった。各領地の見回りの為の騎士団も減っている為、魔獣からの被害も増えることとなる。こうなってはジリ貧だ。各領地からの多くの苦情や意見が王家に集まり、食料が足りずに各地で暴動が起きるようになってしまった。


 ここで内乱が激化すれば、確実にティアバルナ帝国の手が聖都まで届くことだろう。かといって、近隣諸国でティアバルナ帝国に相対してくれる国は存在しない。誰でも祖国が最も大事なのだ。


 ならば、どうするべきか。王族である私が、セルディカ神聖国を守るためには何をすれば良いのか。最も現実的なものは、自分自身を使って政略結婚をすることだろう。しかし、既にティアバルナ帝国との関係が悪化している中、それは難しい。対して、ティアバルナ帝国の属国になるというのも選択できない。


 そこで思い出したのが、森の賢者の逸話だ。過去、多くの国の命運を変えてきた、古の大魔術師。これがただの伝説ではないという証拠の品も、我が国には伝わっていた。


 もちろん、いるかも分からない森の賢者を探す旅になど出られる筈がない。第一の候補はヴェリン王国との同盟だ。ルカス王国はティアバルナ帝国と隣接している為、同盟は結んでくれないだろう。しかし、ヴェリン王国ならば、すぐにはティアバルナ帝国に攻め込まれないはずだ。だから、同盟を結ぶとしたらヴェリン王国だと思っていた。


 できるかぎり、国内の騎士達は使わない方が良い。だから、私は冒険者を十人雇い、わざと遠回りをしてヴェリン王国を目指した。死の森の傍は静かで、人の気配もまったくない。それだけ恐ろしい森なのだと思い、恐くなった。


 だが、そのお陰でティアバルナ帝国にも築気づかれず、移動することができている。そう思って、順調に三ヶ月近くを過ごし、ようやくヴェリン王国の領地へと辿り着いた。


「おお! 国境を越えましたぞ!」


「……大きな声を出さないでください。今、我々は密入国者なのですから」


 ラウムにそう口にした瞬間、すぐ近くの森で二つの光が現れた。唸り声と、木々をへし折る破壊音が鳴り響く。


「な、なんと……!? こんな森の浅場で……!」


 ラウムが驚愕し、一歩二歩と後ずさる。遅れて、フォルが目を見開き、その大きな影を指差した。


鉄大鰐(ブラックガビアル)……!?」


 フォルはそう叫んでから、泣きながら振り返る。


「に、逃げます!」


「はは……っ!」


 指示を出すと、御者席に乗っていたフォルが思い切り馬の手綱を引っ張った。急な方向転換に、馬車が大きく傾く。そこへ鰐が接近してきた。馬が驚いて前足を上げ、その場で反転する。馬車の向かう先と馬の移動先がズレてしまい、馬車はその場で転倒した。


「きゃあっ!?」


 荷台から投げ出され、地面を転がる。


「大丈夫ですか!」


 フォルとラウムがすぐに駆け付けてきた。その目の前で、森から一歩踏み出してきた大きな黒い鰐が、たった一口で馬車を粉々に破壊する。手綱は切れ、馬が森に沿って逃げ出してしまった。


 その恐ろしい破壊力に、背筋が寒くなる。


「い、いけません! これは、戦える相手ではない……っ! 早く、逃げないと!」


 指示を出しながら立ち上がり、フォルとラウムを連れて走り出す。そこからはがむしゃらで覚えていない。気が付けば、坂道を転げ落ち、ソータ様と呼ばれる方の家に辿り着いていた。


「えっと、皆さん。今日は疲れたでしょうから、ゆっくり休んでから、明日プレト村へ向かいましょう。それでは、お風呂の使い方から教えますので……」


「え? お風呂?」


 ソータ様は不思議な人物だった。こんな森の近くに、村から離れて一人で住んでいる。そして、その一人で暮らす場所には見たこともない道具が並び、水やお湯をふんだんに使うことができている。


「……あぁ」


 頭の中は混乱したままだったが、湯船につかり、温かいお湯で全身が温もるのを感じて、どうでも良くなった。こんな奇跡のような家に住むのは、森の賢者様以外にいないではないか。


 たとえ、そうでなくても、ソータ様は強大な魔術師か、最上級の冒険者の一人だろうと推測される。


「……どうにか、ソータ様を味方に……」


 私は湯船に肩まで浸かり、目を細めてそう呟いたのだった。

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