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おお、我が家が…… 11

 戸惑うミドを引き連れて、早速地下へと続くシャッターを開ける。ゲームだと住民が歩いていき、扉に触れるだけでどの家もすぐに入れていたが、現実ではどうなるのだろうか。


 そう思いながら黒い床の部分に触れてみる。開閉する気配はない。


「う~ん……あ、これかな?」


 扉の表面を見ていたが、どうやらシャッター部分のすぐ脇にボタンがあるようだった。細長い小さな板みたいなものがあり、そこに液晶のような画面がある。


「これ、大きな猪が踏んだら割れそう」


 嫌な予感と共にそう呟きつつ、画面の上に人差し指を置いてみた。すると、画面には文字が浮かび上がる。『住民設定』という項目だ。それに触れると、画面に『登録完了』と表示される。


 よし、住民第一号は自分自身だ。そう思って笑みを浮かべていると、今度は画面に『開閉』という文字が浮かんだ。それを確認し、一度手を放してから再び手を近付ける。


 自動ドアの音がして、黒い板が奥へとスライドした。そして、目の前に階段が出現する。ポイントが十倍くらい違う近未来住宅を作りたいところだが、今はまだ解禁されていない。人口や町のサイズ、設備数や電力供給量など、様々な条件をクリアすると最新の設備が解禁されていくのだ。ゲーム的な言い方をすると、ロック解除である。


 階段を下りていくと、後ろから慌てたミドの声がした。


「あ、あの……! お、降りて大丈夫なのでしょうか……?」


「大丈夫だよ。ミド、俺を信じてくれ」


 ニヒルでダンディーな笑みを浮かべ、ミドにそう言ってみた。すると、ミドは真剣な顔になり、深く頷く。


「は、はい……っ」


 返事をして、ミドは慎重に一歩ずつ階段を下りてきた。おお、信頼関係が築けてきたのだろうか。少し嬉しい。


 階段を下りて行くと、そこにはまた扉があった。地下室だから二重扉なのだろうか? まぁ、地上の扉を開けっぱなししてしまって雨が降り込むなんてこともあるかもしれない。そういう意味では二重扉の方が良いだろう。


 そんなことを思いつつ、地下の扉の前に立つ。壁を見ると、案の定、そこには地上で見たものと同じ黒い板が埋め込まれていた。そこに手を触れると、目の前の扉が天井へと吸い込まれるようにスライドしてしまう。


 扉が開くと、そこには広い空間があった。広さは十五、六畳ほどだろうか。壁はコンクリートのような灰色の壁で、床には茶色のカーペットが敷かれていた。天井は少し高いが、全体的に灰色なので少し冷たい雰囲気かもしれない。部屋の中心にはテーブルとソファーがあるので、そのおかげで生活感が感じられた。


 玄関ではなく、そのままリビングにつながったような感覚だな。他にも部屋はあるようで、左右と正面に一つずつ。計三つの扉があった。恐らく、開閉は同じようなやり方だろう。あ、玄関側にはカメラ付きインターフォンみたいなのがある。カメラはどこに付いていたんだ? まぁ、使うことはないだろうが。


「照明は天井全体が明るくなるのか。なるほど」


 そう言いつつ、部屋の中を見て回る。電気は通っているが、水はどうだろうか。色々と見て回りたい気分が先行し、絶句するミドを放置してしまっているが、許してほしい。


 右隣の部屋を見ると、そこは台所だった。キッチンである。アイランドキッチンと、少し段差があってカウンターのようなテーブルがあり、椅子が並んでいる。奥には冷蔵庫や食器棚といったものもあるようだ。オーブンもありそうだぞ。ひゃっほーい。


 ウキウキでリビングに戻り、今度は奥の扉を開けてみる。どうやら奥の部屋はトイレと風呂場があるようだ。さらっと洗濯機もありそうで嬉しい。恐る恐る風呂場の壁に貼られたディスプレイを操作し、お湯を出してみたところ、ちゃんと浴槽にお湯が流れ始めた。感動である。


 もうテンション爆上がりでスキップなぞしながら最後の扉にも向かった。リビングに入って左側にあった扉だ。そちらを開けると、そこは寝室のようだった。ベッドが四つもある。この住宅は四人世帯用だっただろうか。


 ゲームをしている時は、住民の要望で住宅地のエリアを設定したり、駅前にマンションを建てたりはしていたが、一つの建物に何人住んでいるかはあまり確認していなかった。


 こうして自分が作った建物の細部を見て回れるのは本当に面白い。


 ちなみに各部屋はどれも同じ大きさだった。そこを薄い壁やガラスなどで間仕切りしてある感じだ。


「やったー! 風呂に入れるぞー! ミド! 先に入って良いよ!」


 大喜びでリビングに戻り、立ち尽くすミドに声を掛ける。この喜びを是非とも分かち合いたい。そう思ったが、ミドはすぐには再起動しなかった。


「おーい、ミドー」


 顔の前で片手を振り、ミドの名を呼ぶ。すると、ミドはハッとして周りを見て、最後にこちらを見上げた。


「……ゆ、夢? 夢、でしょうか?」


 混乱し過ぎて涙目になったミドがそんなことを言うので、笑いながら頷く。


「夢なら良い夢でしょ? ほら、せっかくだから風呂に入ってみなよ。さっぱりするよ」


 そう声を掛けてから、ミドを風呂場へと連れて行く。浴槽は比較的広かったので、気持ちよく入れるはずだ。


 いや、もちろん、俺が一緒に入るわけではないぞ。覗きもしませんとも。




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