4.どうしてこうなった
元々あった4話を削除しました。
展開を気にしないうんちっちなお話だったので下書きからも抹消しました。
なかった扱いでお願いします。
11/14ウロのレベル推移を修正
『現在、ユーザー名:イシュタルのエクストラジョブクエスト『竜母』が終了できていないためエクストラジョブクエスト『チュートリアル』が開始できません』
あたりは暗くなる中、それとは関係なくその働きを続ける施設があった。
始まりの街クルセイドの冒険者ギルドにて、周改めイシュタルは予想していた事実にため息をついた。
突然だがFinal Edenは1年ほど前にはじまったVRMMOゲームである。
というか、イシュタルたち第二陣プレイヤー達が参入したタイミングがサービス開始1周年であり、先にプレイしている第一陣プレイヤーも第二陣プレイヤーも等しく楽しめるようになっている。
始まりの街も1周年仕様になっていて、通常とは異なる仕様になっている。
その他にも
第一陣プレイヤーには1周年を記念した見た目装備。
第二陣プレイヤーには経験値バフ。
と区別化されており、それぞれの習熟度にあった特典になっている。
とまあ、1年やっているのだ。
街もそれなりに発見され本格的にお祭り騒ぎをしているのは最前線の街であるのだが、始まりの街は第二陣の参入もありかなりの熱気を放っている。
何が言いたいのかといえば、イシュタルのいる冒険者ギルドも活気づいている。
第二陣プレイヤーの初心者を始め、様々な事情や考えを持って始まりの街へ帰ってくる第一陣プレイヤーなどがそこそこ広い室内にかなりの人数いる。
端的に言えば、目を引くのだ。
このゲームはキャラクリエイトの仕様上、美醜が別れる。
だがこれもゲーム、醜いアバターなどほとんどない。
そこらを見渡せば美男美女、とまでは行かないが視界の端には映る。
だが、イシュタルのそれは格がちがう。
短く少し肉が着いた手足に、ポテッとしたイカ腹。
キャラパーツとしては珍しい部類に入る口角端から覗く「ギザ歯」とその獰猛な身体特徴とは似合わない、光が染み込む銀色の髪の毛とこれまた獰猛な印象を与える吊り気味の黄金の瞳。
これだけでも相当に美しい出来になっているのは語るまでもない。
美しい身体はこの世界の支配者に好かれた証拠であるという神話がこのゲームにあるように、希少な価値だ。
それだけでも目を引くのだろう。
だがそれだけではダメだとゴリ押しレベルだと言われてしまうほど、目を引くその体に似合わない「おっぱい」。
いわばこのゲームの運営に愛された身体を持っているのが今のイシュタルなのだ。
以上のことがあり当然ではあるが、そんなアバターを引っさげながら受付嬢の目の前で呆然とする姿は目を引いた。
ただ、そんな様だからだろうか足元にいる未知の塊であるウロに気付くものが少なかった。
「大丈夫ですか?」
若干焦った様子の受付嬢が呆然としているイシュタルに声をかける。
「え、あ、ええ。大丈夫でs、だよ。ちょっとびっくりしたけど」
「そ、そうでしたか。今アナウンスがあったようにクエストを完了されてからまた受領されてください」
「わかったよ」
そう言いイシュタルは受付嬢の前を離れる。
不満そうな表情が見え隠れするがその不満も真っ当なものであるからイシュタルの引っ込みもつかない。
ちなみに、イシュタルの口調はロールプレイだ。
まずは敬語を辞めることにしたのである。健気だ。
「ねぇねぇ、君うちのクランに」
『『『ギロリッ』』』
「ひっ…」
その場ではなんの騒動もなく、イシュタルはウロを連れて冒険者ギルドを離れることが出来た。
◇◇◇
そもそも、チュートリアルを受けなければ職業:冒険者になることが出来ず事前の情報収集で見つけた有用なスキルを得ることが出来ない。
攻略の筋道立ての入口こそが冒険者であり全てのプレイヤーは普通冒険者からはじめる。
決して竜母なんてイロモノ職業からは始まらない。
何故かイシュタルに不親切な神ゲーに対してイシュタルは色とりどりのライトアップをした噴水の縁に腰掛けながら思案していた。
「さて、どうしたものか」
「ピ」
「ウーちゃん。もしかしてお腹減った?」
「ピゥ」
(……当然だけど言ってることがわからん)
動物相手の意思疎通など所詮は不可能。
ちなみにウーちゃんはあだ名だ。
意思疎通が無理だとしてもこれはゲームで、竜母はエクストラジョブである。
何か手はないのかとイシュタルが考えると直ぐに思い当たったのは竜母になった時手に入れたスキル群だ。
ここで解説だ。
スキルというのはこのゲーム内の技のようなもので、スキルスロットという枠にスキルをセットしてはじめてスキルを使用できる。
スキルスロットは5つでゲーム内のイベントによって増減ありだ。
ただエクストラスキルはその枠に収まらずいつでもどこでもいくらでも使うことが出来るため、イシュタルは知る由もないが第一陣のプレイヤーはエクストラジョブ探しで躍起になっている。
閑話休題。
イシュタルが竜母取得時に得たエクストラスキルは6種。
【竜母の教育】【竜母の叱責】【竜母の称賛】【竜母の児戯】【竜母の授乳】【母子手帳】であり、
この中でもイシュタルが気になっているのは【母子手帳】であった。
「ピゥ」
「……【母子手帳】」
イシュタルがそう呟くと、目の前にウィンドウが現れた。
『どの個体の母子手帳を取得するか選択してください。
▶︎▷・ウロ(アーキタイプ)』
「選べってことか。まあ当然。ウーちゃんのかな」
「ピ?」
選択が終わり、すぐにウロが光ったと思うとイシュタルの目の前にポンッと手のひらサイズの手帳が現れた。
デザインは面白く。
デフォルメされたイシュタルがこれまたデフォルメされたウロをだき抱えているイラスト。というものだった。
軽く感嘆しながら、噴水のライトアップを光源に読書にでも洒落こもうと手帳を開いた。
お名前:ウロちゃん
お母さん:イシュタル
なるほど、こういうテイストか。
イシュタルは半ば高揚しながら読み進める。
体の重さ:900グラム
体の大きさ:26センチ
体の温かさ:35度
あー。ここまで書かれるんだ。
苦笑を隠せなかったがまあ面白い。
読み進める。
体の様子:なんともないでしょう。
今思っていること:お腹すいた!!
お腹がすいたらしい。
奇しくも予想を的中させていた。
ページをめくれば、どうやらここから先は日記形式らしく。
ウロの心情らしきものが描き綴られていた。
ウロの日記を見てホンワカした気持ちになるが、やはり驚きを隠せない。
若干書かれていることは少ないが要点はおさえられているように思う。
いずれにしても仔竜の状態をいつでも確認できるのはいいことである。
「ピッピッピッピッ!」
「あいはいはいはい」
なかなか乳を吸わせないママに痺れを切らしたのか強硬手段に出たウロを流れるような手つきで服の中に収監し、スキルの確認に戻る。
どうやら母子手帳は詳細情報が記された1ページ目以外は日記であるらしくウロは生まれたばかりなのでこれ以上書かれていることは無いようだった。
次に気になるのが、今現在もしている行為だ。
すなわち【竜母の授乳】である。
百聞は一見にしかず。
「【竜母の授乳】」
瞬間、視界に映る体力ゲージと魔力ゲージの下にある、“半分以下の”『満腹度ゲージ』が消し飛んだ。
「ふぐぅっ!」
「ぴっ?!」
そして手の中に硬く生暖かい感触が現れた。
それは見た限りでは哺乳瓶とその中に入った乳白色の液体だ。
というかどこからどう見ても哺乳瓶入りの母乳であった。
「ちょ、直接じゃなくていいんかい…!」
【竜母の授乳】を使うには満腹度が足りなかったらしく、空腹デバフを通り越した飢餓デバフが着いてしまった。
アイテムボックスの中に入っている携帯食料を取り出して食べる。
完璧にでは無いがいくらか満腹度ゲージが回復した。
「っ…はぁ……これ街じゃなきゃ使えないスキルだな」
恐らくというか確実に満腹度ゲージが半分以上持っていかれた。
これが意味することは外で使えるスキルではないということ。
どう考えても直接吸ってもらった方がコストパフォーマンスがいい。
とは言っても吸われている間も満腹度ゲージが減っていくのだが。
哺乳瓶をアイテムボックスにぶち込んで、次のスキルを確認する。
【竜母の教育】
ほかのスキルはイシュタルの行動に起因するものと予想できるがこのスキルがどのような効果を及ぼすのか気になる。
「【竜母の】ってお、おっと」
「ぴぅっ…ピゥ」
「ああ、もうおなかいっぱいなのね」
服の中で暴れ始めたウロを慌てて取り出して膝の上に置いたあと、イシュタルはウロの背中を撫で始める。
「けぷ」
「おお、まちがってなかったみたい」
背中を撫でてゲップをさせないとダメ。イシュタルの数少ない育児知識のひとつである。
「じゃあ改めて【竜母の育成】」
『どの個体に教育を施すか選択してください
▶︎▷・ウロ(アーキタイプ):取得経験値×4』
(ん?)
どうやら今のウロに教育を使うと経験値が4倍になるらしい。
ここから推察するに仔竜のレベルアップ関係のスキルらしい。なるほど、教育である。
「当然ウーちゃんで!」
『選択されました。ユーザー名:イシュタルのLv10相当の経験値を個体名:ウロに対して移譲します。完了しました』
『ユーザー名:イシュタルのLvが変化します。Lv.10→Lv.0』
『種族アビリティが発動されました。確認可能です』
『個体名:ウロのLv上昇を確認しました。Lv.0→Lv.2』
『個体名:ウロのLvが上限に達しました。進化可能です』
『個体名:ウロが進化を拒否しました』
『個体名:ウロのLv上昇を確認しました。Lv.2→Lv.4』
『【竜母の教育】は個体名:ウロの最終進化を確認するまでパーティ内経験値の移譲は継続されます。解除は不可です』
「……あー…待ってくれ……」
この時、イシュタルは悟った。
【竜母の教育】は今の自分が使うべきスキルではないこと、さらに無理ゲー化したこと、パーティを組めないこと。
そして、詰みかけていることを。
【竜母の教育】
プレイヤーのLv.10相当の経験値を仔竜に移譲し、それ以降プレイヤーが取得した経験値を仔竜が取得した扱いとするスキル。
ウロの日記 1日目
なんだかつよそうなおかあさん。やさしくてだいすき。
うんでくれてありがとます。




