CPを稼ぐには 15
タブレットの画面を見ると、そこには二百五十五という数字が記されている。CPの残量だ。昨日の夜は残り二百三十くらいだったので、二十五増えたことになる。いや、今しがた風力発電設備の修理で五ポイント消費されてしまったので、本当なら三十増えていたと考えるべきか。
COCでCPを稼ぐ方法は幾つかある。一定数の人口に到達した際に得る人口ボーナスポイント。特殊な条件をクリアして表示される、ユニーク建築物を建てた時にもらえる特殊建築ボーナスポイント。後は、町のサイズが一定のサイズまで拡大した際にもらえるエリア拡大ボーナスポイントなどもあったか。
そして、普段もっとも安定してもらえるポイントが、現在住んでいる住民の数で毎日もらえる通常ポイントと、公共施設や特殊建築物などで得られた利益から換算される経済ポイントの二種類だ。現在、利益などは一切でていないので、三十ポイントの通常ポイントを得ていると考えられた。
住民数が百人を超えるまで、毎日もらえる通常ポイントは五十ポイントで固定されるので、今は自分とミドの二人しかいないものと思われる。ただ、先ほどの修理によるマイナスとあわせて結果二十五ポイントしか増えていないということは……
「……もしゲーム通りなら、就寝後から今までに五回も設備が修繕されたということか? なんてこったい……」
とんでもない事実に気が付き、愕然としてしまう。どうにかしなければ、CPを稼ぐこともままならないではないか。
タブレットを睨みながらそんなことを考えていると、周囲を見回していたミドが戻ってきた。
「あ、あの、小動物は、いたのですが……ちょっと捕まえられそうになくて……」
ミドが申し訳なさそうにそう言うので、片手を振って笑っておく。
「大丈夫だよ。どうにか安定して食料を手にいれないとね」
そう言いつつ、タブレットに映し出された航空写真を確認した。画面の多くは黒くなっているままだ。
「……よし。この黒くなっている部分を埋めてみようか。何か良いものがあるかもしれないし」
「黒くなっている部分ですか?」
「うん。とりあえず、これを持って歩き回れば良いと思う。そうすれば、途中で果物とかもあるかもしれないし」
そう告げると、ミドは力強く頷いた。やる気に満ちていて素晴らしい。まぁ、困ったら全力で家に帰れば良いのだ。なんとかなるだろう。
そう思いながら、ミドと一緒に森の中へ向かって歩いてみる。遠くで木々が倒れるような音が聞こえてくるが、まだ大丈夫。焦る時ではない。
「お、あれは果物ではないかね」
「あ、は、はい。あれは食べられる果物ですね。ちょっと、採るのが難しくて、いつも諦めていたのですが……」
と言って、ミドは上を見上げた。比較的細い木だが、背が高い。パッと見ただけでも三十メートルはありそうだった。そして、その果物は木の上の方に生っている。確かに、この木をよじ登るのは難しいだろう。
「うわ、確かに……どうしようか」
上を見上げながらそう口にすると、ミドが恐る恐る手を挙げた。
「あ、あの……これまでは、一人だったので出来なかったんですけど、今なら、ソータさんがいるから果物も取れるかもしれません」
「ん? どゆこと?」
ミドの言葉の意味が分からず振り返ると、ミドが空に向かって両手を伸ばしていた。
「か、風の魔術で攻撃したら、果物は落とせるんです。でも、一人だったら受け止められないから……」
「ああ、なるほど……って、マジか。それは見たいぞ。失敗しても良いから、魔術を使ってみてほしい」
「え? あ、はい。分かりました」
予想外の果物の収穫方法を聞き、テンションが上がった。ウキウキして待っていると、ミドが目を閉じ、小さく口の中で何か呟き始めた。暫くして、ミドが目を開け、叫んだ。
「……風の刃!」
と、ミドが口にした瞬間、空に向けられた両手に風が収束していき、一気に放たれた。木の上に向かって目に見えるほど高密度の風の奔流が走る。風を切る音がして、つぎに木の上部にある枝が二、三本切断された。
本当に、僅かな時間だ。二十メートルは離れていそうなのに、一秒ほどで到達し、一撃で腕くらいはあるだろう枝が切断された。あれを人間が受けたら重傷は免れないだろう。
「うわ! 凄いね!」
素直に感動して歓声を上げながら拍手をしてしまった。その間にも、空から果物付きの枝が降ってくる。
「うわ! 怖い!」
若干怯えつつ、地面にあった枝を使って上から降ってくる枝を迎え打つ。いや、実際に棒きれを振り回すわけではなく、両手で横向きに持って受け止める感じである。
「……とっ!」
変な掛け声を発しつつ、意外と上手く枝を受け止められた。弾いた枝は地面に落ちたが、落下の衝撃を確実に減らされた筈だ。咄嗟の行動にしてはよくできたと褒めてほしい。
「お、お上手です!」
「ありがとう」
褒めてもらえた。少し照れてしまう。
ニコニコしながら地面に転がっている果物を確認してみた。サイズが大きい。というか、人の頭ほどの大きさだ。スイカかな?
緑色で表面はギザギザしているが、スイカの仲間かもしれない。だって、赤い汁が出てるし。
「……少し、割れたかな?」
「だ、大丈夫です。半分以上食べられると思います……っ」
若干凹んでしまった空気を察したのか。ミドは慌ててフォローに回っていた。なんて出来る子だ。
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