さらなる施設と外の世界 39
翌日、少し涼しい朝の空気に自然と目が覚める。欠伸をしつつ、周りを見回してみた。もうすっかり慣れて熟睡するミドの姿。そして、奥のベッドにはカラビアの姿もあった。その姿を見て、ホッとする。
「とりあえず、三人で過ごすことはできそうかな」
ミドの例もある。カラビアがトイレに閉じこもってしまうことも考えた。だが、とりあえず、ベッドで寝るというのはクリアできたようだ。
「……あ、お、おはよう」
と、そこへ恐る恐るといった様子の朝の挨拶が聞こえてきた。
「おはよう。早いね」
驚きつつ、笑顔で返事をする。それに、カラビアが小さく頷いた。
「は、はい……ね、寝てなかったから……」
「え? 寝てないの?」
カラビアの言葉に思わず聞き返す。すると、カラビアは慌てて首を左右に振る。
「あ、ね、寝てた。ちょっとだけ、寝たと思う」
「いやいや、嘘まで吐かなくて良いから」
怒られると思ったのか。カラビアが変なことを言う。それに苦笑しながら、身体を起こした。
「ベッドは寝にくかったかな?」
そう尋ねると、カラビアは首を左右に振る。
「い、いえ……その、寝たら、全部、無くなっちゃいそうで、寝れなくて……」
カラビアが涙目で理由を言い、こちらを見た。不安そうな顔だ。
「大丈夫だよ。だから、眠かったら寝てて良いからね」
安心できるように笑いながらそう答え、ベッドから降りる。とりあえず、朝ご飯を作ろうかな。そう思ってキッチンの方まで移動したのだが、後ろからバタバタと足音が聞こえてきた。
「ご、ごめんなさい。寝坊しました」
現れたのはミドだった。こちらも物凄く焦った表情である。もうだいぶ慣れてくれたかと思ったが、まだまだミドも奴隷生活が抜けずにいるようだ。
「朝は別に誰が準備するなんて話はしてないから、ゆっくり寝てて良いんだよ」
笑いながらそう言い、料理の準備をした。すると、ミドは隣に来て背筋を伸ばす。
「い、いえ、洗い物を手伝います」
「そう? ありがとう」
せめて洗い物を手伝うと言ってくれたので、それは助かると了承した。これで俺の仕事は肉を焼くだけだ。嬉しい。
そんなこんなで手早く調理を済ませ、洗い物をしているミドにお礼を言いながら寝室へと戻った。
「カラビア、ごはんだよー……って、さん付けを忘れてた」
そんなことを一人で呟いて苦笑していると、ふと、カラビアが動かないことに気が付く。見てみると、完全に眠りについてしまったカラビアの姿があった。
「……やっぱり、疲れてるよね。おやすみ」
笑いつつ、静かにそう言って部屋の外へ出る。せっかく作ったけど、朝食はミドに二倍食べてもらうとしよう。また起きたら作ってあげようかな。
そんなことを考えつつ、ダイニングテーブルまで移動し、椅子に座った。
「カラビアが寝ちゃったから、ミドが朝食二倍食べて良いよ?」
「え? そ、それは、食べきれるか分かりませんが……」
「じゃあ、半分こしようか」
「は、はい! ありがとうございます」
嬉しそうに笑って食事を始めるミド。その様子に微笑みつつ、タブレットを指で触り、画面を開いた。
少し行儀が悪いが、誰からも咎められないのでタブレットを操作しながら食事を進める。おお、このお肉も美味しい。鶏肉っぽい。
そんなことを思いつつ、画面に表示される数字を見た。何があったのか分からないが、CPは九百になっていた。ふむ、ザガン族の村を改造するのに結構使ったから、残りは七百の筈である。まぁ、多いに越したことはないが、どこで二百増えたのか。
首を傾げつつ、次のアクションについて考えた。本来なら、勝手に外部と接続した道路や線路、航路などから人口が増えていき、区域を設定するだけで家や店が建ち並ぶはずだ。しかし、我が村は森の中にあり、どことも接続されていない。陸の孤島である。
もちろん、CPはバカみたいに消費するし、維持費もかかるが、空港の設置なども可能だ。ただし、今はCPが足りないし、赤字経営間違いなしである。
「こうなったら、森の外に出てみるしかないよなぁ」
ザガン族の村がどうして我が町の一部として加算されたのかは不明だが、現状では人口が増える兆しはない。そう思っての発言だったが、それを聞いたミドがギョッとした。
「も、森の外、ですか?」
震える声で、ミドがそう口にする。そういえば、逃亡した奴隷はひどい目に遭わされるとミドが言っていた。
「大丈夫。マルサスさんにお願いして森から出てみるよ。それで、すぐに戻ってくるから」
そう告げると、ミドはひどく不安そうな顔になった。いなくなってしまうかもと思っているのか。それとも、鬼人族であるマルサスが一緒だと危ないと思っているのか。
しかし、どちらにしろ、一度森の外へ出る必要はあるのだ。
「……ミド。街で売れそうな代物ってあるかな?」
CPを稼ぐ為に、俺は外部との取引を行うと決めた。
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