これは通過儀礼なのか…
領主だった父リアムの意思を妾腹の息子となり受け継ぎいだアリエルは、一族の願いをきく氷の妖精によって女性から男性になった
エリアル(アルフレッド)はリアムに代わり、領主候補として教育を受ける事となったのだったが-
記念すべき初めての試練が待っていたのだったーー
1.2.3…1.2.3…1.2.3…
レッスン室から優雅な 音楽にふさわしく、明るいテンポに合わせて、ちょっと神経質そうな女性の声が響いてくる
「はい、そこで女性の肩を抱くようにして、ターン」
やってるつもり、なのだしかし、つい最近まで女性であったためアルフレッド(元女性)は男性く側のリードがなんというかーー要するに下手なのだ
「アルフレッド様、足の位置がおかしいですよ、もっと前に出して」
額に汗を滲ませながら、懸命にステップをしながらーー頭の中が混乱している
2時間は経っただろうか
レーナ女史は一旦諦めて、次回に繰り越しをする事にした
やっぱり女性の時と違うな、ええと次のステップはどうだったっけ?
一人で自主練習をしてみるが、ついつい女性の側になってしまう
もう!剣なら良かったのに
と、だれにでもなくついつい愚痴る
そうは言っても、1ヵ月後に御披露目の舞踏会が開かれる事が決まっている
領主候補はザッケローニとアルフレッドの二人だが、ここで失敗は噂になるだろう
そういうわけで、たかがダンスと言ってられないのだ
お爺様の前で無様な姿はさらせない
私が深くため息をつくと、不意に扉が開いて髪をオールバックにきっちり整えたアルフレッドの執事、トロワが温かい紅茶とともに入ってきた
「お嬢…、いえお坊ちゃま。ふふ、まだ慣れませんね、根を詰めすぎるとお身体に障りますよ、一息つかれては如何ですか?」
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トロワにそう言われて、思わず苦笑してしまう、子供の頃、身体が弱かったのにトロワの注意を聞かずに雪の中で遊び、たった数時間で氷の能力持ちの家系なのに、風邪を引いたのだ
余りに恥ずかしく、治ると直ぐに本当に氷の壁を作り、部屋に籠ってしまった
その時も、トロワが壁を割りながら紅茶を持って部屋に入ってきた
「お嬢様、そのお身体では魔力の無駄遣いは直ぐに力つきてしまいます、ひとまず一息つかれては如何ですか?」
正直、もう少し一人にしてほしかったし、次々できる氷を割って強行突破もどうなんだ、と思いはしたが温かい紅茶は有り難かった
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「ちょっと休憩くらいはいいけどまだ続けるつもりだから、レーナ女史にもあまり迷惑かけたくないんだ。」
トロワはフムと考える素振りで聞き返した
「何でもそつなくできるお坊ちゃまが珍しいですね、ダンスでしたら私にも人並みに覚えがございます。どちらで苦戦されておりますか?」
「…部」
「お坊ちゃま、聞き取れません。」
余計恥ずかしくなりながら、今度は聞き直されないようにはっきりと言う
「女性パートと全く逆なんだ、その、全部が。」
ああ、と納得してトロワが見事なアルカイックスマイルで恐ろしい言葉を放った
「アルフレッド様、ダンスは社交の基礎です、そのお年なら目を詰むっても暗がりでも出来て当然です、ええ、出来て当然です。」
あまりの気迫に部屋の隅まで追いやられて、練習続行を感じながら、一応、先ほどの提案を聞いてみる
「ええと、トロワちょっと紅茶飲むだけは?」
「はい、いけません。」
「あの、ちょっとだけ…」
「お坊ちゃん」
…トロワはこうなると譲らない事は、私自身が身をもって知っている、練習の機会はありがたい。
甘んじて受けようと早々に諦めた