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嘘くさい 2

 何処かも分からない場所で、見知らぬおじいさんに「ちょっと待っていろ」と言われたので、黙って待つ。本当に何がなんだか分からない。あと、おじいさんが何をしているのかと思ったら、スマホゲームだったことに気が付き、更に何とも言えない気持ちになる。


 もしかして、ゲームが終わるまで待たせられてるの? いや、ゲーマーとしてその気持ちは分かるが。


 仕方なく、地面にあぐらをかいて座ったまま横に揺れてみる。暫くして、おじいさんは鼻から息を吐き、唸った。


「えぇい、煩いのう」


「え? 怒られた?」


 静かに待っていたのにおじいさんが文句を言った気がする。いや、気のせいか。そう思ったが、おじいさんは批難するような目でこちらを見ている。


「お主が奇妙な動きをしておるから、気になって集中できんかったわい。ほれ、負けとるじゃろ?」


 そう言って、おじいさんは椅子を回転させ、こちらにスマートフォンの画面を見せるように持ち直した。


「あ、デストラやって……いやいや、ちょっとどころじゃなく負けてるじゃないの! 絶対に俺のせいじゃないよね!?」


 各自、攻撃側と防衛側に分かれて攻防戦を繰り広げるゲームなのだが、スコアは圧倒的におじいさんの負けである。集中できたかどうかの話ではない。


「いや、集中できたら勝ててたんじゃ。間違いないぞい」


 おじいさんは口を尖らせて反論する。なんという負けず嫌い。小学生じゃないんだから。


 若干呆れつつ眺めていると、おじいさんは咳払いをしてスマートフォンを机の上に置いた。


「……まぁ、良いじゃろう。そろそろ本題に入るとするかの」


「いや、本題も何も、まったく状況が分からないんですが……」


 そう答えると、おじいさんは腕を組んで頷いた。


「そうじゃろうな。仕方ない。この十二柱の一人であるわしが教えてやるぞい」


「十二中? 第十二中学校の出? けっこう人口の多い地域だったんですね」


「馬鹿もの。柱じゃ、はしら。知らんのか? 十二柱じゃぞ。偉いんじゃ」


 おじいさんは良く分からないことを口にして、椅子の上で首を傾げている。偉いらしいが、偉くは見えない。むしろ、ちょっと物忘れが激しくなってきたのではないかと心配になる。


 そんなことを考えていると、おじいさんは溜め息を吐いてパソコンを指差した。


「わしは商売や競技を司っておるのでな。最新のゲームも網羅しておるのじゃ。まぁ、アクションゲームは苦手じゃがな」


 そう言われ、パソコンのディスプレイに目を向ける。そこに映し出されているのは、間違いなくCOC最新作だった。そして、二つのディスプレイの内、もう一つの映像に目を瞬かせる。


 片方はCOC最新作のオープニング映像だが、もう一つはCOCの前作だった。しかも、画面に表示されているのは空中都市、フェルスシティーだったのだ。


「あ、フェルスシティー」


 そう呟くと、おじいさんは軽く頷いてディスプレイを指差した。


「わしが作ったんじゃよ」


「え? フェルスシティーを?」


 驚いて聞き返すと、おじいさんは満足そうに笑みを浮かべた。


「そうじゃよ。尊敬したかの?」


「本当ならガチで尊敬します」


「疑うんじゃないわい」


 またおじいさんは口を尖らせて文句を言う。どうやら本当らしい。しかし、こんな近未来都市をおじいさんが作ったとは思えない。誰か、協力者でもいるのだろうか。


「また失礼なことを考えておるな? まぁ、良いわい……わしはこのゲームが好きでな。ゲームのシステムや設備に制限がある中で頭を使って街を作るのが楽しかったんじゃ。じゃが、最新作であっさりと空中都市建設キットのようなものを付け足してしまいおった。ものすごく悲しい」


「あ、それは確かに……」


 色々と考え、工夫して作られたであろうフェルスシティー。それを誰でも作れるようになってしまうと、製作者としては悲しい気持ちになるのかもしれない。自分が作れなかった側だから、再現できるなら嬉しいけどね。


 少し同情しつつおじいさんを眺めていたが、すぐに気を取り直して顔を上げる。


「まぁ、そんなこんなで最新作への意欲が少し減ってしまったんじゃ。しかし、世界中のプレイヤー達は純粋に最新作を楽しみにしておる。それが羨ましいのじゃ」


「……ふむふむ」


 良く分からないが、話は聞いていますと相槌だけ打っておく。おじいさんは何の話をしているのだろうか。


 そう思っていると、おじいさんは雰囲気を少し変えて、こちらを真っすぐに見てきた。


「ちなみに、世界で一番COCの最新作を楽しみにしておったのはお主じゃ」


「え? 世界一?」


 突然の言葉に、目を丸く見開いて驚く。世界一楽しみにしていたのか。いや、自信はあったが、他人にそう言われるとビックリである。


「楽しそうなお主を見ていると悔しくなったので、ゲームではなく、わしが作った世界で街を作らせてみようと思ってな。どうじゃ、面白そうじゃろう? 特別にCOCと同じシステムを使うことを許可するぞい」


「ん? ちょっと意味が分からないんだけど……」

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