秘密基地 52
「使い方は魔力鍵と丸錠を近付けるだけです。この鍵と錠がセットになっているので、他の魔力鍵では開けることができません。紛失しないようにお気をつけください」
「ありがとうございます」
ニナに説明を受け、大喜びで鍵を受け取る。カード状の代物がくるかと期待したが、渡されたのは丸い石のような代物だった。特に装飾が凝っているというわけでもなく、石の表面に魔法陣のような溝が彫られているだけである。
好奇心で石と錠を見比べていると、ニナは笑いながら答える。
「そちらは魔石に魔術刻印を施した鍵ですよ。魔力が蓄積されているので、後十年以上は大丈夫かと」
「な、なるほど」
頷きつつ、錠に鍵を近付けてみる。先ほどと同じように、錠がほんのりと赤い光が放つ。
「あ、今使うと、開いた状態で固定されてしまいます。もう一度鍵を近付けてもらって良いですか?」
「固定?」
疑問を持ちつつも、言われた通りに石を錠に近付けてみた。すると、再び錠が赤い光を放つ。それを確認して、ニナは扉を動かした。
「はい。問題ありません。それでは、私はこれで冒険者ギルドへ戻らせていただきます。また、何かありましたら会いにきてくださいね。出来る限りのお手伝いをいたします」
「おお、有難い! けど、そんなに良くしてもらって良いのでしょうか」
恐縮しつつ、ニナにそう尋ねる。すると、ニナは困ったように笑いつつ、拳を握って親指を立てた。何故、サムズアップ。
「お任せください。私は冒険者ギルドの職員ですからね。それに、ソータさんみたいに人柄の良い冒険者にはあまり会ったことがありません。そんな方が亡くなってしまったらと思うと、少しでも協力してあげたいと……」
「……ありがとうございます。稼げるようになったら色々とお返ししますね!」
そう答えると、サムズアップをしたニナが一礼して微笑んだ。
「はい。期待しております。ただ、無理はしないようにお気をつけください。それでは」
それだけ言って、ニナは去っていった。いや、本当にありがたいことだ。初めての村で緊張していたが、幸運にも出会いに恵まれている。
さて、場が整ったからには、早速実験をしていこう。
まずは、マップには記載されているのに外部扱いとなっているこの村だ。COCでは存在しなかった状況であり、今後の為にも無数の検証が必要なのは間違いない。
外部扱いになっているということは、この村内で何かをすることはできないのか。
そう思いつつ、倉庫に入ってからタブレットの画面に指を置いた。地図には森から村までの全てが表示されている。小さな点みたいな村だが、それを拡大していくと村の全体像に変わった。その村の中で、青い丸が点滅している。現在地だ。
「まぁ、CPはあるからね。少しくらい消費しても良いだろう」
そう呟きつつ、地下室を設置しようとする。しかし、タップしても反応しない。
「あれ? やっぱり村の中に建物を勝手に作るのは駄目ってことかな?」
そう思って唸りながら地図を睨んでいたのだが、不意に気が付く。住居は、道に沿ってでないと建てられない。それがCOCのルールだ。
倉庫から顔を出し、周囲を確認する。ちょうど倉庫が村の端だったからか、人の気配はない。
「……やってみるか」
これまではゲームの癖でアスファルトの道路を設置していたが、村の中だと物凄く目立つだろう。なので、最安値の砂利を敷いた道にした。個人的には気に入らないが、効率は良い。道路のメニューから、目的の砂利道を選択して見る。
すると、倉庫の前に砂利道が出現した。
「おお、出来るじゃないか!」
思わず、大きな声が出た。これはワクワクが止まらない。地下の住居を選択し、実行ボタンを押してみる。結果はもちろん、成功だ。地響きと共に、倉庫の入り口から地下へと続く階段が現れ、降りてみるとあの上にスライドする扉があった。
急いで階段を上り、倉庫の周りを確認してみる。幸運にも、倉庫の外側から見ても変化は無いように見えた。これなら、地下の家がバレることはないだろう。
そう思い、倉庫の扉を内側から閉めて、施錠してみる。赤い光は施錠の証。安心である。
赤い光を確認しつつ、階段を下りて行く。電気はなくとも、玄関だけは開けることができる。住民登録もそうだが、どこまでが電気を必要としていて、それ以外は不要となっているのか。
大きな矛盾だが、確かにCOCでは家を作れば電気や水がなくとも住民は住み、全力で不満を述べてくる。そのまま放置していればすぐに廃墟になってしまうが、その間は電気も水もない筈の家に住んでいるのだ。そういったゲームのシステムを考えるなら、矛盾はないと言えるだろう。
「……まぁ、考えても仕方ないよね。ポイントが大量に手に入ったら、森から上下水道と地下に送電線を通せば、この家も完全に機能するし」
そう言いつつ、出来たばかりの家の中に入り、暗いリビングで椅子に座った。
「……流石に暗すぎるから、ランプだけでも買ってこようかな」
暗闇の中、小さくそう呟き、軽く欠伸をしたのだった。




