同情 49
部屋から出て、酒場……いや、冒険者ギルドの受付の方へ戻る。すると、ニナがこちらに気が付いて笑顔で歩いてきた。
「あ、元気になられました?」
「ん? まぁ、元気は元気ですけど」
良く分からない質問に曖昧に答えていると、すぐにギルド長も歩いてきた。
「元気を出せよ、ソータ。人間、魔力量じゃないからな。お前には……えっと……」
「元気づける言葉を決めてから来てもらって良いですか?」
「お、おお! いや、頑張って考えてきたぞ。ほら、ソータは頭が良いよな! 筆記試験の結果はほぼ満点だ! 冒険者登録に来た人の一割以下だぞ?」
そんなやり取りをしていると、先ほどまで騒いでいた酒飲み達が神妙な顔つきでこちらを見た。
「……魔力最低クラスだとよ」
「まじかよ」
「なんて新人が出てきちまったんだ……」
空気はお通夜である。シンと静まり返る冒険者ギルド内で、顔に大きな傷がついた厳つい大男がこちらへ歩いてきた。
「新人」
「あ、はい」
返事をすると、大男は壁の方を指差した。
「……いいか。あれが依頼を貼っている掲示板だ。俺たちは、必ず一番安全な依頼を残しておくようにするから、それを選んで働け。それなら、死ぬことはない。いいか。冒険者を諦めるなよ? 剣……いや、その細さなら弓が良いか。しっかり練習しておけ」
大男がそう告げると、後方で酒を掲げながら髭のおっさんが声を張り上げる。
「そうだ! 負けるなよ、新人! 困ったら俺に言え! だいたいここで酒呑んでるからよぉ!」
「お前じゃダメだろ! 俺たちなら月に一回はパーティーに加えてやるぞ!」
「ああ? お前らは中型魔獣狩りがメインだろ!? 新人が死んじまうじゃねえか! おい、俺のとこで働け! 護衛が主だからよ」
気が付けば、酔っ払いの冒険者たちが俺を慰める流れになっていた。いやいや、有難いが切なすぎるぞ。これ以上傷口を抉らないでくれ。
そんなことを思っていると、新たな人物が扉を開けて現れた。レフター達だ。
「お、ソータ。終わったか?」
「Fランクでしょ?」
「まぁ、そりゃあ普通はFランクだよな」
レフターに続き、セルカとサーディーが笑いながらそんなことを言って入場してきた。その言葉に文句を言おうとしたところ、先に酔っ払い達が反応する。
「おい、レフター!」
「お前ら、人の心が無いのか!?」
「魔術ってのは才能が全てなんだぞ!?」
物凄い勢いで野次が飛び、レフター達は目を白黒させた。
「俺は何も言ってねぇだろうが!?」
「な、なになになに?」
「……なんで、あの荒くれ者共がソータの親戚みたいになってるんだ」
驚きつつ、三人はこちらへ歩いてきた。
「どうせFランクですよ、どうせ」
口を尖らせてレフターにそう告げると、困ったような笑いが返ってきた。
「は、はは、悪かったよ。あの猪で予想外に良い金になったから、少し報酬を分けてやる。それで許せ」
レフターはそう言って、俺の手に何かを握らせた。何を握らせたのかと確認したところ、それはどうやら銀貨のようだった。
「えー、あの大猪で銀貨一枚?」
冗談でそう言ったのだが、冒険者ギルド内は大紛糾となってしまう。
「おいおいおい、レフター……」
「レフター、セコいんじゃねぇか?」
「赤大猪だろ? 金貨十枚いくだろ、多分……俺なら銀貨一枚は無いな」
「ってか、レフターって口臭くね?」
「もうセコターで良いだろ。改名しろ」
はっきりと聞こえる声の大きさで酔っ払い達がレフターに文句を言う。途中からただの悪口になっており、レフターは拳を握って憤慨していた。
「お、お前ら……誰が言ったか覚えたからな? 絶対に許さんぞ」
静かに怒るレフターに笑いつつ、皆に向かって声を掛ける。
「冗談ですよー! レフターさん達は危ないところを助けてくれたんで、どっちかというと俺が金を払うべきところで……」
そう言ってフォローしようとしたのだが、それに酔っ払いは悪ノリしてきた。
「うわ、なんて謙虚な新人なんだ……」
「それに比べてレフ……間違えた、セコターは……」
「おい、罰としてセルカが脱げよ」
「わっははは! 良いぞ! よく言った!」
そんな悪ノリに、セルカの目じりが吊り上がる。
「……ちょっとギルドの建物だけど、燃やして良い?」
「駄目だ。村の外で暗殺するぞ、あいつら」
セルカが物騒なことを口にすると、レフターが更に物騒なことを言った。恐ろしいやり取りである。二人の戦闘能力を考えると可能であるから恐ろしい。
「はーい! ランクカードができましたよー? ソータさんどうぞー」
そこへ、のんびりした声でニナがそんなことを言った。振り向くと、テーブルの上には鉄っぽいプレートが置かれていた。小さなプレートだ。ドッグタグみたいである。
「これがFランクのカード?」
「はい。本人のお名前と魔力量、登録をした国の名称も記載されています。Dランクになったらブロンズ。Cランクになったらシルバー、Bランクになったらゴールド、Aランクになったらミスリル製のカードになりますよ」
「へー、格好良いなぁ、ミスリル製のカードとか見てみたいけど……」
素直にそんな感想を口にしただけなのに、冒険者ギルド内は再びお通夜のような空気が戻ってきた。
「……そ、そうだな。一生、見ることはないだろうし……」
「おい、そんなこと言うなよ」
「見るだけなら大丈夫だろ。まぁ、本人は、頑張ってDランクまでかもしれないけど……」
そんな声を聞き、レフターが眉根を寄せて怒る。
「お前らも大概なこと言ってんじゃねぇか!」
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