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ミドの気持ち  27

 朝が来て、聞きなれない電子音が鳴った。枕元に置いていたタブレットに手を伸ばし、画面を指で触れてみる。画面は地図の背景にモザイクのようなものがかかり、中心に大きな溝のイラストがあった。それを、右から左に指をスライドさせてなぞる。


 小さな音がして、モザイクのかかっていた地図がハッキリと表示された。ロック画面が解除されたのだ。


「ふぁ……目覚ましにはもっと良い音があるかな?」


 昨晩セットした目覚ましアラームの音について呟き、上半身を起こす。昨晩のテンションは少しでも明るい気持ちで起床したいと思い、テーマパークのパレードみたいな音楽に設定してしまったが、今はもっとゆったりとした音楽にすれば良かったと後悔している。


 寝ぼけたまま目を擦り、周りを見てみた。隣のベッドで寝ているはずのミドが見当たらない。もしかして、外に一人で出たのだろうか。自分よりは慣れているだろうが、それでも不安である。


 ベッドから這い出して、寝癖もそのままに寝室から出た。うろうろと見て回ると、台所の椅子に腰かけたミドの姿があった。どこか暗い表情をしている。


「おはよう。眠れなかったの?」


 気になった為、朝の挨拶もそこそこに尋ねてみる。すると、ミドは複雑な表情で顔を上げた。


「……おはようございます。実は、昨日から寝てなくて……」


 ミドのその言葉に、成程と頷く。昨晩の自分と同じような気持ちだったのかもしれない。そう思って、優しく声を掛けた。


「俺も、昨日は中々眠れなかったんだ。カラビアさんって人のことが気になってね」


 そう告げると、ミドは顎を引いて俯く。


「……私も、カラビアさんと同じでダークエルフの仲間ではないと追い出されました。そして、十年以上奴隷として働いていました。でも、私はソータさんに出会えました。こんな、夢のような暮らしが……でも、カラビアさんは今も……」


 少しずつ、ミドの声が震え出した。悲痛な気持ちが声からも伝わってくる。自分の過去を思い返し、カラビアに同情しているようだ。実際に辛い経験をしてきた分、俺が感じているよりも重い感情だろう。


 子供の時からの十年以上の奴隷経験なんて、想像もできない。なんと声をかけて良いかも分からずにミドの顔を見ていると、不意に真剣な顔でこちらを見上げた。


「……ソータさん。カラビアさんを、助けることはできませんか?」


「それは、多分マルサスさんも同じことを考えてると思うよ。ただ、助けることができるかはまだ分からないかな」


「え?」


 予想外の答えだったのか。ミドは目を丸くして固まった。少し端的に話し過ぎたか。まぁ、実際にその現場になってみなければ分からない。まだ、マルサスから正式に頼まれたわけではないのだ。


 それこそ、今日の昼頃にまたマルサスが話をしに来るとのことなので、そこでもう一度詳しく尋ねてみようと思っている。


「……とりあえず、朝食を食べようか」


 気持ちを切り替えてそう告げると、ミドは曖昧な表情で頷いた。


「少し重たい朝はパーティー気分の朝食で盛り上げよう! 朝からステーキだ!」


 暗い雰囲気を吹き飛ばすべく、早朝から肉を食らう宣言を行う。ミドは目をパチクリしていたが構わずに突き進むのみ。


「譲ってもらった肉は~……この赤身っぽいのが良いかな」


 そんなことを呟きながら肉を選び、キッチンへ。フライパンを準備して加熱を始めた。肉はまな板で下拵えである。包丁の背で叩き、肉の繊維を潰して柔らかくなれと念じる。もしかしたら筋入り肉かもしれない。途中でそう思い、切り分けてみることにした。


 筋ってどこやねん。


 気が付いたらサイコロステーキ風になっていた。まぁ、良いだろう。


 フライパンが十分に加熱されたので、肉をころころと入れる。肉が焼ける音と匂いが一気に室内に広がり、朝なのにお腹が空いてきた。


「こんなにお肉を食べられるなんて……」


「ミドは多分成長期だから、いっぱい食べるんだよ」


「成長期、なんでしょうか……?」


 首を傾げるミド。確かに、エルフの成長期がいつなのかは分からない。しかも、ミドはハーフダークエルフだから、通常のダークエルフとも違いそうである。


 そんなことを思いながら、焼けた肉をお皿に取り分ける。ミドが手伝おうとするので、洗いものだけお願いすることにした。ミドは恐縮しているが、正直に言うと料理よりも食器洗いが面倒くさいので、こちらの方が申し訳ない気持ちである。


「美味しい……っ!」


「うん、美味しいね」


 肉は牛肉に似ていた。思ったよりクセは無く、旨味がしっかりとしたお肉だ。脂は少なめだというのに、硬すぎることもなく、食べやすい。


 二人で美味しい美味しいと喜んでいると、インターホンが鳴った。




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