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【完結】女神様といっしょ!【1000話達成】  作者: ノノノ
第三章 ダンジョン攻略編(前編)
48/1021

第43話 地下三階その3

 ―――地下三階、ボス部屋前にて


 僕たちはこの先に待ち受けるだろう敵と対峙する前に準備を行った。

「魔法の霊薬って初めて飲むんだけど…」

 エミリアに調べてもらったところ最大魔力(最大MP)の1/3弱は減っていたため魔力を回復する霊薬を飲むことにした。魔力食いの剣の負担はかなり大きい。


「……っ! ……ん?」

 かなり苦そうだと想像して飲んだのだが意外と甘くて飲みやすかった。

 それに体が少し温かい。イチゴとこの世界のお酒を加えたような飲み物の味だった。


「それじゃあ準備するわね」

「わたくしも助力します」

 姉さんの防御魔法とレベッカの強化魔法を事前に掛けて対策する。

 消耗はそれなりに大きいが強敵相手に出し惜しみして居る場合じゃない。


「よし……」

 一通りの強化魔法と防御魔法を掛けて貰ってから僕たちは最後の部屋へと進む。

「んぐんぐ……」

「レベッカ、そんなに急がなくてもみんな待ってるから…」

 強化魔法をかなり使ったためレベッカも『魔法の霊薬』を1本飲んでいた。

「ぷはっ………お気遣いいただきありがとうございます…美味しいですね」

 気を取り直して最後の部屋へ進む。


「………こいつは」

「……」

 魔物とは思えないほど静かだが、そこには白い狼のような姿の魔物が居た。

 普通の狼と比べて一回り体は大きい。


「……んー?」

 姉さんは何か考えているようだ。

「姉さん、どうしたの?」

「えーっとね、私何処かでこんな雰囲気…感じたことがあって」

 雰囲気?

「ベルフラウさん、この魔物を見たことがあるんですか?」

 エミリアは姉さんに問いかけるが、姉さんも今一つ分かっていないっぽい。

「魔物…は知らないんだけど、…何でかしら?」

「不思議な存在ということなのですね、世の中は分からないことだらけですね」

 レベッカはベルフラウの言葉に何か頷いている。

「んー?……んー?」

 当のベルフラウ姉さんはレベッカと白い狼を交互に見て余計頭を悩ませている。


 いや、こんなことして居る場合じゃない。

 僕は<魔力食いの剣>(マジックイーター)を鞘から抜いて構える。

 目の前の相手の実力ははっきりしないがかなりの威圧感を感じる。


「エミリア、<能力透視>お願いしていい?」

「そうですね、分かりました!」


<能力透視Lv6>(アナライズ)


 個体名:??? 種別:???


 HP500/500 MP500/500 攻撃力250 防御力120 魔法防御力120

 所持技能:詠唱Lv20 初速Lv10 存在秘匿Lv??

 所持魔法:中級攻撃魔法Lv10 その他魔法Lv10 詳細不明

 敵の正体は不明


「これは……ちょっとヤバいですね」

「うん、ゴブリン召喚士よりもずっと強いと思う……勝てないかも」

 はっきり言って今までで出会ったことのないレベルの強敵だ。

 当時より僕たちは強くなってるけど、全力で戦っても太刀打ちできるか怪しい。


「強いのは分かりましたが……」

「襲ってこないわね……どうしたのかしら」

 姉さんたちが言うように、これほど圧倒的な強さと威圧感だというのに襲ってこない。


「……もしかして、このまま素通りさせてくれるかな――」

 僕がそんなことを言ってしまったせいだろうか。


 その魔物は僕を睨みつけて言った。


『準備は終わったか?それではいかせてもらうぞ』


「喋った!?」

 召喚士の前例があったとはいえ、魔物が人語を話すのは珍しい。

 若い女性の声に聞こえるが…。そんな驚愕をよそに、魔物は詠唱を始めた。

「っ!姉さん、妨害を」「うん!ジャ――――」


<中級火炎魔法>(ファイアストーム)

 姉さんの魔法よりも遥かに速い速度で詠唱を終えた魔物の魔法が発動する。


「「「「うわあっ……!」」」」

 敵の火炎魔法を僕たちは躱す暇なくまともに受けてしまう。



「っ……!」

 ダメージは自体はそこまで酷いわけじゃないが…

「みんな無事!?」

「う、うん…」

「ベルフラウさんの<魔法抵抗>(レジスト)を事前に掛けていたおかげでなんとか…」

「レベッカも無事です…」


 全員無事でホッとしたが、かなりの強敵だ。

「不味いですね、全員散ってまともに攻撃を受けないようにしましょう!」

 エミリアの指示で僕たちはそれぞれ離れて魔法攻撃をまともに受けないように距離を取る。


「ひとまずお返しです!<中級火炎魔法>(ファイアストーム)!」

 エミリアも自身が最速で撃てる攻撃魔法でやり返す。

「よし、レベッカと僕で一気に攻めるよ!」

「はい、レイさま!」

 僕は<魔力食いの剣>に魔力を込めながら敵に向かって走る。


「私は回復をしていくわ!」

 姉さんは回復魔法で一人一人を回復させていく。

 魔物はその様子を涼しげな様子で見ていたのだが―――


 レベッカは<空間転移>で弓と矢を取り出して、矢を番えた時―


『ほぅ?』

 他には無関心に思えた魔物が反応したように見えた。

 魔物はレベッカを凝視している。もしかして狙っているのか。

 しかし、エミリアの炎魔法を食らっているのに対してダメージを受けた様子もない。


「こっちだ、魔物!」

 僕は魔力食いの剣で攻撃範囲を伸ばして胴体に一撃を加える。

 攻撃の瞬間、魔物は身を翻して躱したが攻撃範囲増加で少しだけダメージを与えた。


『よい剣を持っているでないか』

 この剣は地下二階で入手した武器だ。まだ使いこなせていないが威力は絶大だ。


「……ふっ」

 続いてレベッカの三連射が飛んでくる。

 魔物は素早い動きでそれを躱し僕たちから距離を取った。


「逃がしません!」

 レベッカは弓を撃ち続けて魔物を攻撃射程に入れ続ける。

 そして追い込んで直撃しそうになった矢を魔物は、何と尻尾で跳ね返した。


「う、うそっ…!」

 レベッカの矢は魔物に対してかなりの威力がある。

 特殊な能力などが無い限り簡単に防げるようなものではない。


「なら魔法を食らいなさい!<中級雷撃魔法>(サンダーボルト)

 エミリアの中級攻撃魔法で最も攻撃力の高い魔法が敵を捉える。しかし、それでもそこまで食らった様子はない。ダメージを受けていないわけではないが、大して怯んでもいない。


<中級雷撃魔法>(サンダーボルト)

 魔物がそっくりそのままエミリアに魔法を発動させる。

「ふざっ!……<魔力相殺Lv1>(ネガティブ・マジック)!!!」

 何とかエミリアは<魔力相殺>でダメージを軽減するが無傷とはいかないらしい。


「エミリアさま! これはどうですか!<地割れ>(クラック)

 レベッカが初めて使用する魔法だ。魔物の足元にひび割れが入り床が割けて敵を地中に飲み込む強力な魔法だ。これが他の魔物だったならかなりのダメージだっただろう。

 しかしその魔物は魔法発動と同時に瞬間移動かを見紛う速度で後ろに躱していた。


<礫岩投射>(ストーンブラスト)

 魔物はまた魔法でレベッカに反撃する。しかもレベッカが得意とする魔法だ。


「なっ! わっ……!」

 強力な魔法を使った反動か、レベッカは魔物の反撃の魔法に対応できずに飛んできた石の礫を数回食らってしまう。だが、クリーンヒットまではしなかったのか直ぐにたち上がった。

「お、おのれ…!人を食ったような獣ですね……!」

 レベッカが珍しくムキになっている。本当にまるで遊んでいるような魔物だ。


「くそっ、食らえ! <剣技・風魔法>(真空斬り)!」

 魔力を込めて威力を上げた魔法剣を放つ。風の刃が敵に向かって飛んでいくのだが、これも簡単に躱されてしまう。

『無駄じゃよ。そら、止めてみよ!』

 まるでじゃれるかのように、白い獣の魔物はこちらに突進してくる。

「は―――」

「速い」と言う前に僕は魔物に跳ね飛ばされてしまう。

 その間、僕は一瞬意識を失ってしまった。


「レイくん!<完全回復>(フルリカバリー)!!!」

 すぐさま姉さんに回復してもらい意識を取り戻すが…

「い、今のはヤバかった……」

 気絶した時、自動車に轢かれた時のことが走馬灯のように蘇った。

(一歩間違えてたら死んでたかもしれない…)


『……とと、すまん、ちょっとやり過ぎたかもしれん』

 やり過ぎどころか走馬灯見えたよ!


「レイ!無事ですか!?」「な、なんとかね…!」

 エミリアの声に答えるが余裕は無い。足止めが精一杯だ。


「ならこれはどうですか!<魔防弱化Lv1>(マインドダウン)

 エミリアは敵に弱体化効果のある魔法を放つ。これは相手の魔法の耐性を下げる魔法だ。

 敵の周りにうっすらと魔法陣が浮かび上がり赤い煙が飛び出して相手を包む。

「今です!レベッカ!一気に魔法で攻めますよ!」


 エミリアとレベッカは詠唱を同時に開始する。おそらく全力の魔法を使うのだろう。

 とんでもない強敵だが、何としても時間を稼がないといけない。


「姉さん、援護して!」「うん!」

 僕は再び距離を詰め、姉さんは<魔法の矢>(マジックアロー)で敵をけん制する。

 姉さんの攻撃は出鱈目だが、それでも魔物のすぐ近くに魔法が飛ぶため魔物も動きづらい。

 直撃コースなら簡単に避けられるだろうが、当たらない故に動きが制限されている。


『いいぞ、来い』

 しかし魔物はそれでも余裕の態度で悠々と構え、魔法を発動する。


<氷の槍>(アイスランス)

「なっ!」

 詠唱速度が速いのも驚いたが、それ以上に見たこともない魔法に驚く。

 敵の周囲に二つの氷の柱が浮かび上がり、双方が僕に槍のように飛んできた。

(くっ!迎撃するしかない!)

 僕は剣に魔力を込めて、更に魔法剣を発動させる。

<剣技・炎魔法>(ソードファイア)!!」

 範囲と威力を拡張させた魔法剣が敵の氷の槍とぶつかり合い何とか相殺した。

「お姉ちゃんを忘れちゃダメよ!」

 姉さんはその間に魔物の周囲に大量の植物の種子を撒いて<植物操作>を発動する。

「<植物操作・種子爆弾>!」

 地下二階で使ったベルフラウ姉さんの攻撃技だ、魔物の周囲の種子を爆発させる。

 これには流石の魔物も驚いたのか、ダメージを受けてしまう。


『ぬうっ!こ、これは……』

 今ので足にダメージを受けてしまったようだ。

「追撃!<魔法妨害>(ジャミング)

 更に姉さんが魔法妨害を発動させる。これで敵は魔法を使えなくなるはず、なのだが…。


『小癪な…………<炎弾>(ファイアボール)

「嘘だろ!?」

 詠唱こそ時間は掛かったが魔物は普通に魔法を使ってきた!

<魔法妨害>はレベル差のある相手なら無効化出来るが、そうでない場合はあくまで詠唱遅延効果になってしまう。相手がそれだけ強敵だったのだろう。しかし、足にダメージを受けたためか詠唱遅延されても魔法で攻めてきたのは状況が好転したということ。


<剣技・氷魔法>(氷の刃)

 剣に魔力を込めた魔法剣で迎撃する。またもや見たことない魔法だが迎撃自体は可能だ。

 巨大な炎の弾だが、『魔力食いの剣』で強化していれば十分に対抗できた。

「くっ……!」

 それでも完全に威力は殺しきれない。魔力が殆ど枯渇して出力が足りないのだろう。

 僕は少々火傷を負ってしまう。それでもさっきよりは全然マシだ!


「お待たせしました!」

 レベッカの声が響いた、詠唱が終わったようだ。

「魔力超強化<重 圧>(グラビティ)!!!」

 レベッカの滅多に見ない強力な攻撃魔法。エミリアから強化を受けているのか通常よりも範囲も威力も大きくなっているように見える。魔物の周囲の空間が重力によってクレーターのように沈んでいく。中心の魔物は重力に押されて動くことも出来ない。先ほどの弱化魔法の影響もあるのか今までのように涼しい顔とはならないようだ。


『ぐああああああああ! ………き、禁呪魔法まで使えているとは…!!』

 禁呪魔法?レベッカの魔法の事か?

 しかし、そんな質問に魔物は答えている余裕が無いようだ。


「すみません、全力まで底上げしたら時間が掛かってしまいました!」

 エミリアの攻撃魔法がようやく発動するようだ。

「本当に遅いって!」

 強気で言ってるが、僕も正直限界に近い。


「文句は後で聞きますよ! 魔力超強化<上級稲妻魔法>(ギガライトニング)!!!」

 上空に発生した雷雲から強烈な稲光が魔物を襲う。

 以前に見た上級魔法よりも威力が数段上だ。これを食らえば……!

『グオオォォオオッ!!!!』

 魔物はその雷撃を受けて悲鳴を上げた。そしてその体が白い霧となって薄くなっていった。

『く………油断したか……せっかく………かわって………のに』

 最後に言葉を残して白い霧は完全に消滅していった。


 後には魔石と複数の宝箱が現れた。



「た、倒せた……?」

 僕たちは全員が息を切らしている。かなりギリギリの戦いだったがなんとか勝てたらしい。

「うぁーーー………死にそう」

「わ、わたくしも……です!」

 エミリアとレベッカは地面にへたり込んでいる。

 エミリアに至ってはうつ伏せ状態になって立つのも辛いらしい。

「とりあえず回復しようか、姉さんお願い……正直僕もかなりつらい…」

 姉さんに<完全回復>貰ったにもかかわらず万全では無く火傷も受けてしまった。

 流石に限界となり、僕も膝を付いてしまう。魔力も枯渇寸前だ。


 姉さんは僕たち全員に<完全回復>を使って治してくれた。


「お姉ちゃんも、流石に疲れたわ……」

 最上級の回復魔法を一度の戦闘で5回も使ったのだ、いくら姉さんでもきついだろう。

 それでも枯渇までいっていないのは流石元女神さまだ。

 僕とエミリアとレベッカは体力が回復してもまだ魔力の枯渇で動けないので、

『魔法の霊薬』を飲んで少し回復してからその場で数十分休むことにした。


「エミリア、大丈夫?」

 僕とレベッカは霊薬を飲んである程度回復出来たのだが、エミリアは二つ飲んでもまだ辛そうだ。

「さ、流石に私一人で自分とレベッカさんの二人分の魔力強化は負担がキツかったようです…ははは……気持ち悪い」

「エミリアさま、申し訳ありません…」

 レベッカが謝るが、エミリアは「良いですよ……」と疲れた笑顔で答える。


 あの時レベッカとエミリアの魔法が強化されていたのは、<鼓動する魔導書>でブースト掛けたかららしい。ブーストすると通常の倍の消費になるらしいのだが、それを二人分、更に片方は上級呪文だったのでエミリアは完全に魔力を枯渇したようだ。レベッカの魔法に関してもあの魔物が気になることを言っていたし、相当な魔法なのだろう。


 何とか動けそうな僕と姉さんは魔物が落とした魔石と宝箱の中身を回収した。

 ちなみにレベッカはまだ動けないエミリアの傍で看病している。


 いつもの扉を開けるための『Ⅲ』の宝珠と、今までで一番大きい魔石だった。

 他は宝箱に一つずつ、魔導書、ステッキ、靴、盾が入っていたので全部回収だけしておいた。

 流石にエミリアは疲労で動けないので鑑定は後回しだ。


「姉さん、頼んでいいかな」

「大丈夫よ、みんなエミリアちゃんの傍に集まってね」

 エミリアが動けないので、ひとまず全員エミリアに集まって僕がエミリアをおんぶする。


「す、すいません……レイ」

「大丈夫!まだ僕は元気だから…」


 実際はまだ結構辛いけどエミリアを背負っていると考えたら元気が出た。

 というか、エミリアを背負った背中の感触とか考えると別の意味で元気になりそう。


「それじゃあみんな私の傍に来てね <迷宮脱出魔法>(ターンエスケープ)


 流石にこの状態で地下四階に行くのは無謀過ぎる。

 僕たちは姉さんの魔法でその場からなんとか脱出することが出来た。


 その後、少し休憩してから姉さんのお弁当を食べました。



 New 自然干渉魔法理論 応用編 -下巻- 1冊

 New (SR)ホワイトシールド 1個

 New (SR)輝きのステッキ 1個

 New (SR)大地の小靴 1個

 New 魔石(大・上物) 1個

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