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第445話 風船爺さん

 第十二階層にて、僕達は不思議な老人と出会う。

 明らかに怪しい老人だったが、その姿は僕達人間と変わりない。


 彼の扱いをどうするか、僕達は決めかねて口論になったのだが、

 レベッカの仲裁により、今は、この場から離脱することを優先することにした。


 そして、僕達はサクラちゃんの魔法陣の完成を待つのだが――――


 ドドドドドドドドド………。


 僕達が入ってきた階段から多数の足音が聞こえてくる。

 そして、僕達がそちらを見ると、相当数の魔物達がこちらに向かってくるのが見えた。

 数は三十以上だ。殆どが上位種の魔物であり、まともにやり合うと分が悪い。


「居たぞ、あいつらだ!!!」

「こんなところまで来てやがった!! 捕まえろ、いや、殺せ!!」


 魔物達の叫び声を聞いて、僕達は慌て始める。


「見つかっちゃったよ!!」


「サクラ様、魔法陣はまだ完成しないのですか!?」

 レベッカがサクラちゃんを急かせるように言うのだが、サクラちゃんは焦ったように答える。


「ま、まだですよ!! っていうか、まだ魔法陣の全体の1/2も出来てないですし……!!」


 サクラちゃんが魔法陣を描き始めて、既に十分以上は経過している。

 これ以上は流石に待てない。


「こうなれば、やるしかないか……!!」


 僕は剣を構えるが、姉さんに止められる。


「む、無理だって、あの数だと消耗した私達じゃ袋叩きにされちゃうわ!!」

「でも……!」


 僕達が言い合ってると、

 後ろに下がってたお爺さんが装置の右側を指差して言った。


「あっちに階段があるぞい? もし、魔物から逃げるなら階段を登って………」


 と、お爺さんはそこまで言って、首を横に振る。


「……よく考えたら、あの階段の先に出口は無かったわ……。

 すまんのう、役に立てそうにない……」


「そんな……」


 僕が愕然としながら呟くと、

 エミリアはハッとした表情をしてから大声で言った。


「それです!! その階段を登りましょう!!!」


「え、でも……?」


「忘れたのですか!? 陛下と作戦会議してた時に、

 もし、魔法陣を使えない状況に陥った時の為の次善策を決めていたはずです!!」


「……?」


 お爺さんは何のことか分からず首を傾げるが……。


「……そ、そうか!!」

「なるほど!!」


 僕とレベッカは、その時の事を思い出して姉さんの方を振り向く。


「姉さん、あの階段を登れば、<空間転移>の距離は届く?」


 僕が姉さんに質問すると、姉さんは一瞬迷ったが、すぐ強気な笑みを浮かべた。


「―――いけるわ、行きましょう!!」


「よしっ! じゃあ、お爺さんも一緒に行こう!」

「むっ!?」


 僕がお爺さんの手を掴んで走り出す。それにつられて他の皆も付いてきた。しかし、サクラちゃんだけは今も必死に魔法陣を描いていた。


 僕は彼女に大声で伝える。


「サクラちゃん、魔法陣は中止!! 上に逃げるよっ!!」

「へっ!?」


「早く!!」

「わわわ、分かりました~」

 サクラちゃんが慌てて魔法陣を消して、

 僕達はそのまま螺旋上に上がっていく階段を駆け上がる。


「あいつら逃げる気だ!!」

「馬鹿め、あの先は行き止まりだぞっ!!」

「へへへ、追え、逃がすなぁー!!」


 魔物達が叫ぶ中、僕達はひたすら上を目指す。

 しかし、途中で一部の空を飛べる魔物がこちらを先回りして妨害を掛けてくる。


「食らえ、人間ども!! <中級火炎魔法>(ファイアストーム)


「ひゃっはっはっ!! <中級雷撃魔法>(サンダーボルト)


「うぉおおお!! 死ねぇええ!!」


「きゃあああっ!!」

「危ない、サクラ様!!」


 魔法攻撃を回避しようとして、サクラちゃんが階段の柵の外に落ちかける。

 それをレベッカが咄嗟に彼女の腕を手で掴んで引き戻す。


「あ、ありがとね、レベッカさん」


「礼は不要です、それにしても足場が悪いですねっ」


 レベッカは、顔を強張らせながら、

 正面に回り込んできた魔物目掛けて槍を構えて突進する。


「はぁぁぁぁ!!」

「ぎゃふっ!!」


 レベッカが突き出した槍が魔物の腹部を貫き、

 槍を階段の柵の外に向けてそのまま魔物の身体を振り落とす。


 しかし、そうしている間に後ろから追ってくる魔物達が迫ってくる。


「どうします、戦いますか!?」


「ダメだ、こんな場所じゃ満足に戦えないし、

 そもそもこの人数でまともにぶつかったら負けちゃうよ!!」


「それに、この人を連れて戦うのは流石に……」


 姉さんは視線を横にズラす。

 そこには、息も絶え絶えに呼吸を乱しているお爺さんの姿があった。


「ぜぇ……はぁ……」

「お爺さん、大丈夫ですか……?」


 姉さんは心配そうに、お爺さんに声を掛ける。


「と、年甲斐もなく無茶な事をしてしまったわい……。

 お主らだけでも先に行ってくれ……ワシはもういいから……」


「そんな……!!」


 お爺さんの体力は限界だ。

 息も辛そうで、腰も足もガクガクな状態で動けそうにない。

 確かに、このままだと足手まといではあるけど……。


「あのジジイ、逃げだしてやがるぞ!!」

「捕まえたらまた痛い目を合わせてやる……次は拷問室にでも連れてってやるか」

「っ!?」


 追手の魔物達の声が聴こえて、お爺さんはビクッと肩を震わせる。


「(……駄目だ、この人を置いていけば酷い目に遭わされる)」


 もしかしたら殺されてしまうかもしれない。

 それを考えれば、見捨てることなんて出来ない。


「ダメだよ、お爺さん。僕達が絶対連れていくから」

「し、しかし……」

 お爺さんは辛そうな表情で僕を目で見る。


「大丈夫、絶対ここから連れ帰ってみせるから心配しないで」

 なるべく笑顔で僕はそう言った。 


 エミリアはそんな様子を見て、階段を降りていく。


「エミリア?」


「近くまで来た魔物達をけん制するだけですから」

 エミリアはそう言って、杖を構えて詠唱する。


「―――<上級獄炎魔法>(インフェルノ)


 エミリアが魔法名を口にすると同時に、エミリアの杖から膨大な炎が階段下へ向かっていく。魔物達は、その炎に撒かれないように散り散りになって逃げていく。


「さぁ、今です!!」

 僕達はエミリアの言葉に頷きながら再び階段を上を目指す。


「お爺さん、一緒に行きましょう」

 僕は再びお爺さんの手を取る。


「い、いや、ワシはもう……」


 しかし、お爺さんは息を乱して体力が殆ど残っていない。

 どうしようかと、僕は思い悩んでいると……。


<飛翔>(まいあがれ)


 エミリアは魔法を唱えた。

 すると、老人の身体がふわりと浮かび上がる。


「ぬぉぉぉぉ!? ワシ、飛んでおるぞい!?」


 お爺さんは興奮しているのか、宙に浮いたまま身体をバタバタさせる。

 だが、上手く身体を動かせないのが自力で動くことは出来ないらしい。


 エミリアはお爺さんを見ながら呆れた表情で言った。


「レイ、その人の腕を引っ張って階段を上がってください。

 飛行魔法で体重が殆ど消えてるから、負担にならないはずですよ」


「分かった、ありがとエミリア」


「……私はレイのお人よしに付き合ってあげてるだけです」


「それでも嬉しいよ」


「……」

 エミリアは、帽子のつばを手で持って顔を隠す。


 素直になれないエミリアに僕は和みながら言った。


「―――というわけで、お爺さん、このまま引っ張っていくからね!!」

「んんっ?」


 僕はお爺さんの許可を待たずに、宙に浮かんだお爺さんの腕を引っ張りながら、階段をダッシュで上がっていく。


「ま、待たんか、こら………ぬおおおおおおおおおおお!!!」

 僕はお爺さんの静止を無視して、そのまま走っていく。

 飛翔魔法のお陰で全く感じないせいで、まるで風船を引っ張っている気分だ。

 他の仲間達も僕に続いて走っていく。


 そして、螺旋階段の最も頂上に辿り着いた。

 その場所は、第十二階層を一望できる高さだったが、お爺さんの言う通り出口では無かった。日の光が差している場所は、まだ遠く、天井百メートル程度の高さはまだありそうだ。


「なんとかここまで辿り着いたけど……」


 流石に僕達もここまで走り続けて体力が切れ掛かっていた。

 そして、少し下には魔物達が必死に追いかけてくる。途中で現れた空を飛ぶ魔物達はレベッカやエミリアが上手く捌いてくれたみたいだけど、魔物の数はたいして減っていない。


「ふぅふぅ……それじゃあ、皆、私の周りに集まって」

「うん」

「よろしくお願いいたします。ベルフラウ様」

「任せましたよ」

「お世話になりまーす」


 僕達は姉さんの言葉従って、集まり姉さんの手や腕を握る。


「一体、何をするつもりなんじゃ?」


 お爺さんだけは何をするのか分かっていないため、困惑している。

 姉さんは優し気な口調で言った。


「お爺ちゃんも私の手をとってね?」


「う、うむ……これほどの歳になって、このような美人にこんな甘い言葉を掛けられてしまうとは……」


 そう言いながら、嬉しそうにお爺さんは姉さんの手を取る。


「(……大丈夫だろうか、このお爺さん)」


 別の意味で心配になってきた。

 僕達の準備が整うとサクラちゃんが密かにイヤリングに向けて話しかける。


「師匠、今から空間転移で基地から脱出します」

 サクラちゃんがそう叫ぶと、若干間を置いてイヤリングから声が聴こえてきた。


『……了解です、こちらも船を動かして迎えに行きます』


「お願いします、では」


 そんな短いやり取りをしている間に、

 下から追ってきた魔物が今更追いついてきた。


「くそ、手間取らせやがって……」

「ははは、ようやく出口なんて無いと分かったか、間抜けめ」

「さぁ、どう料理してやろうか……?」


 魔物達は、僕達が追い込まれたと思ってるのかヘラヘラと笑い合ってる。


 そんな魔物を無視して、僕は言った。


「みんな準備いい?」

 僕がそう訊くと皆は返事をする。


「じゃ、姉さん」

「うん。それじゃあ行くね――」


 そして、僕達は一瞬でその場から消失した。

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