学校の七不思議その一
学校の七不思議という物がある。
其れは極々有り触れた定番中の定番。
一般的な都市伝説だ。
此の七不思議に真夜中に音楽室のピアノが鳴るというのが有る。
これは定番中の定番だ。
だれもいないはずの音楽室でピアノを弾く音がするか~~。
「うわ~~い普通だね」
『普通だな』
僕と相棒の言葉が重なる。
うん。
本当に気が合うね僕たち。
其れはそうと。
そんな所に僕は相棒にして親友の鉱石ラジオと学校のクラスメイトと来ていた。
肝試しに。
肝試しなんてイベントに。
二度目の。
うん。
何でこうなった?
凄いデジャヴ。
『空気だな』
「空気だね」
僕と相棒の言葉が一致する。
断れる訳がない。
皆来るんだし行くよね?
という顔で聞くなと言いたい。
というかあの凄惨な事件が有ったのに呑気なものだ。
ため息を付きながら視線を横に向ける。
というかまた此のパターンか。
「楽しみだね肝試し」
「え~~行くの私怖い~~」
「大丈夫だ俺が守ってやる」
「いや~~いい感じで不気味だね~~」
男女四人の集団。
というか同じセリフ。
お前ら怨霊に取り憑かれてない?
うん。
良いけど。
肝試しである。
うん。
肝試し。
クラスメイトに誘われました。
カップル達に……。
僕一人なんだけど?
またかよ。
他のメンバーは合宿やら何やら。
親戚の所に遊びに行くとか。
法事とか何とか。
居ません。
またもだ。
其れで人間が足りないらしく僕が誘われました。
強制的に。
……。
何でだよ。
今まで接点無かったろ。
というか今回も。
何で僕を誘う?
意味分からん。
というかデジャヴが酷い。
歴史は繰り返されると言うことか……。
明らかに僕だけ浮いてる。
一人だし。
パートナー居ないし。
『おい私の存在を忘れたか?』
「相棒ラジオじゃん」
『ふ……其れはどうかな?』
相棒にして親友の不敵な言葉に僕は首を撚る。
数分後。
「ごめ~~ん待った~~」
「「「「全然~~」」」」
何故かクラスのアイドルが遅れてやってきた。
その様子に僕は唖然とする。
そのままその子は僕の隣に近づくと腕を組んでくる。
「マテ」
「『どうした?』」
声が重なっているんだが……。
というかこの間相棒が取り憑いた女子だろう?
此奴は。
まだ使ってたんかい。
「その体の本当の持ち主に申し訳ないのだが……」
「『気にするな』」
そうかい。
というか僕だけ?
僕だけか?
気にしてるの?
「其れに此れなら思えはボッチではないぞ」
「おおっ!」
僕は相棒のラジオを通さない言葉に僕は喜色満面になる。
「有難う相棒」
「ふっ! 任せろ」
「これからもズッ友だよ」
「……」
何で僕のお礼の言葉に憮然とした態度を取る?
というか足を踏むな。
地味に痛い。
校内。
暗い。
暗い向こう側から音が聞こえる。
誰かが弾いているのだろう。
ピアノの音だ。
聞き慣れた音楽が聞こえる。
曲は「エリーゼのために」。
「定番だな」
「定番なの?」
「そうだな」
相棒の言葉に僕へ眉を顰める。
「此れがベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73 「皇帝 」だと雰囲気が崩れる」
「いや其れはどうかと」
よく言えるなそんな長いの。
「いいか「エリーゼのために」は、本来「テレーゼのために」という曲名だったんだ」
「おう」
何か聞こえてるピアノの音がズレてる気がする。
気のせいかな?
「だが、悪筆で解読不可能など何らかの原因で「エリーゼ(Elise)」となったらしい」
「ふ~~ん」
あれ?
何かピアノの音が物凄くズレてる。
何か動揺してるみたいな感じだ。
「本曲の原稿はテレーゼ・マルファッティの書類から発見されたとか」
「……」
ピアノの音が止まっているんだが……。
凄い動揺してるような音が聞こえる。
「テレーゼはかつてベートーヴェンが愛した女性だから当然だ」
「え~~と何が言いたいの?」
「ベートーヴェンは好きな人にラブレター代わりの曲を送ったキザ野郎と言うことだ」
なおこの後引かれてる曲が「レクイエム」に変わった。
良いのかベートーヴェン?
モーツァルトの曲で。
まあ~~本人では無いだろうが。
多分。
後日談。
本来は音楽室で天井から滴る血が鍵盤を叩いているという七不思議だったんだが……。
何故か天井に人の顔のシミが出来ていた。
新たな七不思議はその血の涙が鍵盤を叩いているという事になっていた。
顔のシミは当然ベートーヴェンである。
ご愁傷様です。