屋根裏部屋から
姉夫婦が山中の大きな中古住宅を買った。
私は可愛い姪と甥に会いたくて、入居する日にくっついていった。
「理佐ねぇちゃん、理佐ねぇちゃん!」
五歳の姪と三歳の甥はとてもなつっこい。二人と手を繋いで姉夫婦と共に新居の部屋の中を探検した。
「お義兄さん、すごく広いですね!」
「そうだろ。山の中でもこれならいいだろ?」
確かにとても部屋数が多い。二階には四部屋。
「それだけじゃないぞ」
そういって義兄は指を立ててドヤ顔。そして二階の通路の天井から階段を引き出す。
「うわあ!」
「屋根裏部屋だよ。みんなで見てみよう」
簡易的な階段を上り、天井の上蓋を開けるとそこには屋根裏部屋。
天井は低いものの十畳ほどの広さ。電球があるだけの白い部屋だった。
私と姪と甥が部屋を駆け回ってると、義兄が降りてパーティーを始めようと言ったのでそうすることにした。
パーティーをしていると上のほうからガサガサと音がする。みんなで耳を澄ませて聞いてみると、どうやら二階のほうだ。
義兄の話だとリスでも迷い込んだのかもしれないと言うのでみんな楽しみにしてそちらに歩いて行くと義兄が廊下で足を止める。
どうやら屋根裏部屋からの音らしい。義兄は階段を引き出し一人部屋へと上って呟く。
「なあんだそうかあ」
と言って入り口から顔を覗かせる。
「美佐も上ってこいよ」
と姉を呼ぶ。姉は姪と甥を私に預けて階段を上っていく。
その内に姉の笑い声が聞こえた。
「うふふ。そっかそっかあ」
そして姉がヒョイと入り口から顔を出したがゾッとした。
一瞬だったが、姉の首から下がなかった──。
だがそれを隠すように首を引っ込め、顎から上だけを覗かせて言う。
「理佐もおいで。面白いよ」
私は返事もできずに硬直していた。
姉、らしきものは笑顔で数度呼び掛けの後に姪を呼ぶ。
「空ちゃんおいで──」
姪は行こうとしたが、私は抱き締め行かさなかった。姪はもがいて私の手から離れ階段へ上ろうとする。
「陸くんも!」
そう言って甥も駆け出すと姉から一喝だった。
「ダメ! 一人ずつよ」
突然の声に姪は固まり階段の中ほどで止まった。
私は姪を掴み二人を脇に抱えて二階を駆け降り外へと飛び出した。
そして二人を車の後部座席に押し込み山を走り降りたのだ。
後に警察立ち会いの元、家の中にいるはずの姉夫婦の姿を探して貰ったが二人の姿は見つからなかった。
屋根裏部屋から発見されたのは少量の血痕だけ。
それだけだった。
現在、姪と甥は実家で育てている。