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鬼人族の襲来 18

「た、大変だ!」


 ミドが慌てて地下への階段を駆け下りる。それを見て、こっちの方が驚く。


「え? いや、まだ川の向こうにいるから……」


 ミドにそう言いながら川の向こうへ視線を戻した時、風力発電設備の横には二人しか立っていなかった。あれ? 三人は幻だったのかな?


 そう思った直後、真正面に鬼人族達が現れた。空中から降りてきたような気がしたが、まさか空が飛べるのか。


 驚きのあまり、フリーズしてしまう。その状態になったお陰で、何が起きたのか理解ができた。なんと、残った二人の鬼人族も、パッと姿を消したのだ。僅かに残像が見えた気がして顔を上げると、大柄な人影が宙を舞う光景が目に入った。


 そして、こちら側の岸に残っていた二人も降り立った。それなりに大きな川だったはずだ。その川を、五人はいとも簡単に飛び越えてきたのだ。それを見て、ようやくミドの言っていた意味が分かった。人間が跳躍で飛べる距離ではない。あんな異常な筋力を持った存在と戦えるわけがないではないか。


 そう認識した瞬間、慌てて階段を下りて階段下で待っているミドの下へ走った。ミドは顔面蒼白でカタカタと震えている。


「やばい、やばい、やばい!」


「は、はいぃ……っ!」


 駆け下りて、手のひらを叩きつけるような勢いで壁を叩いた。きっちりと黒い板を叩いたので、吸い込まれるように扉がスライドして部屋への入り口が開かれる。ミドと一緒にヘッドスライディングで飛び込むようにして中に入り、地面を転がって階段の方向へ顔を向けた。


 ちょうど、天井から扉が下がる瞬間だ。残り五十センチほどで完全に締まるが、隙間から見る限り、階段にはまだ誰の足も見えない。良かった。


 そう思った直後、完全に締まる瞬間に扉の下部から手が現れた。頭上から降りてくる扉を手で掴んでいる。


「うわ!?」


 思わず悲鳴を上げて、扉の方へ走った。反射的な行動なので、自分でも驚くほど素早く行動できたと思う。


「不法侵入! 不法侵入!」


 呪文のように叫びながら、扉を掴むゴツい手を蹴りつける。これには流石の鬼人族でも堪えたのか。手を放してくれた。ようやく扉が完全に締まって安全な我が家が戻ってくる。


 そう思い、ミドと一緒にホッと息を吐いて胸を撫でおろした。


「よ、良かった」


「……怖かった、です」


 二人でそんなことを言っていると、扉の向こうで物音がした。扉を開けようとしているのか。硬いものが扉にぶつかる音や、がりがりと何かを削るような音がする。


 気になってタブレットの画面をタップしてみると、十秒か二十秒ほどでCPが一だけ消費されてしまった。いかんぞ。扉だけでも修繕にポイントが使われている。


「ストップ! やめてください!」


 扉に向かって大きな声で叫ぶ。あんな驚異的な身体能力を持つ者達が、金属製の武器を持って暴れたりしたら、大きな施設であっても壊れてしまうかもしれない。


 そうなると、物によっては百とか二百の損失だ。毎日の増加量を考えると確実に赤字である。


 言葉が通じるかも分からなかったが、咄嗟に静止しようと声を発していた。


 すると、予想外の声が返ってくる。


「……何者だ。この周辺を我がザガン族の縄張りと知ってこんなものを作ったのか?」


 と、そんな驚くべき言葉が聞こえてきた。いや、怒っている様子ではない。本当に疑問を持っているといった様子だ。まぁ、警戒心のようなものは物凄く感じる。そりゃあ、こんな謎の建物やら設備やらがあれば警戒するだろう。


 そもそも、鬼人族とは共通の言語を使うのか。いや、待て。あのおじいさんから全ての言語を理解するという異能を貰った可能性もある。


「……インターフォンを使う日が来るとは」


 小さく呟きつつ、玄関側の壁に設置されたディスプレイに触れた。すると、ディスプレイには白い髪の大男が映った。大き過ぎて画面ギリギリで顔が確認できる。角と牙はあるが、思ったより理知的な表情をしていたホッとした。歯を剥いてギリギリしていたら泣いていたかもしれない。


「えっと、ザガン族さんで良いですか」


 インターフォンのマイクボタンを押してそう告げると、画面に映る鬼人族の男がギョッとした。


「……やはり、魔術師か」


 小さくそんな言葉を呟いている。どうやら魔術によるものだと思われたようだ。気になることがあったので、マイクボタンから手を放し、ミドに顔を向ける。


「……鬼人族って魔術師はいないの?」


「わ、分かりません」


「そうだよね」


 そんなやり取りをしていると、画面の向こうから声がした。


「我はマルサス。ザガン族の戦士だ。お前は何者だ?」


「あ、安藤奏太ですー。よろしくお願いしまーす」


 自己紹介されたので、きちんと挨拶を返す。あ、笑顔で返事をしたけど、向こうにこっちの顔は見えていないか。


「……アンドー、ソータ。人間か」


「あ、人間だけど、別にどこの国とか関係ないから、あまり気にしないでもらえると助かります」


「……国には属していない、と? ならば、ソータは森の魔術師か」


「ん?」


 良く分からないことを言われて、思わず首を傾げる。





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