第46話 地下四階その2
―――地下四階
早朝、僕たちは再び山頂を目指すことにした。
朝ではあるのだが、相変わらず空は暗いようだ。
「山頂までどれくらいあるのかな?」
「昨日私たちは中腹辺りから登ってきましたので、もうじきかと」
昨日、エミリアと一緒に寝たので色々言われるかと思ってたけど特にそんなことは無かった。
というかエミリア本人が特に何も気にして無さそうなのは何か悔しい。
「レイ?どうかしました?」
エミリアは知ってか知らずかそんなことを言った。
「いや、なんでもないです…」「?」
山頂への道は上へ登るほど比較的緩やかになってきて、
ぐるぐる回りながら山頂に向かうような感じとなっていった。
そしてまた脇道に逸れる道があり、ゴーレムが二体鎮座していた。
「………」
「また後ろに宝箱があるみたいですね…」
「どうみても罠だ」
昨日も後ろに宝箱があったけど金貨一枚とかいう酷いものだった。
「そうねぇ、流石にあのモンスター二体を相手にするのは割に合わないと思うわ」
そう言って僕たちはそこを無視して先へ進む……のだが、
「<炎球>!!!」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオン
一人で戦闘始めてるし!
僕たちがエミリアの元に駆け付けるともう既に戦闘は終わっていた。
「いやー、すみません…つい我慢できなくて…」
「まぁエミリアが無事ならいいけどさぁ…」
<炎球>二発使ってゴーレム二体二撃で撃破は凄いけど消耗はかなり酷そうだ。
「それで、宝箱の中身は……」
………銀貨一枚だった。
「ここに来て宝箱の中身が酷すぎませんか!!」
「地下三階までは中身結構良いものばっかりだったんだけどなぁ」
このダンジョンの主なんていう存在がもしいるとしたら、レアアイテムのストックが切れてしまったのかもしれない。からかってるだけな気もしないでもないが。
「うーん、やっぱり変だわ」
相変わらず姉さんが悩んでるみたいだけど、何が変なのだろう。
確かに宝箱の中身はおかしいけどね。
愚痴ってるエミリアは置いといて先へ進む。
道中にまたゴーレムや一角獣などが出てきたけど、エミリアの魔力はボス相手に温存させるために出来るだけメインは僕とレベッカで戦うようにしている。
「<物防弱化Lv1>」
最初にエミリアに敵の防御力を下げてもらって、
「<束縛Lv2>」「<筋力強化Lv7>」
姉さんの束縛でゴーレムの動きを止めてレベッカの魔法で僕を強化してもらう。
最後に僕が『魔力喰いの剣』に魔力を込めて
「これで終わりだぁぁぁぁ!!<剣技・炎魔法>!!」
魔法剣でゴーレムを薙ぎ払ってゴーレムを一刀両断…は言い過ぎだが一撃で倒す。
エミリアに聞いたところ
「初級魔法三発と中級魔法一発分の魔力を使うので<炎球>の燃費は良くはないですね」
という話なので、全員で消耗を分散できる今の方が良いという結論だ。
ちなみに上級魔法は<炎球>の二倍以上の魔力を使うのでもっと燃費が悪い。
僕自身もこのやり方だと結構消耗するため、
あえて魔法剣は使わず魔力食いの魔力消費も少し抑えて戦うこともある。
道中でゴーレムが二体以上現れた時は一体はエミリアの<炎球>で倒してもらう。
ゴーレム+他の魔物が出た場合、他の魔物はレベッカの弓で仕留めてリスクを減らす。
そんな感じで僕たちは順調に進み……
「エミリア、あれは絶対罠だから!」
「ゴーレム三体は消耗激しすぎるので自重してくださいエミリアさま!」
「エミリアちゃん暴れないで!」
明らかに罠っぽい宝箱の前にいるゴーレムからエミリアを遠ざけるのに苦労した。
「レイ、どさくさに紛れて私の胸触ったでしょう!!」
「触ってない!不可抗力だから!……多分」
それで何とか頂上に着いた。
「ごくごく………」
エミリアは霊薬を飲んでから姉さんとレベッカに魔法を掛けて貰う。
掛ける魔法はいつも通り防御魔法と強化魔法だ。
とはいっても今回の相手は大体予想が付いてる。とすれば攻略法も決まっている。
「じゃあ行こうか…」
そう言って僕たちは頂上の真ん中付近に近づく。
頂上はそれまでの道と比べて柵があり随分広い。
多分十分な戦闘ができるように場所を広くしてあるのだろう。
そして、頂上の真ん中には、大きな岩の塊が置かれていた。
「「「「…………」」」」
………言うまでもないが、この大岩こそ今回のボスだ。
最初にゴーレムと出会ったときも僕らが岩に乗ってしまって地中から出てきた。
つまり、この岩に近づくか乗っかれば多分襲ってくる。
岩の大きさから察するに今までのゴーレムよりも二~三倍大きいのだと思う。
「あの……レイさま」
「どうしたの、レベッカ?」
「相手が出てこなくてもこちらから攻撃してしまうのはどうでしょうか?」
………………まぁ、確かにそれはアリなんだけど。
「まぁ、可哀想だし…ね」
「そ、そうですか……」
とはいえ、わざわざ近づいて危険を晒す気は毛頭ない。
「それじゃあ、みんな準備はいい?」
「はい」「大丈夫よ」「問題ありません」
というわけで戦闘開始、結局はこっちから仕掛けるわけだけど。
ひとまず、この埋まってるゴーレムを起こそう。
僕は右手の指を銃のような形に構えて大岩に向ける。
「<魔法の矢>」カツン
とりあえずこの魔法でこのゴーレムが動き出すまで撃ち続ける。
「<魔法の矢>」カツン
「<魔法の矢>」カツン
「<魔法の矢>」カツン
―――ちょっとイラッとしてきた。
「姉さん、お願い」「オッケー」
後は姉さんに任せることにする。
「レベッカ、姉さんを盾で守ってあげて」「わかりました」
岩から跳ね返って来たら危ないからね。
「エミリア、もうちょっとの辛抱だから」「………ええ」
さっきの宝箱が取れなくてフラストレーションが溜まってるようだ。
「それじゃあ行くねー!<魔法の矢>」ドゴッ
まだ動かないのか、しぶとい。
「<魔法の矢>《マジックアロー》」ドゴッ
お、今一瞬震えた気がするぞ。
「<魔法の矢>《マジックアロー》」ドゴッ
おお、地面が揺れ出したぞ。ようやく我慢できなくて出てくるみたいだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――
一旦距離を取って僕たちはゴーレムの姿が完全に地上に出てくるまで待機する。
そして待つこと数十秒、ようやく敵の姿が把握できるようになった。
予想通りというか、相手はゴーレムそのものだった。
大きさもこれまた予想した通りで通常のゴーレムの三倍程度。
腕のリーチも長く力も強いので、まともに戦うと死闘になるかもしれない。
……まぁ、まともに戦う気はないんだけど。
「姉さん、お願い」「はい、<束縛Lv2>」
この大きさだと長くは足止め出来ないけどちょっと止められるだけで十分だ。
大きすぎて束縛できたのは両足だけだが動かなければ大丈夫。
「じゃあ次だね。<中級爆風魔法>」
この魔法は僕が使う。この巨体なら風の影響も大きく受けるだろう。
おまけに体の岩の大きさはバラバラだ。爆風でも浴びせればまともに安定が取れないはず。
僕は姉さんとは逆に体の方に魔法を当て続ける。
この魔法は使用頻度が高いから大分詠唱慣れしてきたなぁ。
「レベッカ」
指示を出してそのまま魔法を継続、レベッカの詠唱終了と同時に解除する。
「はい、少しお待ちを……<地割れ>」
レベッカの魔法で巨大なゴーレムの片足の方に地割れが発生する。
地割れが起こった部分は上に乗っているゴーレムを支えきれずに更なる亀裂が起こる。
ゴーレムの片足が地割れの亀裂の中に入り込んでしまい身動きが取れなくなった。
「<束縛Lv2>」
最後に姉さんがまだ動きそうな片方の腕を縛って準備完了。
「それじゃあ、エミリア……後はよろしく」
「えぇ……この時を待ってましたよ……ふふふふふふふふ」
僕たちはエミリアの邪魔にならないようにエミリアの後ろに回って待機する。
「大体この階層は何ですか…!
宝箱の中身はショボいし、その割に手前にモンスターを配置して嫌がらせですか!
道中の敵の出現率もやたら高いですし、山を登らされて足も腰も痛いですし!」
山登りなんて初めてだからかなり辛かった。
忘れてると思うけど僕は鎧を着てて剣二本持ち歩いてるからね。盾も持ってる。
多分明日は全身筋肉痛だろう。
「レイが夜に夜這いしてきたと思ったらここじゃない世界がどうとか言ってますし!」
夜這いなんかしてないし聞いてたのかよ!
寝てたと思ってたわ!エミリア絶対寝ぼけてたよね!
「朝起きたらレイに思いっきり抱き着かれてセクハラされてましたし!
さっきもレイに胸とお尻触られてた気がしますし!」
お尻は絶対触ってないから!それ多分抑えてたレベッカだから!
「レイくん……」「レイさま……」
「そんな目で見ないで二人とも!誤解だから!」
というかさっきからエミリアの愚痴が僕の事ばっかり言ってない!?
「ああもう!とにかくお前は許しませんよ!」
エミリアの足元にはいつの間にか魔法陣が浮かんでいた。補助結界だろう。
「あの世で私に謝り続けなさい!<炎球>!!!!」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオ
エミリアのファイアボールがゴーレムのお腹を捉えて大きく抉れた。
「<炎球>!!!!」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオ
「<炎球>!!!!」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオ
その後、エミリアは満足するまで<炎球>を撃ち続けた。
気が付いたらゴーレムは消えていて、虚空に<火球>を撃っていた気がする。
「あ、宝箱が出た」
確認すると『Ⅳ』と書かれた宝珠に、マントと魔法使い風の服と槍が宝箱に入っていた。
それと白い狼の魔物の時と同じくらいの大きさの魔石が転がっていた。
「エミリア良かったね、エミリアに似合いそうなマントと服があったよー」
「そ、それは嬉しいですね……とりあえず霊薬飲ませて貰っても良いですか……」
ファイアボールを撃ちまくってたせいでエミリアの魔力は枯渇したっぽい。
「今回はもう帰りましょうか」
「あちらに扉と台座が現れましたが、また今度ということで」
レベッカと姉さんが言うように今回もエミリアがダウンしてるので帰宅することにした。
「エミリア帰るよー」「はーい……」
エミリアの返事を聞いてから僕はエミリアをおんぶする。
こうやって密着すると、やっぱり胸の感触が……結構大きい気がするなぁ…。
「セクハラですね…」
「ギクッ……!ね、姉さん、早く帰ろう!」
「おい、いま誤魔化そうとしませんでした?」
「はーい、みんな集まってねー」
そうして僕たちは姉さんの<迷宮脱出魔法>で帰宅したのだった。
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